宗興の本棚

第65週『研修転移の理論と実践』

第65週
2018/10/27
『研修転移の理論と実践』
中原淳 他著 ダイヤモンド社

研修研究の第一者中原淳先生の著書。クライアント企業様への成果を上げるためのより一層幅広い知見を得る目的で手を取りました。

3つのポイントを挙げます。まず、カークパトリックの4段階モデル(反応、学習、行動、成果)は外せません。研修評価はこのモデルが土台となり発展しました。特に行動変化の測定が一番難しく、最重要とカークパトリックも述べており、また他の研究でも「行動」に注目が集まっているとのこと。私は現場での行動が全てと捉えており、実践型研修のあらゆる要素はこの現場行動を促進するものです。この考えが学術的にも正しいと証明されたのは自信になります。

また、Saks&Burkeは「行動」段階での評価を研修事後に受講生に頻繁に行うことで、現場での転移が増すと結論づけました。事例としてヤマト運輸では、研修の3,4ヶ月後に現場実践度合いアンケートを実施し、アズビルでも研修後にWebアンケートを実施しリマインドを図っています。研修後に実践度合いを測ることを積極的にお客様に提案していきます。

最後にBroad&Newstrom(1992)の研修転移マトリックスも有用です。縦軸に役割者(マネジャー・講師・受講者)が入り、横軸に時間(研修前、中、後)の3×3の図です。講師達へのインタビューで影響と使用の順位付けをしたところ、1位が研修前のマネジャー、2位が研修前の講師、3位が研修後のマネジャーからの働きの順に影響力があることが分かりました。現在行っている社長からの手紙だけでなく、直上司からの手紙の作成、研修後のマネジャーへのアンケート実施により、より研修転移を促進できると思いました。
(688字)

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第64週『誰でもビジネス書の著者になれる! 出版の教科書』

第64週
2018/10/20
『誰でもビジネス書の著者になれる! 出版の教科書』
松尾昭仁著 秀和システム

本を出せるぐらいの実績をつけてはじめてプロや一流の証と思う所があり、書籍の出版は私にとって宿願です。清瀬も始まったことで出版が視野に入り、本書を手に取りました。

私が掴んだ書籍出版(商業出版)のポイントは二つです。まず、出版社は「いい本」ではなく「売れる本を出したい」という前提を押さえることです。「あくまで読者が求めるコンテンツを本にまとめるのが大原則」と筆者が言うように、自分が伝えたいだけでは出版はできないということです。ビジネスの世界ですからニーズが必要。当たり前ですが見失いがちな大切なことだと思います。売れる本という目的に立脚すれば、売れるための企画をする、編集者に謙虚に接する、販売促進も行う等も全てつながります。

もう一つは、出版は誰もが驚く実績がなくてもできるということです。これは読者ターゲットを明確にすることとセットです。『コンサルタントになっていきなり年収650万円を稼ぐ方法』は、セミナー講師を開始し1年半の時に筆者が出したものです。高給の外資コンサルタントには評価されずとも、これからセミナー講師を始めたい人や、キャリアが下の人をターゲットに書きスマッシュヒットになったそうです。通常、出版はS級の専門家が書くものと思っていましたが、A級、B級、C級、D級もありピラミッド構造になっています。C級でもD級より下の人に教えられることがあり、これを筆者は「三角形の法則」と言っています。あわせて新人筆者は大ヒットを狙って読者ターゲットを広げてはいけないとも言っていました。

読了後、自分の中で書籍出版のイメージが変わりバーも一気に下がりました。簡潔ながら本質をついている良書でした。
(700字)

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第63週『心理療法序説』

第63週
2018/10/13
『心理療法序説』
河合隼雄著 岩波書店

1年以上前に英明から咲心舎全員に薦められた本。カウンセリングの知識は、生徒の心身の成長を促す上で土台になるような気がしたこと。また心療内科の通院時に、クオリティライフが高まる参考になればと思い手に取りました。

まず、部分ではなく全体を網羅し、体系的に学べる本書のような書籍は自分の好みとあらためて感じます。

一番心に残っているのは心理療法の理想像です。心理療法の4つのモデル(医学モデル、教育モデル、成熟モデル、自然(じねん)モデル)を提唱し、医学モデルが「治す」に対して、自然モデルが「治る」に近く、これを理想像としています。干ばつの地域に雨を降らすことができた男に理由を聞くと「道(タオ=梵我一如)の状態に自分がなった。すると勝手に雨が降ってきた」と。この因果律で捉えない態度は凄いなと思います。「自分がいたからではなく、クライアントが勝手に回復した」的な説明のつかない状態が理想と解釈できます。そのためにも、療法家はクライアント自身が自分の心の深層を探求するのを援助するのみで、ドグマ(教義)のない宙ぶらりんの状態に耐える強さが必要と言っています。

もう一つ印象深いことは、日本は家族の一体性が欧米より強いこと。誰か一人が悪いということはなく、家族の誰かをスケープゴートにして、後の全員が安定していることは割にあるそうです。ただこれも因果律で捉えるのは危険で、例えば、非行の子供がいて、父親がアルコール依存症だったとします。原因は父親にあるとなりそうですが、父親がアルコール依存症→子供は非行化するは、普遍性をもちません。現場実践として、子供達への接し方の参考にすること難しいです。原因を設定しなければ短期解決がしにくいからです。ただ、「自然モデル」を念頭にあくまで子供達自身が気づいていくことを理想とする。これは子供達の健やかな成長にとって大切なことと感じます。
(781字)

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第62週『言霊はこうして実現する』

第62週
2018/10/6
『言霊はこうして実現する』
大野靖志著 文芸社

横綱稀勢の里が進退がかかる今場所前に読んでいたと新聞記事に載っており、興味があり手にとった本です。

本書は「言霊学(げんれいがく)」と、言霊学と結びつきの強い伯家神道(はっけしんとう)を紹介している書籍と考えています。このような言い回しになった理由が、私自身内容をはっきりと理解ができていないからです。「言霊」という神秘の世界を量子力学に沿い科学的に説明しています。言霊発生のメカニズムは、母音(イエアオウヲワヱヰ)が柱となりS極が陽子(+)である。父韻(TKMHRNYS)はN極電子(―)の働きをしている。父韻と母音が合成すれば、電流が発生し磁界ができる。これが続くと電磁波となりエネルギーが放射されるというのが私の理解です。ただ、オカルト的で若干の忌避感も感じたまま読んでいたこともあり、完全に納得まではいきませんでした。

その中でも一番参考になったのが、「言霊で現実を創造する方法」という章です。ポジティブシンキングやアファーメーションが上手くいかない理由が、「脳が問題の背景にある事の深層を理解していないため」という箇所が腑に落ちました。何かの願望の裏には「不満」「不平」などがたまっていて、それを隠すと脳が事の真相を理解できず上手く機能しないとのこと。そこで言霊を活かす構文の5ステップを本書では提示しています。しっかりと不満を出した上で、肯定的にとらえるやり方であり、「まじめに仕事をしているのに叱られるなんて腹が立つ」→「そこで振り回されても損」という結論まで5段階のステップを通ります。言葉には力があると元々思っていますので、完全には理解しなくとも本書はその思いを後押ししてくれました。
(699字)