第10回
2018/2/18
「検索失敗説」(1章 記憶力がいいとはどういうことか)
忘却が起こる原因のもう一つは検索失敗説です。Tulving&Pearlstone(1966年)は、検索失敗説を支持する実験を行いました。被験者に単語を48語記憶してもらいます。これらの単語は「うま」は『乗り物』、「なし」は『果物』というように、幾つかのカテゴリーに分類されています。何も提供しない場合は、20語しか再生できませんでしたが、『乗り物』などカテゴリーのヒントを提供した場合は、30語再生できました。
更に最初20語しか思い出せなかった被験者に後からカテゴリーのヒントを提供すると、再生数が28語に増加しました。増えた8語は、後から思い出したので、被験者の頭の中から失われていない事になります。つまり、普段思い出せないものも、頭の中に眠っているだけであり、手がかりがあれば思い出せるということです。
思い出すためには、覚える際に、手がかりを色々と用意しておいた方がよいとのこと。人の名前を覚えるにしても、単なる顔よりも同性の自分の友達や、名前から連想させるものなどを考える。例えば、米山さんという人と会ったら、同級生の米山の顔と一緒に覚える等。また、声に出してみる、書いてみるなど身体的なイメージを喚起するのも有効とのこと。古典的な声を出す、書くという暗記法はやはり教育心理手学的にも記憶に有効であるので、積極的に推奨していきましょう。
また、検索をしやすくするために、第7週に書いた意味づけもやはり有効とのことです。単純暗記ではなく意味を考えるというのは、論理思考力の面だけでなく、記憶力的にも重要なのだとあらためて感じます。社会や理科、漢字なども「単純暗記の撲滅」。意味(What)を考え理由(Why)を考えることを促進していきましょう。
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