教育心理の部屋

第18回「古典的条件付け」(第3章 ほめることの大切さ)

第18回
2018/4/14
「古典的条件付け」(第3章 ほめることの大切さ)

心理学で学習とは「練習や経験の結果として生じる、比較的永続的な行動の変容である」と定義されています。本書では人間の学習のメカニズムを理解するために、4つの学習過程―古典的条件づけによる学習、道具的条件づけによる学習、観察による学習、自己強化による学習―を説明しています。ちなみにマイナス行動変容も心理学では全て学習と位置付けます。価値の概念を入れていないからです。

まず、古典的条件づけは、ロシアの生理学者パブロフ(1927年)が最初に研究を行いました。犬にメトロノームの音を聞かせると、犬は耳をそばだてるような反応をしました。しかし、音に慣れてくるとそのような反応をしなくなりました。次に、エサとメトロノームの音を同時に犬に提示するようにしました。それを繰り返し犬に経験をさせました。犬はメトロノームの音を聞きながら、エサを食べることになるので、言い換えれば、メトロノームの聞いているときは唾液が分泌していることになります。やがて犬は、メトロノームの音を聞いただけで唾液を分泌するように条件づけられました。無条件刺激(エサ)と条件刺激(音)を繰り返し同時に提示することで、条件刺激に対して条件反応(唾液分泌)が生起することを示しました。

ワトソンとレイナー(1920年)は、恐怖感が古典的条件づけによって学習される過程について研究しました。アルバートという生後9ヶ月の乳児を対象に行いました。まず、白ネズミをアルバートに提示すると、彼は興味を持ち、接触しようとさえしました。次に、白ネズミと大きな金属音を同時に提示しました。乳児にとって恐怖感を引き起こすものです。この手続きを繰り返したところ、金属音なしの白ネズミに対しても見るだけで恐怖反応を示しました。また、ウサギやサンタの白ひげにも同じ反応が出るようになりました。恐怖感が固定的条件づけにより学習されることが明らかになりました。

古典的条件づけによってアルコール依存患者の治療を行うこともできます。嘔吐剤と共にアルコールを飲ませることを繰り返すと、アルコール(条件刺激)を飲むと嘔吐(条件反応)が引き出され、アルコールを抑制することができます。

この古典的条件づけの理論に沿うと、無条件刺激(●●)と条件刺激(勉強)を同時に繰り返し提示し、そのうち条件刺激(勉強)から条件反応(楽しさ)が得られることはできないかと考えました。この●●は一体何が良いでしょう。ゲーム?競争?体を動かす?楽しい授業?皆さんも一緒に考えてみてください。
(1040字)

宗興の本棚

第37週『生き抜く力の育て方』

第37週
2018/4/14
『生き抜く力の育て方』
蝦名玲子著 大修館書店

「生き抜く力」とライフスキルは近い部分があり、ライフスキル教育の学術的エビデンスが欲しいと考え手に取りました。

何個も気になるワードが出てきましたが、2つ程書きます。

一つ目は、「レジリエント」について。イギリスの児童心理学者アンマステン教授が、対象者1973名を幼少期から若い成人期までの20年間追跡し、レジリエントな大人になるために不可欠な資源について調べました。結果として、経済状況などの環境要因だけではなく、①「高い計画性や将来へのモチベーション」②「自律性」③「対処スキル」④「大人からのサポート」の4つが関係すると提示しています。①と②について私が考える
「自らビジョンを創る」事が①②の要素を育むと考えています。

二つ目は、「健康生成論」です。レジリエンスより更に焦点をしぼった形で生き抜く力について説明したのが「健康生成論」であり、1970年代にアメリカの健康社会学者アントノフスキー博士が、開発しました。イスラエルに住む女性が更年期に対応しているかを分析した時に、強制収容所を経験したグループの7割に健康問題が見られましたが、3割は問題ないことが分かりました。その3割に着目し、その方々がもつ「元気になる力」を「首尾一貫感覚=Sense of Coherence」と名付けました。そして本書ではSOCは、①わかる感(把握可能感)②できる感(処理可能感)③やるぞ感(有意味感)の3つで構成されていると言っています。

また、健康生成志向になるには、肯定的な言葉を使うことと言っています。人は言葉を使って思考しているため、使う言葉で物事の捉え方や考え方が規定されるからです。これは「サピア=ウォーフの仮説」というもので、言語、認知、思考は密接に絡み合い、用いる言葉が感情や幸福感に影響するそうです。ライフスキル教育でプラスの言葉を使う教育を入れるイメージがわきます。また、その際にエビデンスになります。
(800字)