教育心理の部屋

第48回「教育の成果を評価する 7章 児童・生徒をどう評価するか」

第48回
2019/1/26
「教育の成果を評価する 7章 児童・生徒をどう評価するか」

【まとめ】
教育評価の目的は4つに整理ができる。
1.教師の指導のための評価
2.生徒の学修のための評価
3.教授方法や教材などの効果研究のための評価
4.クラス分けなど選抜・振分けのための評価

また教育評価における評価は3つに分けられる。絶対評価、相対評価、個人内評価だ。
1.絶対評価
生徒のそれぞれの成績や反応とは関係なく、基準が存在しているもの。絶対評価は二つに分かれ、認定評価と到達度評価となる。
(1)認定評価
絶対的な基準が、評価者個人の中にあり、評価者によって基準が変わるもの。大学内の試験では、基準が教師の主観にあるので認定評価といえ、教師によって「甘い」「厳しい」という違いが生じることがある。
(2)到達度評価
評価者を越えた教育目標を基準として、教育目標の到達の有無や程度を評価しようとするもの。
2.相対評価
生徒の成績や反応によって基準が変わるもの。同一試験を行い、その集団内での相対的地位によって評価する相対評価は、評価者による相違は生じる余地がなく「客観的」である。
3.個人内評価
同一の個人の過去のデータと比較するもの。

近年の指導要録(通知表)の改訂では、相対評価を緩め、到達度評価的な観点を重視する傾向が強まっている。相対評価は、生徒が何をどの程度学習したか、どのくらい努力したかを必ずしも直接反映せず、生徒のやる気を阻害する可能性があるからだ。ただ、到達度評価も「批判的に考える」「音楽で情緒を豊かに表現する」という目標設定自体が難しい項目が存在することや、目標の難易度によっても生徒のやる気を下げるおそれがある点には注意が必要である。

【所感】
咲心舎で大切にしているのは、個人内評価です。私達は「自己ベスト」という言葉をよく使いますが、他人比較より自分比較をする、つまり自分の成長を感じる方が、自己肯定感を高めやすく、ライフスキル教育のスタンスとして適切だからです。一方で、ある教科が50点だったものが1年後51点になった場合、周囲が「成長したね」とはいっても子供自体が「成長した」とは感じにくいのも現実でしょう。つまり単に自己ベストというたけでなく、自分なりの一定基準を満たすことが自己肯定感を高めることが必要なのでしょう。

頑張った、成長したと自己認知ができる目標の目安として塾生達に聞くと80点という声が多く上がりますが、これも本来は一人一人違うはずです。到達度評価の観点で一律に80点と安易におくのではなく、自己賞賛できる目標設定をすることを、引き続きその重要性と共に促していきたいです。
(1051字)

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第78週『1000人確実に集客できる方法』

第78週
2019/1/26
『1000人確実に集客できる方法』
関根典子 ディスカヴァー・トゥエンティワン社

花まる学習会の高濱代表の講演を聴きにいったことがあります。その際、新宿の文化センターに2000名ぐらい集まっていました。たった1回きりの講演ではなく、複数回講演をされている中、1回で2000名も集めるとはと驚嘆したことを覚えています。

どんなに良いコンテンツをもっていても、伝わらなければ広まっていきません。今後「ライフスキル教育」でイベントを行うなども考えられ、今のうち集客施策の知識を深めておこうと手に取りました。

特に印象に残った項目3つを列記します。

一つ目は、イベントプランニングシートです。イベントのテーマ、目的、根拠、イベントの魅力など15個の項目を順番に書いていくと、企画書が出来上がります。体系化され且つ各項目自体に納得感があるため、このシートをどんなイベントを企画する際にも活用すれば、Planの品質は担保できると感じます。

二つ目は、日頃から情報発信を積み重ねることです。中学時代の友人が30年ぶりに訪ねてきて、再会を喜びあい昔話に花が咲いていたのですが、最後に「今度選挙に出る」と言われ、興ざめした方の話が載っていました。確かに何の音沙汰もないのに、自分が何か頼みたいときだけ連絡してくるのは都合の良い話です。日頃からSNSなどを含め、近況報告など時折でも発信をしていれば相手に安心感をもたらすと著者は言っています。近況を少しでも継続的に発信していくことは、以前から考えていました。個人ブログも開設しているので、どう活用していくか、ゆるりと考えていきます。

三つ目は、「マグネットパーソン」に協力してもらうことです。マグネットパーソンという用語が面白いなと思いました。多数のネットワークをもち人をひきつける人です。ぱっと思い浮かぶのはFB5,000名の登録がある人かなと思いました。
(748字)

