第12週
2017/10/21
『教養として知っておきたい二宮尊徳』
松沢成文著 PHP出版
「辿り着いた場所そして不惑へ」
「自分の人生の師は誰か?」これまで私は答えることができませんでした。渇望してきたのですが見つけることができませんでした。LIFULLの井上さんではと言われることもよくありますが、自分の中で井上さんは師ではありません。敬愛するメンターというのが近い表現かもしれません。この夏、その恋焦がれてきた師に40手前でようやく会うことができました。
その師の名は二宮尊徳扇です。尊徳よりも二宮金次郎という幼少期の名で世には広まっているかもしれません。二宮尊徳扇は、江戸末期の方で、道徳と経済を両立させた方策
で農村を改革し、600以上の農村の再生を果たしました。その方策は「報徳仕法」と呼ばれ、尊徳扇が亡くなった後も後継者達ひ引き継がれ、明治以降の日本の発展に大きく寄与してきました。
尊徳扇を師と仰いだ方は渋沢栄一、安田善次郎(安田財閥創始者)、豊田佐吉(トヨタ自動車創始者)、松下幸之助、稲盛和夫など、農業系だけではなく経営者・実業家の多くも尊徳扇を信奉しています。
本書は元神奈川県知事の松沢氏が尊徳扇について、その人生や思想を紐解き、分かりやすく解説している書です。尊徳扇を師と私が決めたのは「道徳経済一元論」にあります。経済を伴わない道徳は戯言であり、道徳を伴わない経済は罪悪である、という考えで、単なる夢想家や理想論者ではなく、実行と創意工夫を重ね成果を出す。私の根本の考え・感覚と同一と言っても過言ではありません。いくら道徳を説いても金がなく実行ができなければ何も生まれない。だから実践をする。そして道徳の実践をさせる経済の実践があってこそ社会が発展していく。この理想的現実主義の考えに心から共感しました。
一方、自身は清貧ともいえるぐらい、分度をわきまえ生きていく。全身全霊で人生そのものが理念の体現という私の目指す所一緒です。また、心田開発という、田畑を開発するより、本人の意欲を引き出す所から自立の基盤を育成する考え方も一緒です。補助金は一切やめ、農民一人一人が立ち上がることで、再生していく考え方は本当に真っ当です。
40年出会わなかった師とここで会いました。心から喜びを感じています。尊徳扇を師として私淑していきます。尊徳扇の思想や哲学など、これから都度、皆様に少しづつ私の言葉で話をしていきたいと思います。