週の風景

010 清瀬二中VS開始!

本日はNPOの話です。
5/21(火)に、今年度の清瀬二中ビジョンセッションが開始しました。

公教育の現状を鑑み、英明と一緒にプログラムをリニューアルしました。ビジョンセッションの中核となる「対話」。初回はその対話の出発点となる、自分の心や気持ちを感じて、伝えることを学びます。

公教育で行うビジョンセッションの最大の障壁は、万人への興味付けです。

当たり前ですが、公教育では咲心舎(学習塾)と異なり、生徒の理解力や受け止める姿勢にばらつきがあります。セッションは4人一組で対話を行うため、一人がふざけてしまうと、グループ全体がセッションにならない、という現実があります。40人クラスで、30名はノッても10名が難しいと、クラス全体のセッションが成立しなくなります。授業は大体真ん中の子にあわせて行えば良いですが、理解力や受け止め姿勢が低い子供達がノッてくるプログラムを考える必要がある。これが、公教育で行う難しさです。

さて、今年度の実際はどうだったか。

あるクラスで先生が

「ビジョンセッションをやりまーす」

と言ったら、

「え、あの〇〇なやつだ」という声が。(〇〇は、うざい、めんどくさい的なニュアンスの言葉です)

「よし」と思いそのクラスに張り付きました。

すると、やはり男子の何人か、まじめにやらない子がいて、そのグループのセッションが進んでない現実を目の当たりにしました。いつもは何クラスか回っているため気づかない面もありましたが、この日は最初から最後まで見る事ができ、困っている中身がよく分かります。「これが続くようであれば、先生がやるのを嫌がってしまう」と感じつつ、目をそらすことなく「やさしい先生-ふざける生徒」この図式をしっかりと目に焼き付けました。

荒川校長にも見て頂き、5クラスのうち他の4クラスは比較的スムーズだったようです。「司会はよかった」など、変更した部分の評価もある先生から頂きました。今年は上記の厳しいクラスの先生に寄り添い、更に興味付けするような内容にもっていきたいと思います。必ずこの先生に安心して「是非やりたい」と言ってもらえるよう、子供達がノッくるものを生み出します。

今週は、今日明日咲心舎のビジョンセッション、そして研修は新しいクライアント様の社員インタビューなどがあります。体調に気をつけつつ走りたいと思います。

※写真は、あるクラスで始める前に先生が伝えていたこと。ビジョンセッションの主旨を理解し、伝えて頂き、とても嬉しい気持ちになりました。

教育心理の部屋

第56回「臨界期 8章 人間の発達について考える」  

第56回
2019/5/25
「臨界期 8章 人間の発達について考える」  

【まとめ】
動物行動学者のロレンツ(Lorentz、1952)は、ハイイロガンのヒナが生後十数時間以内に刺激対象が与えられないと追従反応が生じないことを見出した。この時期を「臨界期」と名付けた。ロレンツは、孵化後、自分だけがそこにいるようにした。するとヒナはロレンツを親だと思い追従行動をし続けた。また生涯にわたりそのことを消し去ることができなかった。生後まもなくの限られた時間内に生じ、再学習することが不可能になる学習現象を、ロレンツは刷り込み(インプリンティング)と名付けた。

ヘス(Hess,1958)は、模型の親ガモを回転させ、追従反応が生じるかどうか調べた。孵化後13~16時間で追従反応の生起率は最大になり、29時間~32時間では、ほとんと生じなかった。

では臨界期が人間にもあるのか。人間にも臨界期ほどの強いものではないが、学習に適した敏感期があると言われている。北村(1952)が行った興味深い調査がある。太平洋戦争のために福島県に疎開した子供達が地元のアクセントをどの程度習得したかを年齢ごとでまとめた。6歳以前に疎開した子供達は100%習得できたのに対し、7歳以降は疎開年齢が遅くなるほど習得できなくなっていることが分かった。

