教育心理の部屋

第20回「道具的条件付け 行動の消去」(第3章 ほめることの大切さ)

第20回
2018/4/30
「道具的条件付け 行動の消去」(第3章 ほめることの大切さ)

学習された行動の消去も大変興味深いです。条件付けが成功した後、レバー押し行動に対して報酬が与えられなくなると、当初ネズミはレバーを押し続けますが、しだいにレバー押しの頻度は少なくなり、最終的にはレバー押しをしなくなります。行動と報酬の間の随伴性がなくなり、そのことを新たに学習し、レバー押し行動は消去されたことになります。

しかし、「消去」と「罰による行動の消滅」は違いがあり、学習した行動を消去するために、スキナーは罰が有効でないことを示しました(1938)。既にレバー押し行動を習得したネズミを消去群とスラップ(平手打ち)群の二つの群に分けます。消去群は1日目2日目ともレバーを押しても餌はありません。スラップ群は、1日目はレバーを押すとその足が打たれ、2日目は何も与えられません。1日目にスラップ群は、レバー押し行動がかなり減少していますが、罰がない2日目はレバー押し行動が再び出現し始めます。つまり、レバー押し行動が表面上遂行されないだけであり、レバー押し行動は習得されたまま消去されていない事が分かります。ここからスキナーは罰による行動変容のやり方を否定しています。

例えば、自習室でおしゃべりをする中1。罰による行動の消滅を狙い、2週間、1ヶ月、学期間、無期限自習室利用の禁止をしたとします。再起した当初はおしゃべりをしなくなると思いますが、しばらく経つとまたおしゃべりをすることになりそうです。「自習室で友達と話すこと=楽しい(背徳感含む)」という随伴性があるからでしょう。この随伴性をなくし、「自習室で集中して勉強すること=楽しい」となれば、新たな学習により、おしゃべりは消去されます。具体的には自習室利用の禁止と共に、集中勉強の楽しさを分かってもらうことが必要です。道具的条件づけの勉強は、咲心舎において大変参考になりますし、更に理解を深めたい所です。
(783字)

宗興の本棚

第39週『鏡の法則 人生のどんな問題も解決する魔法のルール』

第39週
2018/4/30
『鏡の法則 人生のどんな問題も解決する魔法のルール』
野口嘉則著 総合法令社

心身が疲れた時に、ふと目に留まり読んだ本です。前半は「鏡の法則」を表した物語(実話)、後半は解説で、読了まで15分ぐらいの短い本です。

「読んだ9割が涙した」という帯の通り、涙が止まりませんでした。鏡の法則とは、『私たちの人生の現実は、私たちの心の中を映し出す鏡である』という法則です。『人生は自分の心の波長にぴったりな出来事が起きる』、『心の中の原因が、結果として現実化する。』と筆者は言っています。逆に言えば、『人生の問題を根本的に解決するには自分の心の中の原因を解決する必要がある。』ということです。物語の主人公である女性の場合、父親と夫と和解、感謝をしたことで、現実の悩み(息子の悩み)を解決できました。

心の中で不満ばかりを抱くと不満を言いたくなるような出来事が。心の中でいつも感謝していると、さらに感謝したくなるような出来事が起きてくる、という事は自分にも実感できます。そして問題は何か大切なことに気づかせてくれる為という事も。筆者はやすらぎをえるために、ゆるすという事にも言及し、8ステップのゆるす方法を伝えています。私も一人だけ多分まだゆるせていない人がいます。今の問題はまさにこれだと気づきました。大変ありがたい本でした。
(597字)

教育心理の部屋

第19回「道具的条件付け」(第3章 ほめることの大切さ)

第19回
2018/4/21
「道具的条件付け」(第3章 ほめることの大切さ)

学習の二つ目は、「道具的条件づけ」による学習です。これは行動と報酬の随伴性を使った学習です。道具的条件づけは、アメリカの心理学者スキナー(1938)のスキナーボックスの実験が有名です。スキナーボックスはレバーを押すと餌が出てくる仕組みです。ネズミが偶然レバーを押し、餌を獲得する経験を繰り返すと、レバーと餌の関係に気づきます。そうなると、ネズミがレバーを押す頻度が一気に増加します。餌(報酬)によってレバー押し(行動)が増加しており、この報酬を強化子と呼びます。ただし、ネズミは空腹でないと餌を求めないので、満腹だとレバーを押し行動の学習をしません。空腹は学習の前提状況と言えるかもしれません。

