宗興の本棚

第48週『未来ビジョンが組織を変える』

第48週
2018/6/30
『未来ビジョンが組織を変える』
ローレンス・L・リピット著 諸星 健訳 世界書院

個人のビジョン創造法について、より学術的なノウハウや裏付けが欲しくて手に取った本です。内容としては、企業や団体など組織のビジョンを形成するステップを書いていますが「巷でやっている未来創造会議の原点といえる」と筆者が言っているように、基本の骨組みとして参考になりました。

まず、未来ビジョン創造法の8つのステップを書きます。
1.過去を振り返る
2.うまくいっていることとうまくいっていないことを確認する
3.価値観と信念を確認する
4.関連する出来事、発展、傾向を確認する
5.未来ビジョンをつくる
6.未来ビジョンを具体的な行動目標に転換する
7.行動計画を立てる
8.計画を実行するための枠組みを作る

1.2については、データやインタビューを使いながら過去の出来事を振り返った後、「誇りに思うこと」「残念なこと」を確認します。これは英明がよくやる手法だなとつながりました。このproudとsorryは個人ビジョンを創る際も出てくるので、とても大切な問いだと感じます。

3については「未来に持っていきたい、核となる価値観と信念は何か」の問いが良質です。

5については、以下の問いが書いてありました。
・決して繰り返したくないこと
・手放したいもの
・これからなりたいもの
・未来の自分は過去の自分とどう変われるか
・未来ビジョンを創造するときに頼りたいもの、すがりたいもの
決して繰り返したくないことは「中2事件」「昨年の赤字による精神的きつさ」というのが、ぱっと出てきます。これらの問いもビジョンセッションに入れられると感じます。問題点を見つけることから、手に入れたい未来を見定めることへのパラダイムシフトというのが一番大きなことと感じます。新しいビジョンを定める時でありNPO含めいよいよ雄飛の時とワクワクします。

最後に「未来ビジョン実現に時間をかけ、途中でも節目をみつけて、お祝いをする」という進め方のポイントがあります。打ち上げではなく節目のお祝いはやりたいですね。
(820字)

宗興の本棚

第47週『二宮翁夜話』

第47週
2018/6/23
『二宮翁夜話』
福住正兄著 児玉幸多訳

私の師である二宮尊徳翁が話した教訓を集めたものです。報徳思想を体にしみ込ませたく、3ヶ月ぐらいかけて毎日少しづつ読み進めていきました。特に私が気に入っている教訓を5つ上げます。

六 人道と天道の別
天理と人道は全く別のものである。天理は畜生の道と一緒で、食物があればあきるまで食べつくす。天理自然に任せるのは情欲のままと同じ。人道とは私欲の制することを道とする。己という私欲に克つことである。
→すべての出発点であり終着点はこの克己であることをあらためて思います。私欲を制するというより包み込んで徳へと昇華させ、自分にとって天理自然のものでいられるのが理想です。

二十七 善悪同服
尊徳翁は禍福は二つあるわけではなく、元来一つのものだ。例えば庖丁で茄子を切るときは福であるが、指を切るなら禍となる。水も一緒。畔(あぜ)を立てて引けば田地を肥やして福となり、畔がなくて引けば肥えた土が流れて田地が痩せ、禍となる。己のためにするときは禍がそれにしたがい、世のためにするときは福がこれにしたがう。財宝もまた同じで蓄えて施せば福となり、蓄えて出さなければ禍となる。
→善悪はあくまで人の見方であり根源は全て一緒という尊徳翁の一円思想につながる話です。対話を通して互いに分かりあうことの重要性に気づかされます。もう少し誠とも対話をすれば良かったかなと。

八十六 富貴天に有りの弁
世に用いられようとして、立身出世を願うときは、本当の意味を誤り、一番大切なものを失うことになる。道を学んで習得し、みずからよく勤めれば、富貴は天からくる。自分の行為が天理にかなうときには求めなくても富貴がくる。
→自利=エゴにそって行動するときは上手くいかず、他者のためと動いたことは上手くいく。これが私の人生原理かなと考えています。子供達のライフスキルをいかに伸ばすか。この一点を追求するのみです。

百六十五 分度の論
翁の富国・安民の方法は分度を定めるという一点にある。財産のあるものは、一年の衣食がこれで足りるというところを決めて分度として、多少に関わらず分度外を世のために譲って何年も積んでいくならば、その功績は量り知れない。
→今年自身の稼ぎの分度を定めました。分度を定めた途端、今の自分の「分」を認識し、無駄遣いはもとより奢侈に流されなくなりました。具体的には、本当に必要なものや欲しいと思うものしか買わなくなりました。加えて、もっと稼ぎたいという欲に囚われることなく、精神的に落ち着いた状態となりました。分度を定めることは逆に人生に潤いが出ます。

続編五 譲道
勤倹を守るのはあくまで貧せずということで、譲ではない。財産を殖やすばかりで天命のあることも知らず、道に志さず、自分一身のことだけに費やすものはいうに足りない小人で、その人の心は物を奪いとるということにある。国民を助けてこそ譲道を行うというべきだ。
→「勤倹譲」という報徳仕法の中で一番難しいのが譲と感じます。勤は元々やってきました。これまで薄かった倹は、今回分度を決めて律することで、できはじめています。最終的に譲のバーが高く、中々勇気がいることですが、これもおそらく実現できると思います。まずは毎月一定額の寄付は行う所からはじめていますし、分度外に関しては同志の物心の追求を先に置くこともしていきます。
(1355字)