【所感】
臨界期の話を聞くと、スキャモン曲線を思い出します。この曲線によると10歳ぐらいまでが神経系が著しく発達する時期とのこと。息子の宗真がアスリートになりたい、という夢があり、幼児運動系の書籍を私が三冊読んだところ、全ての書籍にスキャモン曲線の話がありました。そして三冊とも「競技を決めず、様々な動きをさせることが大事」と主張していました。臨界期というのが運動界において「定説」になっているのだと感じます。

臨界期と聞いてもう一つ思い出すことがあります。トライ時代、慶応中等部出身の社員と大学から慶応に入った社員と、中学受験の算数(図形)の問題を解いてもらったところ、中等部出身の社員は一目で「補助線」を引き、瞬間で答えを導きました。中学受験の算数は、通常の中学、高校だと扱わないため、大学から慶応に入った社員も、中学受験の問題の訓練をすれば、すぐに答えを出せるようになるとは思います。ただ、瞬時に答えを出した所から、この時期だからできる能力の開発があるかもしれないと感じました。

臨界期はよく早期教育の根拠になります。ただ、早期教育に熱を上げるのは、リスクを伴います。先述した「レディネス」の考え方は常に頭に入れておきたいものです。
(1036字)

宗興の本棚

第95週『THE TEAM』

第95週
2019/5/25
『THE TEAM』
麻野耕司著 幻冬舎・NEWSPICKS

前々職リンクアンドモチベーション社の後輩である麻野君の著書。本書との出会いのきっかけは15年来の知己であるLIFULL羽田さんです。打合せ時に、麻野君の本が出版されることと、発売前にもかかわらず30,000部の予約となり「すごいことになってますよ」と教えて頂きました。丁度、ブルームウィルの新しいチーム造りを模索していたこともあり、後輩に教えを乞うべく手に取りました。

一番参考になったのは、チームには唯一の絶対解はなく、最適解があるということです。筆者は、チームを「環境の変化度合い」×「人材の連携度合い」の2軸の掛け算で4タイプに分け、各タイプに適した解があると述べています。4タイプは、柔道団体戦型(変化大×連携小:生保の営業チーム)、サッカー型(変化大×連携大:スマホアプリの開発チーム)、駅伝型(変化小×連携小:メーカーの工場生産チーム)、野球型(変化小×連携大:飲食店の店舗チーム)です。

このタイプ分けに照らすと、もっともらしいチームに関する意見が、必ずしも正しいとは言えなくなります。例えば、「メンバーが入れ替わらないチームが良い」というのは、聞こえはいいですが、スマホアプリの開発チームなど、環境変化の大きなサッカー型のチームにおいては必ずしも当てはまりません。環境に合ったスキルを持った人材を常に流動的にアサインしていくことが求められるからです。「多様なメンバーがいるチームが良いチームだ」というのも、連携度合いが少ない駅伝型の組織ではスキルやスタンスが似たタイプのメンバーの方が、全体のパフォーマンスの総和は大きくなります。

咲心舎は、駅伝型にあてはまります。顧客が求めること(学力)や、こちらが教える内容(5科目)の変化はそこまで大きくありません。また一人で完結していくことが多い事業です。
駅伝型のチームは、ルールについて個人成果に責任を負う方がよい、確認が少ない方がよいなどの最適解があります。私の経験則からの法則を当てはめるのではなく、駅伝タイプに即した最適感を取り入れていきたいと思います。

最後に、より多くの人に再現性をもって理解してもらうために、複雑な事を分かりやすく説明する文体は、創業者で代表の小笹さんが生き移ったかのようでした。「伝承」を感じる書籍でした。
(944字)

