第58週
2018/9/8
『未来の年表』
河合雅司著 講談社現代新書
企業研修で参加者に未来予測をしてもらいますが、私自身も未来を勉強しておく必要があり手に取った本です。
本書は人口減少にフォーカスをあて、人口減少から引きこされる様々な現象と最後に解決策を提示しています。未来予測といっても、少子化がすぐに改善しない状況をふまえると、ある種確実に起こる未来として捉えても良いかと思います(だから予測ではなく「年表」としていると推察できます)
①2017年女性の高齢者比率(65歳以上)は30.1%。既に女性の3人に1人は高齢者でおばあちゃん大国になっている点は驚きです。
②2018年、2009年以降横ばいで留まっていた18歳人口が減少し始めます。国立社会保障・人口問題研究所(以下社人研)の「日本の将来推計人口」によると、18歳人口は2017年120万人、2024年106万人、2032年98万人と推移する予測になっています。2016年で既に44.5%が私学で定員割れ状態ですが、地方の国立大学でも、大都市圏への流入により、存続危機の大学が増えるでしょう。
③2019年IT技術者が不足し始めます。経産省の調査によると、現在供給が92万人。2019年から退職者が就職者を上回り供給が減っていきます。2015年で既に17万人が不足する一方、需要は増えるので2030年では79万人(市場の伸びが最大の場合)不足が生じると見込まれます。
④2024年ダブルケアの問題。人口問題を語るときは人数が多い団塊世代がキーとなると感じます。2024年には段階世代が全て75歳以上となります。このとき65歳以上は3677万人。3人に1人が高齢者となる超・高齢者大国の出現です。そして、晩婚化で平均出産年齢は30.7歳(2016年)。第二子以降50代で子育て中もありえる中で、介護も必要となるのです。
⑤2033年空家問題。総務省の「住宅・土地統計調査」(2013年)によると、総住宅数6063万戸のうち空家が820万戸に上り、13.5%を占めています。野村総研の試算によると、2033年総住宅数は7126万戸、空家数は2167万戸、空家率は30.4%。3戸に1戸が空き家となる予測です。ちなみに「自治体の空き家対策に関する調査研究報告書(平成26年3月発行)」によると空き家のもたらす問題として「雑草・悪臭など衛生環境悪化」「景観の悪化」「不法侵入などによる治安の悪化」「生命・身体への被害のおそれ」が挙げられています。
⑥2035年未婚大国。厚労省の「人口動態統月報年計」よると婚姻件数は2016年62万500組み、1万400組も減少し戦後最少を更新しました(ちなみに、うちできちゃった婚は25.3%)。生涯未婚率は2015年厚生労働白書によれば、男性は24.2%。女性は14.9%。これが2035年男性29.0%、女性は19.2%に上がる予想です(1970年男性1.7%、女性3.3%)。男性年収300万円未満で未婚率が多く、女性は600万以上で未婚率が多いそうです。社人研の「第15回出生動向基本調査」(2015年)内の独身調査(25~34歳)では、交際相手のいない未婚者男性69.8%、女性59.1%となっています。内閣府「結婚・家族形成に関する意識調査報告書」(2012年)によると、恋愛が面倒:男性47.3%、女性45.0%、恋愛に興味がない:男性25.3%、女性30.7%になっています。交際に関しては消極的というのが伺えます。単なる出会いの場だけ創出しても難しそうです。
⑦2040年自治体の半数が消滅の危機に。社人研の「日本の地域別将来推計人口」(2013年)によると、2040年減少率は秋田県の35.6%など地方が厳しい人口減にされされますが、なんとアクセスの不便な大都市圏の自治体も減少する予測です。青梅や福生は25%、足立区21.3%、葛飾区19.2%、杉並区も15.5%予測しています。
最後になりますが、筆者は10の少子化対策案を挙げていますが、下記は現実的で実効性もある案だと思います。
・高齢者を75歳以上として、75歳までは生産労働人口とする。
・非居住エリアの明確化
・都道府県の飛び地合併
・社会保障費循環制度。死亡時に公費で賄われた分は返還する。
・第三子以降に1000万円給付
(1752字)