教育心理の部屋

第5回「テスト不安 1章 記憶力がいいとはどういうことか」

第5回
2018/1/8
「テスト不安 1章 記憶力がいいとはどういうことか」

ダークは1988年にテスト不安に関する実験を行いました。テスト不安の高い人と低い人に分けた上でテストをします。テスト内容は、刺激文を2つ読んだ後、問題の文の正誤を答えるものです。内容は2タイプあり、http://muneoki-yoshida.com/wp/wp-admin/post-new.php
タイプ1は、
刺激文1 トランペットが演奏された
刺激文2 その演奏はやかましかった
問題   トランペットは静かだった。
と直前の文に答えが関係するものです。
タイプ2は、
刺激文1 男はくぎを打った。
刺激文2 彼はとても疲れた。
問題   男はかなづちを使った。
と、最初の文に答えが関係するものです。

タイプ1は、刺激文1を記憶する必要がないのですが、タイプ2は刺激文1を短期記憶に保持する必要があります。結果として、タイプ1の課題は、テスト不安の高低とも反応時間は変わりませんでした。ただ、タイプ2の課題は、テスト不安の高い人が、反応時間が長くなりました。ここから、テスト不安の高い人は「失敗したらどうしよう」など課題と関係のない考えのため短期記憶が圧迫されると考えられます。

長期記憶を書庫とすれば、短期記憶は閲覧室の机のようなものであり、情報は短期記憶に引っ張り出す必要があります。私達としては、テスト時に塾生に見たことのない問題にあたっても冷静に対応する訓練を積んでもらう必要があります。特に中3に対しては、ひろきなど、落ち着くための対処法など事前に個々人に決めてもらい、過去問に取り組み訓練することが必要かと考えます。
(596字)

宗興の本棚

第23週『大局観』

第23週
2018/1/8
『大局観』
羽生善治著 角川新書

今から6年前2011年渡辺竜王に負けた当時に羽生さんが書いた本です。羽生さんの著書は『決断力』に続き2冊目です。

羽生さんは将棋を指すときに、「直感」と「読み」と「大局観」の3つを駆使するとのこと。大局観の定義は本書に書いていませんが、「経験からくる直感的な俯瞰視野」と考えます。

幾つか特徴を書きます。
大局観により、ぱっとその局面をみて今の状況はどうか、どうするべきか判断する。
大局観により、複雑な状況で割断を下すとき、無駄な読みを排除できる。
大局観は若い人はないが、大局観を身に着けていくと、大筋で間違っていない選択ができる。
大局観は年齢を重ねるごとに強くなり進歩する。
大局観は経験を積めば積むほど精度が上がっていく。
大局観はいかに読まないか。
大局観を身に着けると、未知の場面にも対応できるようになり、失敗を回避できる。
大局観は直感と違うのだが、証明しづらい。
大局観はその人の本質的な性格や考え方が反映されやすい。

大局を「全体の流れ」とすれば、やはり社会・会社・個人の3つの輪で形成したビジョンが大局観(判断材料)の大元になりえると感じます。となれば、やはりビジョンに沿って選択するというのが、難しい苦しい局面で適切な判断になるのでしょう。

最後に、『私がいちばん面白いと感じたのは、いくらやっても勝つためのコツがわからないことだった。そのために、好奇心や探求心がさらにかき立てられて、ますます将棋にのめりこんでゆくのだ』という一説が印象的でした。私は逆に早く答えが欲しい、正解を早く作りたい方です。このあたり違うなと思いました。本当に好きなことにのめりこんでいる人は、その奥深さに惹かれていくのでしょう。
(702字)