教育心理の部屋

第47回「適性処遇交互作用 6章 どのように教えるか」

第47回
2018/12/22
「適性処遇交互作用 6章 どのように教えるか」

【まとめ】
リー・ジョセフ・クロンバックは、適性処遇交互作用あるしはATI(Aptitude Treatment Interaction)の考え方を提唱した(Cronbach,1957)。これは、「学習活動の成果は、学習者の持っていると特性・適性と、教授方法の相互作用の結果」ということだ。

クロンバックの指導により、スノーら(Snow et al.,1965)が次のような実験を行った。初等物理学を受講している527名の大学生を対象に、適性検査(対人積極性、責任性など)を実施。二つのグループに分け、一方は映像授業、もう一方は通常授業を行った(計14回)。毎回小テストを行い、合計点を成績としたところ下記の結果がでた。
・平均点は映像と通常授業の差がなかった。
・特性により整理しなおすと、対人積極性が高い学生群は教師による授業で高得点となり、低い学生は映像による授業で高得点となっていた。
・対人積極性が平均的な学生は教授法の違いはほとんど影響がなかった。
つまり、適性処遇交互作用がはっきり見られた。

適性要因は、対人積極性に限られたものではない。下記が適性要因と考えられる。
A能力の特性(1)知能(2)記憶力(3)思考力(4)学力
B性格の特性(1)性格(2)認知スタイル(3)テスト不安傾向
C態度・意欲の特性(1)対人的態度(2)学習内容への興味・意欲(3)学習習慣

【所感】
適性処遇交互作用の「全ての学習者にあった教授法・指導法がないかもしれない」という研究結果は、とても納得感が高いものです。トライ在籍時に、会社ではエニアグラム(性格診断)による学習法を推進していました。これはまさに適性処遇交互作用を背景にしたものと、あらためて気づきました。

学習塾の形態で言えば、集団型が合う子供も個別型が合う子供もいて選択肢が広がる現代は子供の能力伸長にとってはとても良いことです。その上で、適性処遇交互作用から鑑みると、集団型である咲心舎が気をつけることは、やはり「子供達一人一人」ということでしょう。集団型にしているのは、塾生同士の相互作用が大きいからです。刺激し合える友達といることが、伸びる環境になると考えてですが、私自身ずっと一人一人という事を意識してきました。出す課題や声掛けの仕方なども変えつつ、またビジョンセッションでは、塾生に自分にあった勉強法を考え、試行錯誤してもらっています。今回の内容はあらためて、英克、浩子と共に銘記すべきことであり、引き続き一人一人を皆で探求していきます。
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宗興の本棚

第73週『伸びる子の育て方』

第73週
2018/12/22
『伸びる子の育て方』
漆紫穂子著 ダイヤモンド社

漆先生ともお会いする予定があり、本書を手に取りました。漆先生は、品川女子学院の中等部新入生が5名という危機的状況から、7年間で偏差値を20ポイント以上高め、入学希望者が60倍になるまでに導きました。また生徒が28歳の時から逆算したライフデザイン教育を推進し、企業とコラボレーションし課題解決型の授業も実施されています。
今回は親目線を含め3つ程、心に残った部分を列記します。

一つ目は、子供の成功体験を認めて、ほめることが、未来のために達成感や自信の「貯金」につながるとのこと。これは「自信貯金」と呼んでもいいと思います。どこの教育本にも承認の重要性は書かれているのですが「貯金」という概念が素晴らしいと思いました。会食に同席したLIFULLの井上さんからも「あまり出来がいい方ではなかったけど、何かできたときは母親がめっちゃほめてくれた」と仰っていたことで、承認の大切さを再認識しました。また、子供が壁にぶつかったときに、過去の成功体験を話すことで「自信貯金」が想起され、自己肯定感の芽が育つという話も印象的でした。最近4年生の長女への承認が少なくなっていた自覚があったので、意識的に承認をしていきます。

二つ目は、親が過保護・過干渉を卒業し、むしろたくさんの失敗と、もめ事をプレゼントすること。朝、中々起きられない子供と話し合い「毎朝1回だけは起こして欲しい、その後自分で起きる」と合意したところ、自分で起きてきたエピソードが載っていました。そして『子供がひとりで起きられる力を、いままで自分が奪っていたことに気づきました。』という保護者の言葉が印象に残りました。もっとかわいい我が子に「旅」をさせます。

三つ目は、自己肯定感はやり直しがきくということ。漆先生自身も苦い思い出をもち、それが自己肯定感を低めていたそうです。周りからは「え、あなたが?」と言われたそうですが、自己肯定感はあくまで自己評価=内的評価に起因するものです。漆先生はトライアスロンの大会に出場し完走したことで、自分の約束を後回しにしないことが達成でき、自己肯定感が高まったそうです。『自己肯定感はいくつになっても、育てることができるのです。私自身、それを手に入れることができたのは、つい昨年のことだったから』という言葉から温かさを感じます。自分自身との約束、私を守っていきます。
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