教育心理の部屋

第1回「自己効力」

第1回
2017/12/9
「自己効力」

バンデュラは、行動すれば結果を変えられるという期待を結果期待と呼び、そのために必要な行動を自分がとれるかどうかの信念を自己効力と呼び両者を区別しました。

私が高3の時『星の金貨』を見て「医者になりたい」と思い立った時、医学部の問題をみて即座にやめた経験があります。この場合、行動として毎日3時間以上2~3年ぐらい勉強すれば合格できると思ました。実際にそのようなアドバイスを専門の先生からもらいました。しかし、その行動を自分がとれる自信は全く持てませんでした。自己効力が低いとは、自分にはその努力は無理だと諦めてしまう事と解釈して良いと思います。

N君の「どうせやっても」というのは、勉強しても結果は出せない=結果期待が低く、相応の時間自分は勉強できない=自己効力が低い、のどちらが当てはまるのでしょうか。結果期待が低いのは本当に困りものです。何か特別なアプローチが必要かもしれません。まずは自己効力の方を上げるところから皆さんにやってみて欲しいです。まず1日15分勉強やってみようか、次30分勉強できたよね、次40分できたよね、と勉強量=努力ができることを塾生に認知してもらいたいと思っています。

宗興の本棚

第19週『舟を編む』

第19週
2017/12/9
『舟を編む』
三浦しをん 著

私が読む本はほぼビジネス書ばかり。少し幕間が欲しくなり、久しぶりに小説を手にとりました。本書は2012年本屋大賞の大賞受賞作であり、翌年映画化もされました。

内容としては、出版社勤務の主人公が辞書編集部に異動になり、新しい辞書の制作を10年以上もかけて行い、その間に起こる人間模様を中心に描いた作品です。

読後感としては、何か心が少し暖かくなるような感覚で、涙が一筋こぼれてきました。辞書編集という地味で地道な作業。また主人公を含めそこに携わる人物も一部を除き基本は派手さがなく地味。物語も大きな浮沈がなく、どちらかというと淡々と緩く進むので地味。ただ、その地味な人達が、言葉の魅力にとりつかれ、辞書編集には比肩できない程の情熱をもち、人生を捧げる姿に若干の憧憬の念を抱きました。

私の好きなシーンは、編集部で唯一派手なキャラクターの男が、学生時代からつかず離れずの距離にいる女性とのシーン。互いに束縛し合わない関係が彼にとって楽であったのですが、いつしか恋愛的に好きではない筈の彼女に癒され、自身の本心の愛情に気づいていきます。はっきりいってベタですですが、余計なものが削ぎ落されると純度の高い「素敵な」ものが表出してくる過程は、こちらもときめくものがありました。

実用的なビジネス書の世界に、瑞々しい感覚を入れてくれた本書。心の余白を生み出すと共に「潤い」となりました。
(583字)