第31週
2018/3/4
『人を伸ばす力』
エドワード・L・デシ+リチャード・フラスト 桜井茂男訳 新曜社
内発的動機付けの権威、エドワードデシ教授の著書。内発的動機付けは、活動すること自体がその活動の目的であるような行為の過程を指します。ソマパズルで報酬を渡した学生は、その後パズルを行わない。報酬がない学生はパズル自体に興味を示し、ずっと遊んでいるという結果から、デシ教授は報酬が意欲を低下させることを明確にし、行動主義の報酬と罰が全盛の時代に、大きな衝撃を与えました。
このデシ教授に私が共感する所が、単に「自由にさせましょう」と言わない点です。「自律性の支援が自由放任と同じではないことは、いくら強調したくても強調しすぎることはない。」とデシ教授は述べています。私達の社会システムの中で統制を回避するのは不可能です。朝の目覚まし時計、仕事へと駆り立てる圧力、締め切り、評価、報酬。では現実的にどうすれば良いのか。そこが難しい部分です。デシ教授も「統制しないで励ますというスタンスは一見容易だが、実は強制することよりもむずかしく、より多くの努力や技能が要求される。」と述べています。
ここでデシ教授は、内在化の考えを伝えています。取り入れではなく統合。例えば、親の期待を取り入れるか、内的欲求と統合していくか、子供の成長に大きな差異がでます。私達におきかえれば、私達の指示を子供たちが取り入れ(強制)るのか、統合になるかは私達のスタンスと技術次第です。
統合を促進するには、理由づけ、承認、選択の3つがあります。承認は共感と言い換えてもよいです。大人と子供で言えば、子供の立場を尊重しているという大人側の態度が子供に伝わること。「絵の具をこぼしたりして遊ぶことが本当に楽しいことはわかるけど、ここは他の友達も
使うから、道具や部屋をきれいに使ってください」と伝えたところ、自律性を支える条件では子供を心理的にプラスの効果が見られ、統制する条件ではやる気を失わせる結果となったそうです。これは咲心舎でもすぐにできることと感じます。
ある理論を提唱した方の原書(訳書)を読むと、一つ一つの言葉に重みがあり、奥深く味わいがあり、本当にためになります。この本も、何度も読み返し、ライフスキル教育のバックボーンにしていきます。
(902字)