教育心理の部屋

第11回「宣言的知識と階層的ネットワーク」

第11回
2018/2/25
「宣言的知識と階層的ネットワーク」(第2章 学ぶことと考えること)

私達の頭の中に蓄えられている知識は2種類あります。一つは、宣言的知識。事実についての知識であり、「吉田は1978年に生まれた」「日本の首都は東京」がこれにあたります。所謂「What」です。もう一つは、手続き的知識。これはやり方についての知識であり、「車の運転の仕方」「分数の足し算の方法」などがこれにあたります。所謂「How」です。

宣言的知識は、構造的な形で蓄えられていると考えられます。例えば、カナリヤ(黄色、さえずる)→鳥(つばさ、飛ぶ)→動物(動く、食べる)。抽象と具体のネットワークと言えるかもしれません。そして学ぶというのはこのような構造化された知識のネットワークを作り上げていくことと考えられます。

連想課題を用いて、この知識の構造化の様子を調べた実験があります(Cachapuz&Maskill 1987)。「熱」「衝突」「反応」等について生徒達に自由に連想させました。例えば「熱」に対して、熱い、寒い、溶けるなど。「熱」と「衝突」について共通して連想された語が多ければ、その人の頭では「熱」と「衝突」が結びついてます。このような結びつきを図示してもらいました。結果、成績のよい学習者は、はじめばらばらであった概念の間に結びつきが生じ、知識が構造化されていることが分かりました。

上記より、原理を知っていると知識が結びつきやすく、構造化されやすいと思います。例えば「熱は分子の衝突によって発生する」という知識があると、人の熱を高めるには、一人ではなく、人と人とがコミュニケーションをとる(ぶつかる)のがよいと発展的解釈をすることができます。理科や社会というのは、理科は自然の、社会は人間活動の「原理を学ぶもの」になります。「学びを促進する」ためにも、あらためて大切にしていきたい教科です。

宗興の本棚

第30週『社会のために働く』

第30週
2018/2/25
『社会のために働く』
藤沢烈著 講談社

私の知り合いである藤沢烈さんの著書。烈さんはマッキンゼーに退社後、社会起業支援の会社RCFを立ち上げます。震災後、復興コーディネーターとして、東北の支援を開始。Mr.復興と言われる程、活躍されています。駒崎さんに続き、社会起業の知識を入れる第二弾として、また烈さんにNPOのマネタイズなど話を聞きにいくため、本書を手に取りました。

読了後、大きく二つの疑問が生まれました。

一つは、烈さんは震災後、どのように復興の仕事に入ったのか。震災当時、私は支援したくても何をすればよいか分かりませんでした。現地に入ることすら迷惑ぐらいの状況の中、肉体的ボランティアではなく、コーディネーターという見えにくいものを自治体はなぜ受け入れたのか。

二つ目は、本書の内容は、RCFの支援先であるグーグル、キリン、ヤフー、UBSの東北支援事業をメインに紹介しています。このような名だたる企業がRCFを選んだ理由は何か。どのようにしたらそうなるのか。この二つの疑問は是非烈さんに会って、解消します。

「株主はお金のリターンだけではなく、社会へのリターンを求めている。」「プロボノが寄付だけでなく、自分が関わって何かが変わる手触り感のある貢献を求めていた。」「市場起点ではなく、社会起点マーケティング。」という本書の言葉から、社会貢献をしたい人は多いのだと感じます。支援先だけでなく関わる人も喜びとなる。迷いなくどんどん進みます。
(599字)