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第77週『ファンベース』

第77週
2019/1/19
『ファンベース』
佐藤尚之著 ちくま新書

咲心舎では大量の宣伝をするより、在籍&卒業した塾生と保護者様を大切にしながら、口コミで集客をしていくのが理想的なマーケティングモデルであると考えていました。本書はその考えにぴったりと適合する手法だと感じ手に取りました。

読後感としては、「ファンベース」は心底私達に性が合う手法だと感じます。ファンベースとは、ファンを大切にし、ファンの支持を土台にしながら、中長期的に売上や価値を上げていく考え方です。人口減少下の日本の中で、新規顧客の獲得難易度は益々高まっています。新規顧客を増やし、長く安定して商品が売れ続けるために、一過性の宣伝・販促活動より、ファンベースの施策が効果を生むと著者は論じています。

ファンベース施策の最初の段階でのキーワードは、「共感・愛着・信頼」です。

・「共感」を強くする
Aファンの言葉を傾聴し、フォーカスする
Bファンであることに自信をもってもらう
Cファンを喜ばせる。新規顧客より優先する
・「愛着」を強くする
D商品にストーリーやドラマを纏わせる
Eファンとの接点を大切にし、改善する
Fファンが参加できる場を増やし、活気づける
・「信頼」を強くする
Gそれは誠実なやり方か、自分に問いかける
H本業を細部まで見せ、丁寧に紹介する
I社員の信頼を大切にし「最強のファン」にする

この中で4つまず取り組みたいことを列挙します。

A.ファンの言葉を傾聴し、フォーカスする
『ファンが一番喜ぶのは「支持している価値」のぶれない改善である』と著書は言っています。咲心舎では毎年の保護者アンケートで、咲心舎の良さを記入頂いています。その中には「熱心なところ」等共通して書いて頂いている価値があります。ここに、こだわりをもち磨いていくこと、そして「熱心なところ」を含め保護者様・塾生(ファン)から傾聴した言葉をもとに自社サイトの改善に取り組みたいです。
「ファンミーティングの開催」も著者は薦めていますが、これは我が意を得たりであり、以前に考えていました。咲心舎は保護者様や塾生と一緒に創る塾と考え、ファンミーティング的なものの開催も夢想していました。どこかで実現したいと思います。

Bファンであることに自信をもってもらう
著書曰く、ファンは案外自信がないとのこと。自信をもってもらうには、オーガニックなファンの言葉をもっと他のファンに届けることが有効と仰っています。顧客の「自分の言葉」が周りの類友や友人に届くことを「オーガニックリーチ」と呼びます。いわゆる「口コミ」であり、家、車、大型家電など、購入する機会が中々ない&高額なものほど、類友からの言葉が効くとあります。オーガニックな他の保護者様や塾生の名前の声や出来事を通信やブログなどでより一層伝えていくことは意識的に取り組んでいけることと感じます。

D商品にストーリーやドラマを纏わせる
H本業を細部まで見せ、丁寧に紹介する
実はこの二つは類似のものであり、要は私たちのこだわりや仕事の内容を更に発信することと捉えています。ライフスキル教育の開発ストーリーや、合格秘話を発信することも大切ですが、カリキュラム作成、授業準備、もっかんシートのチェックなど、私達は日常で丹精こめていることも多くあります。これらを発信することは、ブログ等ですぐにできると思います。

ファンベースは、『自分たちが生み出し、愛してくれている商品。その価値を支持してくれ、愛用してくれているファンの笑顔を作ることほど、うれしく、誇らしく、やり甲斐のある仕事は他にないだろうか。』という言葉に凝縮されていると思います。

これまで、保護者様や、企業研修など私はこの喜びを感じながら、事業をしてきました。任せて頂いた保護者様の子供、共感して頂いた経営者様の社員と接し、伸ばしていくことは本当にやりがいがあり、無上の喜びです。まずは良質なコンテンツありきで、塾生・保護者様の満足を追求することとは変わりませんが、マーケティングにおいてもこのファンベースで顧客を大切に顧客と共にじっくりと進めていきたいです。
(1649字)

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第76週『教育行政と学校・教師』

第76週
2019/1/12
『教育行政と学校・教師』
髙橋 靖直著 玉川大学出版部

公教育にライフスキル教育を展開するには、行政と共に進めていく必要があります。教育行政の構造を理解する目的で、本書を手に取りました。

まず教育行政の定義は、『国及び地方公共団体が教育政策実現のために行う規制作用、助成作用および教育事業の実施を意味する。』とあります。これで教育行政の行うことをシンプルに規制と助成という枠組みで把握することが可能になりました。