またバンデュラ(1967)の治療研究が興味深いです。他の園児と遊ぶことのできない引っ込み思案の園児をほかの園児と遊べるように治療しました。通常、他の園児と遊ぶことができない子供に対しては、直接やさしく働きかけ、その園児がいやいやながら皆の所へ入ると、働きかけは減少すると思います。しかし、教師が園児に対して直接やさしく働きかけることが報酬になるのであれば、この教師の対応は間違っています。引きこもり行動に先生を独占する報酬を与え、他の園児と遊ぶ行動に報酬を与えないことになるからです。バンデュラの治療研究では、園児が他の園児といるときにその子供との接触機会を増やし、問題行動の治療に成功しています。最終的には教師との関係が報酬となるのではなく、他の園児との関係が報酬となることが必要ですが、道具的条件づけによって説明できる好例です。

私達が取り入れるとすれば、前提条件としての勉強への渇望感や危機感を得るために、ビジョンセッションはやはり有効です。また勉強を促す褒め方についてジコガクをすることを褒めると、段々ジコガクをやってくると思うので、行動変容にはまず褒めて促すことは現実的で良いと思います。ただ、褒められないとやってこないという可能性もあり、この問題を解消するには、結果能力を褒めるではなく、継続できている事を褒めることが必要ではないでしょうか。ドゥエック教授の『マインドセット』ですね。
(1190字)

宗興の本棚

第38週『職場が生きる人が育つ「経験学習」入門』

第38週
2018/4/21
『職場が生きる人が育つ「経験学習」入門』
松尾 睦著 ダイヤモンド社

私が提唱するライフスキル教育は、ライフスキルを経験学習で身に着けるものです。この経験学習の見識を深めるために、本書を再読しました。

経験からの学びを促進する力は3つあると本書は言っています。ストレッチ(高い目標を設定する力)、リフレクション(内省の力)、エンジョイメント(仕事を楽しむ力)です。特に、リフレクションについて、「情熱的謙虚さ」が印象に残りました。これはオランダの経営学者デブラ・ヤノーが『自分が正しいという熱い思いを持ちつつ、自分が間違っている可能性についても考える傾向』と定義し、私にとって金言です。

また、成長を促す発達的ネットワークの話で、褒めてくれる「安心屋」とダメ出しをする「緊張屋」が必要であり、特に緊張屋は井上さんぐらいなので、少し増やした方がよいかもしれないと感じました。

松尾教授が、22社715名のOJT指導員を対象に「育て上手」の指導者の分析をし、「目標のストレッチ」、「進捗確認と相談」、「内省の促進」、「ポジティブ・フィードバック」という4つの指導方法を抽出しました。自身の育成スキルを高めるため、以下三つをアクション
します。

まず目標のストレッチは、「成長のイメージ」。1・3年後など個の成長イメージについてあまり英克と浩子と話をしてないと思うので、1on1でこの辺りも話したいです。二つ目、内省の促進は、「成功失敗のパターン認識をしてもらうこと」。月1のマンスリーミーティングを開始し教訓化を促していきます。三つ目は、ポジティブフィードバックの「成功失敗に関わらず、まずは労うこと」。これは、ですよねという感じです。

教育心理の部屋

第18回「古典的条件付け」(第3章 ほめることの大切さ)

第18回
2018/4/14
「古典的条件付け」(第3章 ほめることの大切さ)

心理学で学習とは「練習や経験の結果として生じる、比較的永続的な行動の変容である」と定義されています。本書では人間の学習のメカニズムを理解するために、4つの学習過程―古典的条件づけによる学習、道具的条件づけによる学習、観察による学習、自己強化による学習―を説明しています。ちなみにマイナス行動変容も心理学では全て学習と位置付けます。価値の概念を入れていないからです。

