宗興の本棚

第76週『教育行政と学校・教師』

第76週
2019/1/12
『教育行政と学校・教師』
髙橋 靖直著 玉川大学出版部

公教育にライフスキル教育を展開するには、行政と共に進めていく必要があります。教育行政の構造を理解する目的で、本書を手に取りました。

まず教育行政の定義は、『国及び地方公共団体が教育政策実現のために行う規制作用、助成作用および教育事業の実施を意味する。』とあります。これで教育行政の行うことをシンプルに規制と助成という枠組みで把握することが可能になりました。

そして、日本の教育行政の歴史は大変勉強になりました。
簡潔に言えば、戦前は勅令主義、戦後は法律主義。戦前は中央集権、戦後は地方分権。と表すことができます。

まず日本の教育行政は1871年の文部省設立、1872年の「学制」の頒布に始まります。中央政府は教育の内的事項を決め、地方政府は学校の設置など外的事項に関わります。教育は天皇の命(勅令)ということで、帝国議会からは切り離され、内容は文部省と枢密院を中心に決められ強烈な官僚主導のものとなりました。

戦後はGHQにより教育改革が実行されました。「民主化」「地方分権化」「一般行政からの独立」の三原則を体現したのが、1947年の「教育基本法」です。本書の中でも教育基本法の条文が随所にでてきており、教育行政ひいては教育自体も法律に基づくものという印象を持ちました。この教育基本法の目玉は、地域の希望を反映させる形で、教育委員会制度の設置と考えてよいと思います(あわせて教育委員会法も成立)。教育委員会の委員を地域住民の選挙で行う、ただし教育長は免許をもった専門家で、「素人支配と専門家指導」の組み合わせで運営を行う仕組みにしました。

しかし、冷戦の影響を受け1956年には教育委員会法が廃止され、「地方教育行政法」が制定されます。行き過ぎた地方分権の是正を目指し、教育委員の選任を首長による任命制に、教育長の免許制が廃止されあいまいなものになりました。また、文部大臣―都道府県教育委員会―市町村教育委員会の連携を強化し、教育委員会からの予算作成権限の委譲を行いました。一言でいえば、首長に従属することになったと捉えてよいです。

冷戦が終了後、1998年中央教育審議会から「地方分権と学校の自主性確保」が提唱され、
1999年国の地方に対する「地方分権一括法案」が成立しました。教育長任命承認制度の廃止など、地方分権と規制緩和が大幅に実現された。ちなみに2001年文部省は文科省となります。

公教育に関わる方々と接する上で、これらの歴史をふまえた上で、目に見える形でなくともとても有意義なものと感じます。何度も見返し、引き続き知見を深めていきます。
(1068字)