宗興の本棚

第57週『社会契約論』

第57週
2018/9/1
『社会契約論』
ジャン=ジャック・ルソー著 桑原武夫・前川貞次郎訳 岩波文庫

自由、平等、人民主権。人の人生が生まれで決まらない世の中に。フランス革命の骨格となった大元の思想はどういうものか知りたくて手に取った本書。かなり難解な文章で、何度か読み返しても意味が取れない部分が多かったです。

本書は『人間は自由なものとして生まれた、しかもいたるところで鎖につながれている。』からはじまります。「ドレイ」という言葉が何度も出てきますが、ルソーはドレイ状態を繰り返し批判しています。そして、自然状態において生存することを妨げる諸々の障害に対して、抵抗する手段は社会契約だとしています。

ルソーが考える、本来の自然状態は、人間には憐れみ(憐憫)の情が備わっており、互いをいたわる状態としています。ただ、私有財産が発生したことで不平等を生み、争いも生まれてきます。自然状態のままでは人間社会そのものが立ちゆかなくなったとき、自然状態に代わる社会をどのように構想すればよいか、その答えが、社会契約です。

社会契約は、人々の一般意志=共通の利益を求める意志に全て従うことになります。自分の意志であり、全体の意志であるからドレイ状態とはなりません。『各構成員の身体と財産を共同の力の全てをあげて守り保護するような統合の一形式を見出すこと。すべての人と結びつけながら自分自身にしか服従せず、以前と同じように自由であること。』を理想の状態とし、それは一般意志に従うことで実現すると述べています。意志というのは自由で、平等で、永遠なのだとあらためて感じます。

ところで、ライフネット生命の会長である出口治明さんは古典の重要性を説きます。『古典は人類の長い歴史の中で選ばれて今日まで残ってきたものであって、いわば市場の洗礼を十二分に受けている。一冊の古典はビジネス書10冊、いや100冊に勝るかも知れない』と言っています。また、出口さんは木田元先生(哲学者)の言説を用い、『きちんと書かれたテキスト(即ち古典)を一字一句丁寧に読み込んで、著者の思考のプロセスを追体験することによってしか人間の思考力は高まらない』と言っています。

次は教育者として読むべきルソーの『エミール』です。また太宗の『貞観政要』とアダムスミスの『国富論』は挑戦したいと思います。
(918字)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です