まず、古典的条件づけは、ロシアの生理学者パブロフ(1927年)が最初に研究を行いました。犬にメトロノームの音を聞かせると、犬は耳をそばだてるような反応をしました。しかし、音に慣れてくるとそのような反応をしなくなりました。次に、エサとメトロノームの音を同時に犬に提示するようにしました。それを繰り返し犬に経験をさせました。犬はメトロノームの音を聞きながら、エサを食べることになるので、言い換えれば、メトロノームの聞いているときは唾液が分泌していることになります。やがて犬は、メトロノームの音を聞いただけで唾液を分泌するように条件づけられました。無条件刺激(エサ)と条件刺激(音)を繰り返し同時に提示することで、条件刺激に対して条件反応(唾液分泌)が生起することを示しました。

ワトソンとレイナー(1920年)は、恐怖感が古典的条件づけによって学習される過程について研究しました。アルバートという生後9ヶ月の乳児を対象に行いました。まず、白ネズミをアルバートに提示すると、彼は興味を持ち、接触しようとさえしました。次に、白ネズミと大きな金属音を同時に提示しました。乳児にとって恐怖感を引き起こすものです。この手続きを繰り返したところ、金属音なしの白ネズミに対しても見るだけで恐怖反応を示しました。また、ウサギやサンタの白ひげにも同じ反応が出るようになりました。恐怖感が固定的条件づけにより学習されることが明らかになりました。

古典的条件づけによってアルコール依存患者の治療を行うこともできます。嘔吐剤と共にアルコールを飲ませることを繰り返すと、アルコール(条件刺激)を飲むと嘔吐(条件反応)が引き出され、アルコールを抑制することができます。

この古典的条件づけの理論に沿うと、無条件刺激(●●)と条件刺激(勉強)を同時に繰り返し提示し、そのうち条件刺激(勉強)から条件反応(楽しさ)が得られることはできないかと考えました。この●●は一体何が良いでしょう。ゲーム?競争?体を動かす?楽しい授業?皆さんも一緒に考えてみてください。
(1040字)

宗興の本棚

第37週『生き抜く力の育て方』

第37週
2018/4/14
『生き抜く力の育て方』
蝦名玲子著 大修館書店

「生き抜く力」とライフスキルは近い部分があり、ライフスキル教育の学術的エビデンスが欲しいと考え手に取りました。

何個も気になるワードが出てきましたが、2つ程書きます。

一つ目は、「レジリエント」について。イギリスの児童心理学者アンマステン教授が、対象者1973名を幼少期から若い成人期までの20年間追跡し、レジリエントな大人になるために不可欠な資源について調べました。結果として、経済状況などの環境要因だけではなく、①「高い計画性や将来へのモチベーション」②「自律性」③「対処スキル」④「大人からのサポート」の4つが関係すると提示しています。①と②について私が考える
「自らビジョンを創る」事が①②の要素を育むと考えています。

二つ目は、「健康生成論」です。レジリエンスより更に焦点をしぼった形で生き抜く力について説明したのが「健康生成論」であり、1970年代にアメリカの健康社会学者アントノフスキー博士が、開発しました。イスラエルに住む女性が更年期に対応しているかを分析した時に、強制収容所を経験したグループの7割に健康問題が見られましたが、3割は問題ないことが分かりました。その3割に着目し、その方々がもつ「元気になる力」を「首尾一貫感覚=Sense of Coherence」と名付けました。そして本書ではSOCは、①わかる感(把握可能感)②できる感(処理可能感)③やるぞ感(有意味感)の3つで構成されていると言っています。

また、健康生成志向になるには、肯定的な言葉を使うことと言っています。人は言葉を使って思考しているため、使う言葉で物事の捉え方や考え方が規定されるからです。これは「サピア=ウォーフの仮説」というもので、言語、認知、思考は密接に絡み合い、用いる言葉が感情や幸福感に影響するそうです。ライフスキル教育でプラスの言葉を使う教育を入れるイメージがわきます。また、その際にエビデンスになります。
(800字)

教育心理の部屋

第17回「メタ認知2」(第2章 学ぶことと考えること)

第17回
2018/4/7
「メタ認知2」(第2章 学ぶことと考えること)