週の風景

009 経営理念を再構築する

今年の5月は比較的研修が少ない月です。
この間に、組織整備に時間を使っています。

一番は、経営理念の改訂です。

現在のブルームウィル経営理念は、社是・使命・経営方針・行動指針の4つで構成しています。
これにプラス、各事業に事業ビジョンがあります。

「ビジョンも大切だが、よりバリュー(価値観)に重きをおきたい」

というのが今回の改訂のねらいです。
目指す姿は一緒でも根底の考え方が異なると、組織力が弱くなります。
起業して6年が経ち(3年×2回が過ぎ)もう一度、根底の考えをはっきりさせ、組織を再構築していこうと考えました。

新しい経営理念は、
社是(コアバリュー)・使命(ミッション)・価値観(バリュー)の3つを考えています。

参考になるのは、ミッション・バリュー経営を徹底されている、ユーザベース様です。

7つのルール

また「経営理念」という言葉自体も、「企業理念」に変更しようと考えています。

理念の構築は、間違いなく経営者の仕事です。

完成したら、是非皆様にもお見せ致します。

今週は、いよいよ清瀬第二中ビジョンセッションの2年目が開始します。
一年目の反省をふまえ、英明をはじめ皆と刷新したプログラムがどうなるか。不安もありますが、むしろ楽しみです。

※写真は現在の経営計画書です。

宗興の本棚

第94週『武士道』

第94週
2019/5/18
『武士道』
新渡戸稲造  奈良本辰也 訳・解説 三笠書房

現在の自分のテーマである、日本の文化と歴史の見識を深める第三弾として手に取りました。日経アソシエの『教養大全』に掲載されていた日本文化論の体系図の一番に出てくるのが本書です。

まず、私達日本人が儒教の影響を多分に受けていることを再認識しました。欧米においてキリスト教が担っている「道徳教育」の役割を、日本では武士道が担っていると著者は主張しています。そして武士道の源泉は『孔子の教えにあり』と筆者は述べています。自らを形成している道徳観を分析したところ、儒教の多大な影響を受けたことに気づいたのでしょう。著者が武士道を成すものとして「義、勇、仁、礼、誠、名誉、忠義」と7つの徳を挙げていますが、これは儒教の五常「仁、義、礼、智、信」と非常に近いものです。日本人を知るには、源泉である儒教を調べることが必要と感じました。

7つの徳の中で、特に印象に残ったのは「義」と「忠義」です。「義」は『武士道の光輝く最高の支柱』と筆者は言っています。筆者は「義」の定義を明らかにしていません。父母、目上、目下の者、大きくは社会一般などに対して負う「義理」について筆者が言及していることから、損得なく人や社会のことを思いやる正しい道のこと、と私は解釈しています。そして「義」で、ぱっと浮かぶのは元ビットアイルCOOの天野さんです。義の生き方が本当に素敵で敬服します。

「忠義」の章はエピソードが鮮烈でした。例えば、菅原道真に関わる物語。道真が追放され、彼の敵は一族を根絶やしにするべく、道真の幼子も厳しく探索し、道真の従者であった源蔵の寺子屋にかくまわれていることを突き止めた。結果、源蔵にその子の首を期日に届けるよう、命令が下った。源蔵は身代わりを立てることを考え、丁度入門してきた少年が幼君とよく似ていることに気づく。気づいたのはその母子も一緒で、ある日家の人目にふれぬ場所で、母子は自らを神仏の祭壇に捧げる決意をする。

いよいよ定められた日に、役人がやってきて、贋首を冷静に吟味したが、贋とは気づかず、去っていく。実はその役人の父は、長きにわたり道真公から恩寵を受けており、公の配流後、やむをえぬ成り行きから敵に使えなくてはならなくなった。そして身代わりとなって死んだ子供こそ、その役人の子であった。主君に不忠であったことが許されなかった時代、自分の息子を立派に祖父の主君に役立て、『「我らがいとけし倅は立派にお役に立ったぞ。悦べ女房」と叫んだ』。

