宗興の本棚

第43週『ビジネスモデル全史』

第43週
2018/5/27
『ビジネスモデル全史』
三谷宏冶著 ディスカヴァー・トゥエンティワン社

咲心舎やNPOのビジネスモデルを考える際に、参考にしようと手に取った本です。3/12からほぼ毎日少しづつ読み、2ヶ月で読了しました。本書では革新的なビジネスモデルを作った会社を時系列に紹介していますが、その中で私の目に留まった会社を3つ紹介します。

一つ目は、ジレットの「替え刃モデル」です。ジレットは「収益の仕組み」の革新をします。それまでの髭剃りは、刃が厚く鈍れば研ぐ必要がありました。創業者のキング・ジレットは本体を安くし、何度も買ってもらえる形を考えました。鋼鉄を薄く延ばして使い捨てにする技術を開発し、1904年「替え刃式T型剃刀」を発売します。技術(特許)があわさりビジネスモデル変革が起きた好例です。そして、この「替え刃モデル」は、その後の企業に大きな影響を与え、複合機、携帯、家庭用ゲーム機、コーヒーマシーンとカプセルなど、多くの商品で採用されることになりました。咲心舎やNPOライフスも、何らかの形でソフトを提供して収益を上げる「替え刃モデル」は今後の影響力拡大に参考になります。

二つ目は、オークネットという車のネットオークションの会社が目に留まりました。中古車業界はそれまで出品者が会場に車を運ぶ必要があり、相当なコストがかかっていました。そこで創業者藤崎眞孝はオークションを通信で行うことを考えました。問題はオークション参加者の数と車両品質情報の提供ですが、参加者数は地道な営業と中古販売の業界との提携で会員数を確保し、品質情報は独自の品質基準をつくり、訓練された専門の検査員を派遣し、出品者をすべて事前に評価する仕組みを作りました。この仕組みはオークネットインスペクションサービスとして独立し、トヨタやホンダなどでも連携。中古車評価方法が業界標準になっています。咲心舎も拡大(多店舗展開)するためには、業界標準となるぐらい高品質な教育法を作り上げ、品質保持の仕組みをするのが良いと感じます。

三つ目は、IT系で4つの事業を株式公開に導いたスティーブ・ブランクの『アントレプレナーの教科書』です。スティーブは、スタートアップは商品開発と顧客開発だけあればよいと言い切ります。特に顧客開発が重要です。更に彼の教え子のエリックリースが『リーンスタートアップ』を提唱します。顧客に価値を提供できないモノは全て無駄。それが検証できないモノ、学びにつながらないモノは全て無駄と言い切ります。最小限の商品(MVP)でとは構築・計測・学習サイクルを高速回転することが重要と提唱しています。

最後に、ビジネスモデル史の現代史はITが中心で、もはやITしかない状態になっています。アマゾンが日本で1,000人のエンジニアを募集するというニュースがありましたが、エンジニアになることが、くいっぱぐれないという意味で職業的に成功するには近道と考えます。咲心舎でも、子供達にIT技術の必要性を話していく必要がありそうです。
(1207字)

宗興の本棚

第42週『暗闇でも走る』

第42週
2018/5/20
『暗闇でも走る』
安田祐輔著 講談社

社会起業を支援するNPO、ETICのセミナーに登壇していた方です。社会起業家の本を三冊読もうと思い、最後の一冊となりました。

安田さんは、小中でいじめにあい、また父のDVから一家離散、非行に走ります。ただ、一年発起して2浪後ICUに合格。バングラディシュの娼婦街の観察など社会貢献に関心を強めた後、有名商社に入社するも4ヶ月でうつ病で退社。その後不登校・中退者向けの個別指導塾を展開し、軌道に乗せています。

彼の塾に通う不登校の人達の描写を見ると、自己肯定感が低いことが分かります。これが頑張りたいけど頑張れない元凶ともいえます。『不登校や中退はクラスで1人くらいしか経験しないような特異なことだ。自分がそんな経験をしてしまったゆえに「自分が特別劣った存在」と思えてしまう。』そうです。『10代の頃まで自分は何もできないクズだと思っていた。』など著者の幼少期の心情描写も陰鬱とした描写が多いです。