メタ認知能力の高め方について、日本理学療法学術大会の論文が大変参考になりました。引用しつつ、分かりやすくまとめます。

【方法】理学療法学科学生(平均22歳)に、20問を質問紙で5段階調査をした。

【結果】その中で有意に相関が見られた項目は6つあった。
①勉強方法がわかっている(r=0.35)
②勉強方法に自信がある(r=0.57)
③勉強で何かに失敗した時、うまくいかなかった時、その原因を考える(r=0.34)
④スケジュールの立て方を知っている(r=0.35)、
⑤スケジュールに変更が生じたら、都度、計画を修正している(r=0.36)
⑥勉強をするとき次の段取りも意識している(r=0.38)。
軽度から中等度の正の相関がみられた。

【考察】これは、定期試験の学業成績が低下するほど、メタ認知能力(メタ認知知識・メタ認知活動)が低いことが示唆され、具体的には勉強方法の方策自体がわからないこと、方策に対する自信が持てないこと、反省・探求のモニタリングや、計画・修正といったコントロールが低下していることが考えられた。よって、学生の学習活動に対するアプローチでは、知識や技能の教授に加え、その根底にあるメタ認知能力を高めることに着目し、そこをアプローチ対象とすることが重要になると推察された。

【解決手法】メタ認知は、自分の能力や課題解決の方略に関する知識としての「メタ認知知識」。自己への気づきや反省などのモニタリングと、目標設定や計画・修正などのコントロールを含めた「メタ認知活動」に大別される。したがって、これらメタ認知能力向上の為には、自己の認知や活動に対して客観視する機会を設けることや、目標設定や計画・修正など問題解決のためのプロセスを実践させながら介入(教示・誘導・介助)を行うこと、そして、何より他者との関わりを通じてフィードバックを与えることで高められるものと考えられる。

私達のアプローチとして、メタ認知を高めるには、4つあると考えました。
1.もっかんシートで計画を自分で立てることの重要性とそのやり方の説明の質を高める
2.Myライフスキルシートでの振り返りの指導の質を高める
3.ビジョンセッションのどこかで「教訓化」を入れる
4.定期テストの振り返り作戦シートは必須とし、フィードバックを必ずする
※自分が上手くいかない時の原因とより自分にとって普遍的な対処法を考える
(994字)

宗興の本棚

第36週『思考の生理学』

第36週
2018/4/6
『思考の生理学』
外山滋比古著 ちくま文庫

本書は2018年115刷225万部を誇るベストセラーです。思考の質を高める目的で、しかも「東大京大で一番売れている本」という文句に誘われ、手に取りました。

印象的だった章を主に二つ挙げます。

まず「醗酵」という章。論文のテーマが決まらない学生が多い中、自分でテーマをつかむ方法として醗酵が紹介されています。最初に、自分が感心する所、違和感を抱く所、分からない部分などを書きぬく。そして、繰り返し心打たれる所が、テーマの素材となります。しかし、『ビールと一緒で、麦がいくらたくさんあっても、それだけではビールはできないと同じである。ここにちょっとしたアイデアやヒントが欲しい。』と先生は仰っています。週刊誌、読書、テレビ、新聞、他人との雑談などに思いがけないヒントがあり、それが醗酵素となります。「寝させる」中で「素材と酵素の化学反応」が進行し、しかも、しばらく忘れるぐらい放っておくとテーマが生まれるそうです。

もう一つは、「醗酵」に続く「カクテル」という章。生み出したテーマは混ざりものがない自分の思考であり、それは独創になります。しかし、『ものを考える人間は、自信をもちながら、なお、あくまで謙虚でなくてはならない』とあるように、生み出したテーマには諸説があります。それらを自論と上手く混ぜ合わせながら、まるでカクテルを作るように調和折衷させていくと優れた論文になっていくそうです。『すぐれた学術論文の多くは、これである。人を酔わせながら、独断におちいらない手堅さをもっている。』と仰っています。

教育手法や世を変える手法を生み出すことは、まさに創造的な仕事です。醗酵とカクテルを現場で実践していきます。
(700字)

教育心理の部屋

第16回「メタ認知」(第2章 学ぶことと考えること)