西洋の個人主義は親子や夫妻の個別の利害を認めているが、一族の利害とその個々の成員の利害は一体不可欠であるとする。武士道はこの利害を愛情、すなわち自然で、本能にもとづくもので、かつ他の者がとってかわることができないもので結びつけた、と著者は言っています。忠義はとても自分には持てない徳ですが、何か考えさせられました。

武士道に沿った生き方は、今の自分にとっても自然な生き方なのかもしれません。これから、自分が迷ったとき、進むべき方向を示す指針になるとも感じました。
(1245字)

週の風景

008 参加者から勇気を頂く

先週は、先月も本ブログで触れたIT系企業様の部長研修の最終回がありました。

イノベーション&リーダーシップをテーマに半年間行ってきましたが、
GW前に私が最終回のプログラムアレンジをしている時点で、勝手に胸が熱くなっていました。

というのも、そもそもイノベーションがテーマで難易度の高いプログラム。
自分の殻を壊すまでいく必要がある。
業務多忙の中、自分と会社と社会と向き合い、インプットや現場実践に取り組んで頂いた部長陣の頑張りが目に浮かんだからです。

当日、進捗は様々ですが、皆さんそれぞれ壁にぶつかりながらも前に進めていて素晴らしかったです。

そして対話を重ねながら、ふと気づきました。

あれ?前回に続き一人、視界が変わった気がする。

明らかに言動に変化がある部長がいらっしゃいました。
昨年のマネージャー研修受講時から知っていたので、聞いてみました。

「〇〇さん視界、物の見方や考え方が変わった気がします。自分でも認識してますか?」

「そうですね」

「それはやはり部長になったからですか?」

「いやマネージャー研修時も副部長でしたから、部長になったとういより、このプログラム等を通して、大分意識が変わりました」

ありがたいです。

別の部長からも

「この研修も、マネージャー研修も来期もやって欲しい。部下に受けさせたい。今までで一番意味がある研修だと思う」

という言葉が。

ありがたいです。ぐっときました。参加者の方にこう仰って頂くのは本当に冥利に尽きます。

成熟社会が進行する中、自分の道を自分で拓けるリーダーを輩出していく。
私自身がまた勇気をもらった回でした。
もっともっと研鑽し、積み重ねていきます。

今週も制作、報告、研修と続きます。皆様と一緒に体調に気をつけつつ進んでいきます。

※写真はいつもお弁当をつくってくれる妻にも感謝の意をこめ

教育心理の部屋

第55回「双生児研究 8章 人間の発達について考える」  

第55回
2019/5/11
「双生児研究 8章 人間の発達について考える」  

【まとめ】
家系研究では遺伝要因と環境要因を分離することができないが、双生児研究法は有効である。

双生児には、一卵性(遺伝的に同一)と二卵性(きょうだいと同じ)の二種類がある。
ニューマンら(Newman et al.,1937)は、同じ家庭で育った50組の一卵性双生児と50組の二卵性双生児の合計200人を対象にビネーの知能検査を実施。それぞれの知能の相関を調べた。結果、一卵性の相関係数は0.80、二卵性は0.63であり、知能が遺伝の影響を受けることを示した。

アイゼンク(Eysenck, 1979)は、一緒に育てられた一卵性双生児と二卵性双生児の他に、異なる環境で育てらえた一卵性双生児やきょうだい、あるいは同じ環境で育った血縁関係のないもの同士や養子とその親の間の知能の相関を検討した多くの研究をまとめた。結果はやはり親と同居の一卵性(0.87)と二卵性双生児(0.53)の比較から、遺伝の影響が強いと言える。ただ、別居の一卵性(0.75)と比較すると、環境の影響も強いことが伺える。

一方、アナスタシーは別々の環境で育った19組の一卵性双生児を調べた。別れた時の年齢や、教育的環境値や社会的環境値などを得点化し、知能指数の差を比較した。結果、教育的環境差が大きいと二人の知能指数の差が大きいことが分かった。ここから環境の影響がかなり大きいことが分かる。

