宗興の本棚

第42週『暗闇でも走る』

第42週
2018/5/20
『暗闇でも走る』
安田祐輔著 講談社

社会起業を支援するNPO、ETICのセミナーに登壇していた方です。社会起業家の本を三冊読もうと思い、最後の一冊となりました。

安田さんは、小中でいじめにあい、また父のDVから一家離散、非行に走ります。ただ、一年発起して2浪後ICUに合格。バングラディシュの娼婦街の観察など社会貢献に関心を強めた後、有名商社に入社するも4ヶ月でうつ病で退社。その後不登校・中退者向けの個別指導塾を展開し、軌道に乗せています。

彼の塾に通う不登校の人達の描写を見ると、自己肯定感が低いことが分かります。これが頑張りたいけど頑張れない元凶ともいえます。『不登校や中退はクラスで1人くらいしか経験しないような特異なことだ。自分がそんな経験をしてしまったゆえに「自分が特別劣った存在」と思えてしまう。』そうです。『10代の頃まで自分は何もできないクズだと思っていた。』など著者の幼少期の心情描写も陰鬱とした描写が多いです。

しかし、著者も言っている通り、自己肯定感を高める突破口はあると思いました。まず大切なことは、「こうしなければならない」という思い込みを捨てること。自分が朝起きられないなら、フレックスなど朝起きなくてよい会社と職業に就いたらどうか、人とのコミュニケーションが苦手であれば工場やエンジニアなど黙々とやる仕事に就いたらどうか、と著者は言っています。また学校は不条理な仕組みで、仕事と違い変える、辞めるなどの選択がしづらい。学校が合わなくても絶望しなくて全くよいと著者は言い切っています。

そして、変えられるものに注目して、少しだけ動いてみる。最終的には、自分が立てた目標に向けて努力ができることを体験してもらう事が重要と考えます。著者は受験期のことを振り返り、『目標に向けて努力ができたということは、その後の自分をずっと支えることになった。』と言っています。報われるかもしれないと思わないと努力はできません。勉強は比較的努力が報われやすい領域です。咲心舎のビジョンの「原体験」もまさにこれと一緒です。
(842字)

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