しかし、著者も言っている通り、自己肯定感を高める突破口はあると思いました。まず大切なことは、「こうしなければならない」という思い込みを捨てること。自分が朝起きられないなら、フレックスなど朝起きなくてよい会社と職業に就いたらどうか、人とのコミュニケーションが苦手であれば工場やエンジニアなど黙々とやる仕事に就いたらどうか、と著者は言っています。また学校は不条理な仕組みで、仕事と違い変える、辞めるなどの選択がしづらい。学校が合わなくても絶望しなくて全くよいと著者は言い切っています。

そして、変えられるものに注目して、少しだけ動いてみる。最終的には、自分が立てた目標に向けて努力ができることを体験してもらう事が重要と考えます。著者は受験期のことを振り返り、『目標に向けて努力ができたということは、その後の自分をずっと支えることになった。』と言っています。報われるかもしれないと思わないと努力はできません。勉強は比較的努力が報われやすい領域です。咲心舎のビジョンの「原体験」もまさにこれと一緒です。
(842字)

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第41週『図解 世界の哲学・思想』

第41週
2018/5/12
『図解 世界の哲学・思想』
小須田健著 日本文芸社

自分のライフスキル教育の思想がどの思想家に依拠しているのか。そこを探るべく、先日哲学入門を読みました。次に思想変遷の流れを掴む目的で、GW中本書をノートに時系列でまとめました。主に三つのことを気づきとして得ました。

まず、哲学史の大きな流れとして、「古代哲学(宇宙の理法を知るための理性)」「中世哲学(神に従う理性)」「近代哲学(神から離れた論理的な理性)」「現代哲学(理性を批判し考えをリセット)」を把握できました。ちなみに、哲学はギリシアのタレスが万物の根源を考えたところからが始まりとされています。自然現象は全て神の力によるものという信仰に初めて異論を唱え、万物の根本原理(アルケー)があると考え始めたのは驚嘆です。

二つ目に、哲学は人類が永続しようとするための営みであると感じました。まずプラトンは凄いです。現実界と理想界を分けたイデア論(二元論)は、この先も現代まで影響を及ぼします。しかし、プラトンのイデア論を批判し、アリストテレスが事象の観察を重視し学問が体系化されます。他にもカントをフィヒテが、フィヒテをシェリングが、シェリングをヘーゲルが、そしてヘーゲルをキルケゴールが批判して独自の論を創ります。前の哲学者の批判をして自分の論を生み出し、また別の人が批判して次の論が生まれるという繰り返しに躍動感を感じます。勇気をもって考えを世にさらすことにも価値があると思います。

三つ目は、実存主義が私の思想に近いと感じます。実存主義は、デンマークのキルケゴールが最初と言われ、「万人に承認される真理より自分自身にとっての真理が大切」と言っています。ヘーゲルの弁証法によって永遠に心理を探求し続ける考えに対して、「今ここに生きている私という個人を無視した人間味の無い哲学」と言い切ったそうです。各人が情熱を掻き立てられると感じる対象が主体的真理であり、それこそが重要という考えに私はかなり共感できます。実存主義はヤスパース、サルトルと続いてきます。おそらく、今後実存主義の人達の思想に絞り、深く掘っていくことになりそうです。
(864字)

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第40週『実践 人材開発の教科書』

第40週
2018/5/3
『実践 人材開発の教科書』
佐藤政人著 ダイヤモンド社

2007年出版と時代の変化がスピーディーな中では若干古い書籍なのですが、企業内における人材開発を体系的に整理しようと考え手に取りました。

まず、そもそも人材開発=教育ではなく、「人材開発のPDCAサイクル」であるとらえる点。これは私が考えるマネジメントはPDCAサイクルであると一致します。超大手であろうと中小であろうと、この考え方は通用するとあらためて認識できました。

次に、人材開発のPDCAについては、1.経営方針の策定2.期待する人材要件の定義(人事制度の改訂)3.教育体系の策定4.教育の実施5.効果測定6.修正計画の立案という順番で行うという整理ができました。

また、「人材開発=人材開発のPDCA×囲い込み」である点は面白いと思います。流動性の高い現在において、流失しないよう、魅力ある会社作りをしなくてはいけないという事です。

最後に、V字型人材という考え方も面白かったです。I字型人材は専門家。T字型人材は専門家であれども他分野の知識を広く持つ人材。V字型は更に発展して、自分の専門性を更に掘っていくために、他分野の知識を広げていきます。砂場の穴掘りのイメージです。私も教育心理など専門性を磨きつつ、哲学や歴史等の教養的なものもインプットをしており、ビジョン実現に結びついている所がV字型に共感できます。著者は、時に全く違う職種の仕事をすること(営業から製造など)を進めています。
(595字)