結論として、遺伝か環境かどちらが要因かは決められない。

これをふまえ、ジェンセンの環境閾値説がある。人が遺伝的にもっている能力が開花するかどうかに環境が閾値として作用し、特性によって閾値の水準が異なるというもの。

A身長など。必要最低限の栄養で開花する
B学力など。環境が良くなればなるほど正比例的に開花する
C絶対音感など。かなり恵まれた環境ではじめて開花する

最後に、筆者が行った遺伝論者か環境論者のどちらが多いかのアンケートを紹介する。学校の成績や、頭の良さなどの項目に対してどちらが大きな影響を与えるかを答えていく(大学生197名と小学校の教師57名で実施)。
【結果】
①極端な遺伝論者も環境論者はいない
②大学生と教師であまり差異がない
③体質や運動の力は遺伝的、パーソナリティ(新しい友人をすぐつくれる、怒りっぽさ、非行や犯罪を犯す傾向)に関わるものは環境的
④男性は環境要因、女性は遺伝要因に偏っていた

【所感】
とても興味深い領域でした。最後のアンケートに私もチェックをすると環境要因が多かったです。「人の可能性を信じ続ける」を信条にしている私としては当然環境要因派です。人の発達が遺伝要因であるという結論に達したら、発達支援はどうすれば良いのでしょうか。遺伝要因をポジティブに捉えるなら、「自分に何が向いているか」を考える際の一つの指針になることや「親に出来たのであれば自分も」と発奮材料になる気はします。とはいうものの、身体的能力以外でも遺伝的要因があることは否めないので、どちらかというと相互作用という立場が私にしっくりきます。塾生に対してはジェンセンの環境閾値説を今一度伝え、学力は努力に比例して伸びることをあらためて、何度も伝えていきます。
(1300字)

宗興の本棚

第93週『なぜ部下とうまくいかないのか』

第93週
2019/5/11
『なぜ部下とうまくいかないのか』
加藤洋平著 日本能率協会マネジメントセンター

私がかなり傾倒している発達理論心理学。前回読んだ加藤さんの著書は、「個人がどう伸びるか」の原則に焦点を当てたものですが、発達理論を実際の現場マネジメントで活用するとどうなるのか。今の職場に活かすと共に、リーダーシップ研修のコンテンツを更に充実させる目的で、本書を手に取りました。

キーガンの発達理論は能力より意識(器)の発達に焦点を当てており、意識段階を5つに分類しています。そのうち成人以降は4つの段階があります。段階2の「利己的段階」、段階3の「他者依存段階」、段階4の「自己主導段階」、段階5の「自己変容段階」です。発達段階は一つに基づくというより、複数の発達段階にまたがる「発達範囲」があり、環境や状況によっても変化します。

本書の出会いは、私が提唱しているライフスキル教育の発展と同時に、私自身の成長や生き方にも指針を与える大変意義あるものとなりました。今年「いち」の出会いです。

まずライフスキル教育の学際的位置づけがはっきりしました。私が使命として掲げている「自分の道を自分で拓ける人を創る」は平たく言えば、他人や組織、社会に依存しない個を育てることです。成長社会から成熟社会に遷移する中でその必要性を痛感しこの使命に辿り着きました。そして、企業で大人向けに実践型リーダーシップトレーニングを、そして塾や学校で子供向けにビジョンセッションというプログラムを通して、この使命を実践してきました。これらのプログラムは、学術的見地としては発達理論の段階3から段階4への移行を促すものであることが本書で明確になりました。

また私自身の成長や生き方についても、次ステップが明確になりました。私自身は段階4から段階5への移行期にあると感じました。段階5は自分の価値観に横たわる前提条件を内省しつつ、壊し、新しい自己を作り続ける人であり、下記のような特徴があるとのことです。
・開放感や柔軟性がキーワード
・「自分を構成するものは虚構の産物」と考えている
・透明な自己認識であり、自分と他者を区別しない
・他者との共同は、異なる枠組みを理解する素晴らしい機会と捉える
・自分の価値体系や認識の枠組みの限界を頻繁にさらけ出そうとする
・システム思考(複眼思考)を持ち合わせている
・自分が保持するカッコの成功や社会的な地位や名誉などはちっぽけなものに過ぎず、自分は宇宙における一粒の砂のような存在でしかないと考えている

