宗興の本棚

第63週『心理療法序説』

第63週
2018/10/13
『心理療法序説』
河合隼雄著 岩波書店

1年以上前に英明から咲心舎全員に薦められた本。カウンセリングの知識は、生徒の心身の成長を促す上で土台になるような気がしたこと。また心療内科の通院時に、クオリティライフが高まる参考になればと思い手に取りました。

まず、部分ではなく全体を網羅し、体系的に学べる本書のような書籍は自分の好みとあらためて感じます。

一番心に残っているのは心理療法の理想像です。心理療法の4つのモデル(医学モデル、教育モデル、成熟モデル、自然(じねん)モデル)を提唱し、医学モデルが「治す」に対して、自然モデルが「治る」に近く、これを理想像としています。干ばつの地域に雨を降らすことができた男に理由を聞くと「道(タオ=梵我一如)の状態に自分がなった。すると勝手に雨が降ってきた」と。この因果律で捉えない態度は凄いなと思います。「自分がいたからではなく、クライアントが勝手に回復した」的な説明のつかない状態が理想と解釈できます。そのためにも、療法家はクライアント自身が自分の心の深層を探求するのを援助するのみで、ドグマ(教義)のない宙ぶらりんの状態に耐える強さが必要と言っています。

もう一つ印象深いことは、日本は家族の一体性が欧米より強いこと。誰か一人が悪いということはなく、家族の誰かをスケープゴートにして、後の全員が安定していることは割にあるそうです。ただこれも因果律で捉えるのは危険で、例えば、非行の子供がいて、父親がアルコール依存症だったとします。原因は父親にあるとなりそうですが、父親がアルコール依存症→子供は非行化するは、普遍性をもちません。現場実践として、子供達への接し方の参考にすること難しいです。原因を設定しなければ短期解決がしにくいからです。ただ、「自然モデル」を念頭にあくまで子供達自身が気づいていくことを理想とする。これは子供達の健やかな成長にとって大切なことと感じます。
(781字)

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