第16回
2018/4/1
「メタ認知」(第2章 学ぶことと考えること)

問題解決に役立つ力としてメタ認知があります。メタ認知とは認知の認知であり、自分の思考や行動を客観的に把握することです。教育心理の領域では自分の記憶や問題解決に関する知識のことを指します。例えば自分は「ケアレスミスが多いことを知っている」「英語が苦手で勉強を避ける傾向があると知っている」ことがメタ認知です。「自分は自分を否定されると怒りがわくことを知っている」も広義ではメタ認知例です。

メタ認知能力が伸びると、問題解決がしやすくなります。Brown教授(1984年)のある観察では「1つ2/3ℓ入る水差しが6つあり、レモネードが入っている。レモネードは全部でいくらありますか?」という問題にある子供は18ℓと答える子がいたそうです。冷静に考えれば水差し1つ2/3ℓで6ℓより多くなるはずがないので、18ℓという答えはおかしいと気づくはずですが、気づかない。つまり、自分が今行っている問題解決の方法を離れて自己点検できないのです。

年少の子供は自分で学習するときに、できなかったことに多くの時間をかけることをしないようです。確かに娘の実来も、ピアノを弾くときに、部分練習を以前教えたのにも関わらず、間違えた箇所を重点的に練習せず、間違えると曲の始めからやり直す、もしくは弾き直してすぐに先に進むことをします。

肝心のメタ認知はどのように伸ばすのか。本書にはなかったので、また次回調べて書きたいと思います。
(599字)

宗興の本棚

第35週『史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち』

第35週
2018/4/1
『史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち』
飲茶著 河出文庫

ライフスキル教育という自分の思想の依拠できるような思想・哲学は何か。今回は東洋思想に手がかりを得るべく、西洋版の続編を購読しました。

東洋思想の特徴を5つにまとめます。

一つ目、西洋思想は結論を探求し続けるバトンリレー型、東洋思想は結論は出ておりそこを解釈していくピラミッド型です。結論は、インドのヤージュニャヴァルキヤが提唱した「梵我一如(ぼんがいちにょ)です。これは世界も個人も同一であるという考え方です。ウパニシャッド哲学と呼びます。この結論を頂点とし、様々な人が様々な解釈をしていく形で思想が広がります。

二つ目は、西洋哲学は「世界の根源は何か」「本当に正しいことは何か」など人間の外側に感心が高く、それにより科学や学問が発達します。一方、東洋哲学は自己(私)と内側の探求にすべてのエネルギーを振り向けていました。

三つ目、西洋哲学は知識を得て考える、論理に論理を重ねれば「分かる」にたどりつきます。東洋哲学の「分かる」とは、知識を得るだけでは到底無理であり体験でしかないとのこと。釈迦が「悟り」は、知識を得ることではなく感覚的な体験をもとにていします。思考ではなく感覚。念仏、瞑想、座禅をはじめ数多の修行も同様です。東洋思想は身体を使ったものが多いのも「頂点の結論」に達するのに体験が必要だからです。

四つ目、中国の「道(タオ)」がインドの梵我一如とほぼ同義です。「道」は混沌とした何かで、天地よりも先に存在するものであり、万物は道から生まれると老子が提唱しました。それを分かりやすく表現したのが荘子であり、「老荘思想」も東洋哲学のもう一方の源流と捉えてよいでしょう。

五つ目、言葉を使った思考活動を分別智と言い、物事を直感的に理解することを無分別知という。人間は言葉を使って、区別をつけ認識をしようとしています。あるゆる物理現象は相互作用であり、確固たる実体としてそこに存在しているわけではないのにも関わらず。存在しているとは私達が区別しているから存在しているだけなのです。よって梵我一如、無我、悟り、無為自然、そして無分別智を目指すものは、最終的に自分は存在しないという恐怖と闘わなくてはなりません。

以上です。結論として、この東洋思想がライフスキル教育の思想支柱になるかは分かりません。ただ、自己を見ていく、自分を見ていくということは、ライフスキル教育の根本ではあると感じます。また、英明の道が少し理解できた気がします。
(1011字)