ちなみに、段階4から5への移行は、「異質」に触れることで促進されるそうです。私は起業後、自然と沢山の「異質」を招き寄せ、飛び込み、触れる経験してきました。そして6年前から価値観が大きく変化していることも自己認知しています。逆にもしかしたら、段階4から5へ移行するために起業したと言えるかもしれません。

この他、特に重要だと感じた項目を3つ挙げます。

まず、キーガン教授の言葉、『人間は意味を構築することを宿命づけられた存在である』です。意識=認知の仕方=意味付けの仕方、と解釈することができます。発達段階が進むとは意味付けの仕方が違ってきて、見え方が変わってくる、そして使う言葉に変化が出てくると著者は言っており、対象者が使う言葉により注目していきます。

二つ目はピアジェ効果、『無理に成長・発達を促そうとすると、どこかで成長が止まってしまうということを示す概念』です。アメリカで早期英才教育が盛んに行われ、長期間に及ぶ追跡調査をした結果、無理の成長を強いられた子供たちの多くは、二十歳を過ぎるあたりでピタリと成長が止まってしまうことが分かったそうです。無理強いせず、タイミングを見極めながら、成長支援していくことの重要性や難しさを感じます。

三つ目は、成長支援側の心得、『発達理論を学ぶ人の多くは、「発達することは良いことだ」と思いがちですが、そうした認識は安直だと考えています。』です。『発達段階が高度になっていくにつれ、必ずしもいきることが楽になったり、人生が良くなったりするとは言えません。』と著者は言っています。例えば、段階4に至るにはある種の「孤独感」を生み出されるし、段階4から5はそれ以上に過酷な課題になるそうです。これは私も痛切に感じることで、正直起業後、幸福ではあるものの、過酷な道だなと感じ懊悩することも多々あります。全ての人に対して、発達段階4へ行くのが「正しい」と考えるのは間違いであり、例えそれが使命であっても盲目的になることなかれ、という戒めとなりました。

段階3から4への移行が必要なかった時代に、この理論を打ち立てたキーガン教授の慧眼や学際領域がもつ力に驚嘆します。おそらく膨大な実験や観察をもとに打ち立てた理論だと思いますが、どのようなプロセスで立論したのか、次はいよいよキーガン教授の自著に入っていきたいと思います。
(1969字)

週の風景

007 中日入れて正解

先週のGW10連休は、前半四国・京都を家族で旅行し、後半は比較的東京でゆっくりでした。
四国良かったです。特に高知。どこかでシェアしたい程です。

10日休むと流石に休み明けのスタートが「廃人」となり、まずいだろうということで、中日の5/2(木)に1日出社日を入れました。

内容は、英克の育成MTGと、咲心舎のレイアウト変更です。
この日はバックヤードのものを一気に出し、断捨離し、新しいレイアウトを二人で協議しました。
本日、更に断捨離などをし、塾生と講師に利便がよい形にします。

しかし、中日に出社日を入れて大正解です。スムーズに仕事に入れてます。

今週は6月の研修ラッシュに向けた準備、そしてIT企業様の部長リーダーシップ研修の最終回があります。
多忙の中、やりきった部長陣の姿に毎回感動します。今回もどんな場になるのか、楽しみです。

※写真は現在のオフィス風景。ここから更に断捨離などしていきます。

宗興の本棚

第92週『貢献する気持ち』

第92週
2019/5/4
『貢献する気持ち』
滝久雄著 紀伊國屋店

実は積読状態の書籍が30冊ぐらいあります。今年1年で読まなかったら捨てようと考え新刊や興味ある書籍と並行して読んでいます。本書もその中の1冊。2009年、7年半務めた前々職を退職した時、心ある人=感謝と貢献ができる人になると決めました。その時に買った本ですが、10年間読まずにいました。

