教育心理の部屋

第52回「評価のための情報を得る方法② 7章 児童・生徒をどう評価するか」

第52回
2019/3/23
「評価のための情報を得る方法② 7章 児童・生徒をどう評価するか」

【まとめ】
本書では何を知るのかという点で3つを挙げている。
1.学力を知る
2.知能を知る
3.性格を知る

2.知能を知る方法は、知能テストが代表的である。
近年では、知的活動の内的な過程に着目した知能テストであるITPAも用いられるようになっており、LD(学習障害)の子供の診断のためによく用いられている。

LDは学業不振の子供のことではなく、全般的な知的水準は平均的であるのに、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなど特定の基礎的能力に問題のある場合である。文の意味をとるのが難しい、読めばわかるのに聞くとわからない、算数だと桁をうまくそろえられないなど、それぞれの子供により色々な問題を抱えている。

3.性格を調べるためのテストは、3つに分類される。
・質問紙法(性格検査)
・作業検査法(クレペリン検査)
・投影法(ロールシャッハテスト)

【所感】
LDという言葉を知ったのは、咲心舎創業年に出会った塾生の保護者様でした。この塾生は計算、漢字、受け答えなど体験授業時に問題は感じられませんでしたが、保護者様からLDの検査を受けており結果は「グレー」であると告げられました。まずやってみましょうということで、指導を引き受けましたが、単純な計算から二手三手必要なものになると反復しても習得ができない、国語の読解において解説が理解できないなど、段々と指導が困難な状況になってきました。自分なりに様々なサイトを調べ、何が問題かを探っていくうちに、菜の花や鉛筆など物質名詞は理解できるが、特色、協調などの抽象名詞が理解できないことが分かりました。本書では、積み木や、迷路、組み合わせなどの動作性検査のIQが111に対し、言語性検査のIQは78という9歳LDの子のチャートが載っており、おそらくこの塾生も言語性検査に問題があったのではと推察できます。最終的に集団授業の中では受け持てないので、苦渋の中、学年の区切りで別れとなりましたが、LDという文字を見ると当時の経験を思い出します。

社会起業支援NPOであるETICのリーダーと公教育の話をした時に「今学校はLDの子が増えていてそれが問題になっている。教職課程にLDの資格を入れるべきであり、その活動を行っている」という話がありました。以前との比較は難しいのですが、LDの子が増えているというより、LDという言葉ができたことで、LDではあったが認知されていなかった子供が認知されているのかもしれません。そして、何よりそれに見合った指導法をしていこうという、社会全体の良い動きに私は思えます。
(1059字)

宗興の本棚

第86週『アウトプット大全』

第86週
2019/3/23
『アウトプット大全』
樺沢 紫苑著 サンクチュアリ出版

昨年の後半、大きな話題になった本書。「ビジネス書ランキング1位、25万部突破」という紹介を毎日東京FMで聞いていました。その時は食指が動きませんでしたが、社員の高橋が「とてもいいですよ」と薦めてくれて読むことにしました。

筆者は、人の成長はアウトプットの量で決まる、と言っています。逆にインプットはただの「自己満足」と言い切っています。そして、アウトプット(話す、書く、行動する)は運動性記憶であり、読んで覚える暗記の意味記憶とは異なり、身につきやすいとのことです。

また、コロンビア大学の心理学者アーサー・ゲイツ博士の実験を出し、成長にはインプットとアウトプットの比率を3:7とするのが丁度よいと言っています。実験では、小3から中2までの100人以上の子供達に「人名年鑑」に書かれた自分物プロフィールを9分間で覚えるよう指示。グループ毎に覚える、練習するの時間割合を違えて結果をみたところ、覚える時間に40%費やしたグループの得点が一番高かったそうです。また年長になると覚える時間に約30%の時間を費やしたグループが高得点だったのこと。

成長におけるアウトプットの重要性は認識していましたが、このように脳科学、生理学的な見地から伝えられ認識に深みが増しました。

加えて、引用された学術研究は、有用なものが多く、
ザイオンス効果ではコミュニケーションの質より量の重要性を、
ヤーキーズ・ドットソンの法則では、適度な緊張がパフォーマンスを高めることを、
ハインリッヒの法則では、ヒヤリハットを重視するリスク管理の重要性を
イリノイ大学の長寿研究では、感謝や幸福度の大切さを、
それぞれ示しています。早速登壇時に、参加者にも伝えていきたいと思います。

「へえ」が沢山ある本でした。ベストセラーの条件の一つは「へえ」が沢山あることかもしれません。
(760字)