教育心理の部屋

第49回「教育の成果を評価する② 7章 児童・生徒をどう評価するか」

第49回
2019/2/9
「教育の成果を評価する② 7章 児童・生徒をどう評価するか」

【まとめ】
ルース・バトラー教授(Butler, 1988)は到達度評価的なフィードバックの有効性を示した。子供達に課題を行ってもらい、相対評価的な成績をつけて返す群と、良いところ、悪いところをコメントする群と分け、その後の課題遂行がどうなるか検討した。その結果、特に成績の悪い子供達では、コメント群で課題遂行成績が改善されていた。一方、相対評価的な成績をフィードバックされた群は遂行の改善が見られなかった。

【所感】
最近咲心舎において学力テストの結果が出ました。咲心舎内順位が出て、刺激という意味で順位を伝えるのも良いかと思いますが、この返却の仕方はあらためて注意が必要と考えています。というのも、バトラーの結果は、成績が悪い子供達は、相対評価的な成績を返すだけにとどめると、逆にその後の課題成績が下がることも示されています。

そもそも学力テストは自身の現状を把握し、次の成長につなげるものです。強みを伸ばす、弱みを克服するという点で、講師からのフィードバック(コメント)は必要なことと感じます。小6については、三者面談があるので塾生一人一人の課題を明確にし、今後の対策について保護者様、本人、私達の中で共通認識をつくることを行っています。その他の学年についても、本人任せにするのではなく、講師からのフィードバックを丁寧にしていきます。
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宗興の本棚

第80週『ゲームの変革者 ~イノベーションで収益を伸ばす~』

第80週
2019/2/9
『ゲームの変革者 ~イノベーションで収益を伸ばす~』
A・Gラフリー ラム・チャラン著 日本経済新聞出版社

昨期からあるIT系のクライアント様にイノベーションをテーマにトレーニングを提供しています。一人でも多くの参加者がイノベーティブな事業、製品、サービスを生み出せるよう知見を増やすために手に取りました。

アリエール、パンパース、パンテーン、ファブリーズなど、有名ブランドを数多く創出し続けているP&G社。P&G社にはイノベーションを生み出す土壌となる文化があり、それは「消費者がボス」という言葉に集約されます。この「消費者がボス」を実践する施策の中で、私が一番印象に残ったのは、お客様の「リアル」を知るプログラムです。P&Gは最初に市場調査部門をつくった会社であり、データ収集や市場分析を徹底的に行っています。ただ、2002年までは、顧客はデータを提供してくれる存在でしかありませんでした。2002年から消費者密着型の方法に変え、代表的な「生活してみる」「働いてみる」という二つのプログラムをつくりました。

「生活してみる」は社員が消費者の家庭で数日過ごす企画です。この「生活してみる」の成功例がメキシコ市場です。メキシコ市場で国民の60%を占める低所得者層に対してダウニーのシェアは低迷をしていました。P&G社は2002年に「生活してみる」のプログラムを進め、幾つかの決定的な事実を発見します。まず、メキシコには水の問題があるということです。僻地に住む人は、いまだに地域の井戸や水道ポンプまでいってバケツで水を運び、また都市部でも一日数時間しか給水されないところが多かったのです。一方で、低所得者層の女性は、洗濯を本当に真剣に考えています。家族の身だしなみを整えることに並々ならぬプライドをもち、アイロンも頻繁にかけることが分かりました。つまり、洗濯が一番多くの時間をかける重労働であることがはっきり分かったのです。

こうして「洗濯を楽にして水量を抑える」という解決すべき問題点がはっきりし、洗う・柔軟剤を入れる・すすぐの3ステップですむ商品「ダウニー・シングル・リンス」を出しました。これは発売と同時にヒットとなりました。

三現主義の話と共に「お客様の『リアル』を知ってください。」と常々私は参加者に言っています。高名なP&G社でさえ、これだけリアルを知る努力をしているということは、参加者の背中を押す材料になりそうです。

最近読書のペースに、レポートが追いついていません<苦笑>。何冊か読了したものがたまっています。本書も11月末には読了していました。
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