著書の滝氏はぐるなびの創業者。独特の文体は正直読みやすいとは言えませんが(当時もそれで敬遠した気がします)、貢献心は理性ではなく、本能であるというのが筆者の主張です。他者のために役立てたいと志す自然な気持ちであり、人間のもっとも高尚な知性を実現させる手段ではなく、よりプリミティブで自然から授けられたものである。そして食欲や性欲などを体質的本能、そして貢献心は心質的本能と言っています。

筆者は、様々な原体験から貢献心は本能であるとたどりついていますが、私も近い感覚です。
単純に接する人の笑顔がみたい。その笑顔なくしては生きていけないぐらい、貢献心は根源欲求であると感じています。

本書で特に興味深かった項目は人生モードの話です。人の特徴を表す言葉として、遊ぶに焦点をあてた「ホモ・ルーデンス」は遊戯人。学習に焦点をあてた「ホモ・サピエンス」は知性人。仕事に焦点をあてた「ホモ・ファーベル」は工作人。そして貢献に焦点をあてると「ホモ・コントリビューエンス」=貢献人となる。そして、『複合的なモードを自然に装うことがその人の生涯に彩を与え、また活力を発揮させる』と筆者は言っています。私自身、学習、仕事、貢献はかなりの程度、自分の心身と自然に一体化していますが、遊びは自然に装うまでにはなっていないと感じます。約20年仕事にハマり、ようやく最近「将棋」というはじめて趣味ができました。また、趣味以外でも何を「遊び」と捉えるかによってこの部分は変わると思います。

最後に、2009年10月、今から約10年前にブログに書いた文章を掲載します。自分のライフコア=核の部分がはっきりしています。本書とこのタイミングで向き合ったことで、この文章を探し再読しました。本書の読了を、初心に戻りつつ更に進化をするための契機としていきます。
(900字)

■人生の柱

この休みの間、これからの人生の目標(夢)を立て、アクションを起こせるよう、自分にとっての「人生の柱」を考えました。

ベースは相変わらずワタミ社長の渡邉美樹さんであり、渡邉さんが提唱する夢(6本の柱)を自分用にアレンジして作りました。

柱は以下の6つです。

・仕事
・学び(教養・趣味)
・つながり(人脈)
・お金(財産)
・健康
・家庭

そして、何よりも大切なのが、この6つの柱の土台となるライフコア=理念です。

■理念(ライフコア)

常々自分は「一貫した価値観」に基づいて人生を送りたいと思っています。
今回の休みの収穫は、自分の人生の軸となるライフコア=人生理念が固まったことです。

自分のライフコア、それは「心ある人になる」ことです。

「心ある人」とは僕の言葉で言えば、「礼節を重んじ、感謝と貢献ができる人」です。

■お世話になった方々への御礼

この「心ある人」に辿り着いたのは、休み中のある出来事が契機になっています。

今回、前職でお世話になったお客様17名と前職の社長を含めた上司3名に御礼をしようと、一筆箋に感謝の意を書き、あわせてお気に入りの京都の和菓子(永楽屋)を送りました。

当初は感謝の意は表したいけど、どうするか迷っていました。
今次菓子折りなんて「ベタ」なものは営業のときも使っていませんでした。
唐突に贈り物をされて、相手の重荷になったら嫌だな。
何の意図?と打算的と思われたら嫌だなと考えていました。
それでも、コンサルタントの先生の後押しがあり、一筆添えて送ることにしました。

直筆の手紙なので、勿論時間はかかりました。
それでも、1枚1枚自分の手で書くことで感謝の気持ちがぐぐっと深くなっていきます。メールではなく直筆手紙の良さはこの想い入れにあるのでしょう。

