教育心理の部屋

第19回「道具的条件付け」(第3章 ほめることの大切さ)

第19回
2018/4/21
「道具的条件付け」(第3章 ほめることの大切さ)

学習の二つ目は、「道具的条件づけ」による学習です。これは行動と報酬の随伴性を使った学習です。道具的条件づけは、アメリカの心理学者スキナー(1938)のスキナーボックスの実験が有名です。スキナーボックスはレバーを押すと餌が出てくる仕組みです。ネズミが偶然レバーを押し、餌を獲得する経験を繰り返すと、レバーと餌の関係に気づきます。そうなると、ネズミがレバーを押す頻度が一気に増加します。餌(報酬)によってレバー押し(行動)が増加しており、この報酬を強化子と呼びます。ただし、ネズミは空腹でないと餌を求めないので、満腹だとレバーを押し行動の学習をしません。空腹は学習の前提状況と言えるかもしれません。

またバンデュラ(1967)の治療研究が興味深いです。他の園児と遊ぶことのできない引っ込み思案の園児をほかの園児と遊べるように治療しました。通常、他の園児と遊ぶことができない子供に対しては、直接やさしく働きかけ、その園児がいやいやながら皆の所へ入ると、働きかけは減少すると思います。しかし、教師が園児に対して直接やさしく働きかけることが報酬になるのであれば、この教師の対応は間違っています。引きこもり行動に先生を独占する報酬を与え、他の園児と遊ぶ行動に報酬を与えないことになるからです。バンデュラの治療研究では、園児が他の園児といるときにその子供との接触機会を増やし、問題行動の治療に成功しています。最終的には教師との関係が報酬となるのではなく、他の園児との関係が報酬となることが必要ですが、道具的条件づけによって説明できる好例です。

私達が取り入れるとすれば、前提条件としての勉強への渇望感や危機感を得るために、ビジョンセッションはやはり有効です。また勉強を促す褒め方についてジコガクをすることを褒めると、段々ジコガクをやってくると思うので、行動変容にはまず褒めて促すことは現実的で良いと思います。ただ、褒められないとやってこないという可能性もあり、この問題を解消するには、結果能力を褒めるではなく、継続できている事を褒めることが必要ではないでしょうか。ドゥエック教授の『マインドセット』ですね。
(1190字)

宗興の本棚

第38週『職場が生きる人が育つ「経験学習」入門』

第38週
2018/4/21
『職場が生きる人が育つ「経験学習」入門』
松尾 睦著 ダイヤモンド社

私が提唱するライフスキル教育は、ライフスキルを経験学習で身に着けるものです。この経験学習の見識を深めるために、本書を再読しました。

経験からの学びを促進する力は3つあると本書は言っています。ストレッチ(高い目標を設定する力)、リフレクション(内省の力)、エンジョイメント(仕事を楽しむ力)です。特に、リフレクションについて、「情熱的謙虚さ」が印象に残りました。これはオランダの経営学者デブラ・ヤノーが『自分が正しいという熱い思いを持ちつつ、自分が間違っている可能性についても考える傾向』と定義し、私にとって金言です。

また、成長を促す発達的ネットワークの話で、褒めてくれる「安心屋」とダメ出しをする「緊張屋」が必要であり、特に緊張屋は井上さんぐらいなので、少し増やした方がよいかもしれないと感じました。

松尾教授が、22社715名のOJT指導員を対象に「育て上手」の指導者の分析をし、「目標のストレッチ」、「進捗確認と相談」、「内省の促進」、「ポジティブ・フィードバック」という4つの指導方法を抽出しました。自身の育成スキルを高めるため、以下三つをアクション
します。

まず目標のストレッチは、「成長のイメージ」。1・3年後など個の成長イメージについてあまり英克と浩子と話をしてないと思うので、1on1でこの辺りも話したいです。二つ目、内省の促進は、「成功失敗のパターン認識をしてもらうこと」。月1のマンスリーミーティングを開始し教訓化を促していきます。三つ目は、ポジティブフィードバックの「成功失敗に関わらず、まずは労うこと」。これは、ですよねという感じです。