そして、日本の教育行政の歴史は大変勉強になりました。
簡潔に言えば、戦前は勅令主義、戦後は法律主義。戦前は中央集権、戦後は地方分権。と表すことができます。

まず日本の教育行政は1871年の文部省設立、1872年の「学制」の頒布に始まります。中央政府は教育の内的事項を決め、地方政府は学校の設置など外的事項に関わります。教育は天皇の命(勅令)ということで、帝国議会からは切り離され、内容は文部省と枢密院を中心に決められ強烈な官僚主導のものとなりました。

戦後はGHQにより教育改革が実行されました。「民主化」「地方分権化」「一般行政からの独立」の三原則を体現したのが、1947年の「教育基本法」です。本書の中でも教育基本法の条文が随所にでてきており、教育行政ひいては教育自体も法律に基づくものという印象を持ちました。この教育基本法の目玉は、地域の希望を反映させる形で、教育委員会制度の設置と考えてよいと思います(あわせて教育委員会法も成立)。教育委員会の委員を地域住民の選挙で行う、ただし教育長は免許をもった専門家で、「素人支配と専門家指導」の組み合わせで運営を行う仕組みにしました。

しかし、冷戦の影響を受け1956年には教育委員会法が廃止され、「地方教育行政法」が制定されます。行き過ぎた地方分権の是正を目指し、教育委員の選任を首長による任命制に、教育長の免許制が廃止されあいまいなものになりました。また、文部大臣―都道府県教育委員会―市町村教育委員会の連携を強化し、教育委員会からの予算作成権限の委譲を行いました。一言でいえば、首長に従属することになったと捉えてよいです。

冷戦が終了後、1998年中央教育審議会から「地方分権と学校の自主性確保」が提唱され、
1999年国の地方に対する「地方分権一括法案」が成立しました。教育長任命承認制度の廃止など、地方分権と規制緩和が大幅に実現された。ちなみに2001年文部省は文科省となります。

公教育に関わる方々と接する上で、これらの歴史をふまえた上で、目に見える形でなくともとても有意義なものと感じます。何度も見返し、引き続き知見を深めていきます。
(1068字)

宗興の本棚

第75週『小さな会社生き残りのルール』

第75週
2019/1/6
『小さな会社生き残りのルール』
市川義彦著 長崎出版

厚く重い本が続いたこともあり、少しライトなものをと手に取りました。著者の市川さんは、九州の警備会社の社長。24歳の時に立ち上げ、幾多の試練を越え、現在自社ビル、社員寮を保有し、完全無借金経営をされています。

本書はデフレ経済下で小さな会社が生き残る「守りの経営」を説いた本です。「小さくても強い会社」になる経営者のノウハウが書かれています。しかも、強い口調で。ノウハウというより「喝」でしょうか。この喝の中で特に心に響いた3つを書きます。ちなみに装丁は黄色、イラストも落書きのようなかなり「刺激的」な本です。

まずは「小さな会社の経営者にプライドは不要」。経営者は先頭に立って、留保金を資本金の10倍になるまで、先頭に立って寝る間も惜しんで働け。役など一銭にもならないから引き受けるな。車や装飾品なども安くてよい。そもそもデフレ時代に売上拡大路線が偉いと考えるな。「社長は良心に従うサムライ」であれ。など、見栄やプライドなどどうでもよいという主張が何度も出てきます。それだけ経営者がプライドに執着すること、それが会社を衰退させることを自他の経験から実感しているのでしょう。この喝は私にとって以前だったら「耳が痛い」ものでしたが、今は不思議と心地が良いです。私は自社のミッションの遂行、ビジョンの実現にまい進すればよいわけで、段々体現し始めているのかもしれません。

次に、「中真面目」。真面目過ぎると頑固で融通がきかず、息も詰まる。遊びなども人並みにやるが、分を守って決して深入りをしない「中真面目」が一番良いとあります。私は全て仕事に結びける仕事一辺倒人間であり、最近ようやく趣味ができました。それでも「ビジョン実現に向け、趣味に時間使ってよいのか?」と自問する時があり、この「中真面目」で安心しました。

最後に、経営者に求められるリーダーシップとは実は「社員の支持があるかないか」であること。上の二つも要は社員に支持を得られるかに帰結すると思います。私は社長が社員から支持を得ていない会社は、お客様に対しての価値も最大化しないと考えています。年1回の全員サーベイはやはり続けていきたいです。
(892字)