また当然、相応の費用もかかります。
それでも今まで頂いた恩から比べれば・・・というか比べることは出来ません。

そして無事9月中旬には発送が出来ました。

すると到着日になるやいなや電話が。また何人かのお客様からはお手紙を頂きました。

■感謝と貢献

届いたその日にすぐに電話をもらえるなんて。
特に最近疎遠だったお客様もいて純粋に嬉しかったです。
一時期ではありましたが、互いに仕事において心血を注ぎ、紡ぎ上げた信頼関係は時間を越えることを実感します。

また、頂いた文面を読んでいると、形式的な御礼だけではなく、必ず「●●してくれてありがとう」と、僕ならではの貢献が記載をされていました。そして「何かあればいつでも」とも。
ひとつひとつお客様からの返信を読んでいて、自分の心が柔らかく温かくなるのを感じます。

そうか、自分が求めていたのはこういうことだったんだ・・・。

仕事をしている最中には、あまりその先のことは考えていませんでした。とにかく、今目の前にいるお客様にどう価値を出すか、貢献をするかに奔走をしていた気がします。
お金を頂く為には貢献するのが当たり前、お金を頂いているのだから貢献するのは当たり前という感覚です。

ただ、その貢献に対して、お客様から感謝をされることがあっても、
お客様に対して感謝の想いを心底から持つことは薄かった気がします。サービス業だったら当たり前の感覚なのに・・・。

思い起こせば時折、お客様の存在に感謝をしている時があります。
例えば、メンバー時代、マンネリ化して営業を辞めたかったとき、お客様の存在によって僕は営業を続けることにしました。

それでも猛烈な日々の中、お客様への感謝を忘れていました。

稚拙な自分に辛抱強く良く付き合って頂き発注してくださったと思います。

手紙や電話のやり取りを通して、心の底から感謝の気持ちが湧きあがってきました。
そして、会社は変われどこのようにお世話になった方々に、何らかの貢献をし続け、繋がって生きていきたいと思いました。

更に言えば、お世話になった人だけでなく、これから会う人にも感謝と貢献をもって共生したいと強く思えるようになりました。

奥底に流れていたものが勃興し、確固たるものとして形になった契機でした。

■これからが大事

感謝と貢献。ベースで礼節を絶対に忘れないこと。
これを軸として人と繋がりあっていく、人生の6つの柱を太くしていく。
そんな生き方を追求していきたいと思っています。

勿論自分はまだまだ「心ある人」には程遠く、これからも非礼をすることもあるかもしれません。
そのときには素直に詫びること。反省して二度としないようにすること。そうしていきたいと思います。

ただ、上記のことを言い切れるのは、仕事をしていない休みの時期であり、心が穏やかだからかもしれません。

陳腐ではありますが「忙しい」という文字は心を亡くすと書きます。
忙しさは健全な精神を蝕んでいきます。
どんなに忙しくても、今回自分がセットしたコアを忘れずに実践し続けることができるかどうか。

人間そんなに強くはありません。弱くて甘くて脆くてずるい存在です。
だから自分ひとりだと必ず道に逸れます。
そして、道に逸れたときに正道に戻してくれるのは、周囲の方々だと思います。

周囲の人は自分のことを映し出す鏡です。
どんなに仕事が忙しくても、会社外の人と定期的に会うことは続けていきたいと考えています。

■根本の安心感

余談にはなりますが、最近社会に対してというか人間に対して僕は安心感が増しています。
というのも、年齢が上がるにつれ、皆自然と「感謝と貢献」に共感し実践している気がするのです。礼節を守る人も多くなります。

山っ気がある、荒っぽい人でも、その方向感は持っている。
真逆の人に僕が出会わないだけかもしれませんが、
僕は人間という社会的生物は、収斂するところに収斂していくのではという仮説を持っています。その収斂するところは、所謂「善行」です。年々その仮説への自信は深まっています。