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第46週『チームビルディングの技術』

第46週
2018/6/16
『チームビルディングの技術』
関島 康雄著 日本経団連出版

ブルームウィル自体が真の強いチームになるにはどうすれば良いのか。研修の管理職が自部署をまとめるにはどうしたら良いか。咲心舎のクラスがチームになるにはどうすれば良いか。これらの方策を探るべく手に取った本です。

そもそもチームとは何か。辞書では、『ある目的のために協力して行動するグループ』とあります。ではなぜチームが必要なのか。それは『一人ではつくれない変化をつくれる』からです。直面している問題が複雑で難易度が高い程、一人ではつくれない変化が必要となります。私達の目的である学力とライフスキルの劇的成長は、一人の子でも難易度が高いです。それが多数となると更に難しくなります。また直近の目標である50名体制・黒字化も難易度が高いです。私一人では難しいし、英克、浩子一人でも難しいでしょう。だからチームである必要があります。

チームとして機能する上で、一番大切なことは、目的・目標への共感です。『「チームは連帯して結果に責任をもつべし」というのは、義務感や道徳観からきたものではなく、共感から生まれたものでなければならない。』と筆者は言っています。今のブルームミーツのフィロソフィの解釈はとても大切な行為だと思います。また今後採用する上でも目的・目標への共感はチームメンバーの必要条件としてとことん応募者と語り合い追求していこうと思います。

また『お互い触発し合う関係が生まれなければ、個々人の力以上に成果を出す事はできない。』であり、そのためにも、多様性と「どうして」「だから」「それなら」の対話が必要と筆者は言っています。この辺りも学力とライフスキルの劇的成長のために、今後私達自身が社内で追求していく課題と感じます。
(706字)

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第45週『NPOで働く』

第45週
2018/6/10
『NPOで働く』
工藤啓著 東洋経済新報社

NPOで働くことをより具体的に知りたいと考え、アマゾンで高評価だった本書を手に取りました。著者は認定NPO法人育て上げネット代表の工藤啓さんで、NPO設立から2011年までの軌跡を描きつつ、社員や支援者のこと、組織マネジメントについても詳しく書いており、NPOで働く実情がよく分かりました。

まず、動けば必ず未来が拓ける事を再確認しました。工藤さんは大志をもってひきこもりの若者を社会復帰させるNPOを立ち上げたものの、仕事先の開拓ができておらず、まず最初は「地域の窓ふきをさせてもらう事業」を始めました。無料で商店街を1件1件回るのですが、ボランティアの押し売りのようになり、10日ももたず事業は廃業したそうです。次に工藤さんは突破口が見えない中、町のゴミ拾いをすることにします。1日4時間雨の日も風の日も若者とゴミを拾い続ける活動をされていました。そのうち、「お前らは毎日こころへんで何をしているんだ?」とあるおじさんに問い詰められますが、その方がテナントビルやビジネスホテルのオーナーであり、この出会いから若者の活動先を提供してもらえたとのことでした。稚拙でも良い、動けば何かが変わると、本当につくづく思います。私自身も動いたから今があります。動くことの大切さを心に刻みました。

次に、ニーズの裏付けの重要性に気づきました。工藤さんのNPOは、ある時日本マイクロソフトと若者支援を共に行う企画を進めます。その際工藤さんは『まずは日本社会における無業の若者をIT分野から支援をするニーズの裏付けをとることに奔走しなければならなかった。僕らが、“感覚的にニーズがある”だけではだめで、しっかりと社会的にニーズがあることを提示しなければならない。』と考えました。私達のライフスキル教育は、未来志向型・セーフティーネット型と大別すれば、前者にあたります。そして正直ニーズが見にくいです。この辺り、ETIC起業塾のESを書く際にも苦しかったところです。ライフスキル教育はニーズがあるのか=本当に社会課題なのかを調査し、ニーズがあることを示さなければ、大きなインパクトは与えらないどころか、食うに困る、自己満足的なものとなります。徐々に進めていきます。
(921字)

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第44週『部下が育つ組織をつくる技術』

第44週
2018/6/5
『部下が育つ組織をつくる技術』
喜島忠典著 労務行政社

人材育成が優れた組織を体系的に理解したいと考えて手にとった本です。全体フレームワークが図示されることはなく、体系的に理解することは難しかったのですが、活用したいと思える項目が3つ程ありました。

一つ目は、ビジョン浸透についてです。ビジョンがメンバーに浸透する5段階は①知る②理解する③行動する④腹に落とす⑤伝道師になります。本書で①から②に行くには、大きな壁があることが分かりました。よく従業員満足度調査で「組織の方向性が分からない」という結果が出てきます。その結果に対し、「いつも話していることだ」、「なぜ組織の方向性が分からないのかが分からない」というのが経営層の本音だと思います。ただ、従業員のリテラシーの問題もあり、1回説明しただけではよくてレベル1の「知っている」にとどまります。経営層の傲慢な思い込み、「伝える側」の論理を捨てなければ、伝わることはないのです。①から②に行くにはやはりコミュニケーションの量が重要と学びました。社員に対しても、咲心舎塾生に対しても身につまされる話です。

二つ目は、余分な目標を排除し、フォーカスすべき目標だけに絞ることです。あれもこれもでは能力は伸びづらくなる。咲心舎は都立を目指しており、5教科満遍なくにどうしてもなりがちですが、思い切って英数に絞るなど、勇気をもって絞ることが成長のポイントと思いました。

三つ目は、東京海上日動の例です。日本で一番「人が」育つ会社の取り組みをしており、業績に関する話に偏りがちだったところを、期初面談の対話の順番を変えたところ、「今まで業績の話ばりだったので、むしろキャリアビジョンなどを話すなったのが、本当にありがたかった」という声が若手から上がってきているそうです。これはLIFULL様の研修などの実例に使えます。
(742字)