教育心理の部屋

第46回「プログラム学習 6章 どのように教えるか」

第46回
2018/12/15
「プログラム学習 6章 どのように教えるか」

【まとめ】
個別学習の必要性を説いたのは、バラス・スキナーだ。彼はプログラム学習という学習方法を考案した(Skinner, 1954)。

プログラム学習は、道具的条件づけと、シェーピングの考え方を土台としており、5つの原理がある。①積極的反応②スモールステップ③即時確認(即時教科)④学習者の自己ペース⑤学習者検証の原理であり(本書では①~④の4原則となっている)、詳細は下記となる。

①積極的反応の原理:学習者がどの程度理解したかは、問題に答えさせて判断する。外に出してみることで初めて学習の程度が判明すると考えよ。
②即時確認の原理:学習者の反応の正否をすぐ知らせる。学習者は、自分の反応が正しかったかどうかを知った上で、次の反応を要求されるようにせよ。
③スモールステップの原理:学習者がなるべく失敗しないように、学習のステップを細かく設定する。失敗をするとそれが定着する危険性があると考えよ。
④自己ペースの原理:学習者個々が自分のペースで学習を進められるようにする。適当なスピードは学習者それぞれによって異なると考えよ。
⑤学習者検証の原理:プログラムの良し悪しは、専門家が判断するのではなく、実際に学習が成立したかどうかで判断する。そのためには、未学習の協力者に開発中のプログラムを試用してもらい、必要に応じて改善せよ。(熊本大学大学院 教授システム学専攻のHPより)

また、直線型のプログラムでティーチングマシンも作製された。プログラム学習の考え方が受け入れられた割には、あまり普及はしなかった。原因は、ティーチングマシンの開発が遅れたことにある。しかし、プログラム学習はCAI(Computer Assisted Instruction)と呼ばれるコンピュータ支援授業として再び脚光を浴びている。1980年代に入り、コンピュータ技術は飛躍的に進歩した。結果、学習者個人に対応して問題を提示する機能をもつソフトも作られ、CAIは多くの学校で利用されるようになった。

【所感】
プログラム学習はとてもインパクトのある学習法であり、タブレット等を使って、学習する原形がここにあったと気づきました。文科省のHPでも紹介されているぐらいですから、学習には有用なのだと思います。

咲心舎では試験前、個別演習形式になります。ただ、プログラム学習との違いは②即時確認③スモールステップになると思います。①積極的反応は問題を解かせることで解消していますし、④自己ペースは自分で計画を設定することで解決しています。⑤学習者検証もテスト類の点数で判断ができます。ただ、②即時確認については、紙の教材では塾生が自身で1問1問〇×をつけることがモチベーション的に難しく、ITだからこそ可能な部分だと思います。また③スモールステップも、ある程度の難易度の階段をつくることは行っていますが、1問1問で分岐をつくり完全にその塾生に合わせた形で設定するのはITならではの部分です。

将来的には生徒使用のITツールを考えていきたいと思っていますが、現段階でITツールを直接使用せずとも②③の原理を促進する施策を考えることは、個々の学力を伸ばすために有効だと思います。英克、浩子と共に考えていきます。
(1323字)

宗興の本棚

第72週『坂の上の坂』

第72週
2018/12/15
『坂の上の坂』
藤原和博著 ポプラ文庫

近日藤原さんとお会いする予定で、丁度良い機会なので以前から読みたいと思っていた本書を手に取りました。藤原さんの本は全部で5冊目。一人の作家として私が最も多く読んでいる方であり、それは思想背景が通底するからです。成長社会から成熟社会へ。藤原さんと私の思想背景はこの社会構造の変化にあります。

この変化に対応して、幸福になるにはどうすれば良いか。ポイントとなる所論を幾つか列記します。

『これをやっていればいい、というみんなが追いかける一般解や目標には、あまり意味がなくなってくる。自分が何を追いかけたいのかが問われてくるのです。そうなれば、一人一人は間違いなく「考える」ことを求められるようになります。すなわち自分で考えること、「哲学」が必要になってくる、ということです。』

『人が幸せになるためには、自分自身で「何が幸福なのか」を定義しなければならない。』

『みんな一緒に「上手く生きる」という高度経済成長的なライフスタイルから、それぞれ一人一人が豊かさを楽しむライフスタイルへの移行です。』

『自分なりの「幸福論」を自分自身で編集しつづけている人は、すでに幸せになっている。』

これらが共通提起しているのは「考える」ことではないでしょうか。「ライフスキル教育」の本質も自分の今を、未来を自分の頭で考えることであり一緒です。

ただ、これだけ藤原さんが言い続けていても、成熟社会という言葉自体を知っている人、行動する人は少ない印象です。言葉を知っている人は管理職研修でも3割ぐらい。それは成熟社会を実感する機会がないからだと思います。私の使命は少しでも「成熟社会」のリアルを感じ、考え行動するリーダーを増やす事。より伝わりやすくなるよう、冬休みにもう一度思想の整理をしていきます。
(732字)