第92週
2019/5/4
『貢献する気持ち』
滝久雄著 紀伊國屋店
実は積読状態の書籍が30冊ぐらいあります。今年1年で読まなかったら捨てようと考え新刊や興味ある書籍と並行して読んでいます。本書もその中の1冊。2009年、7年半務めた前々職を退職した時、心ある人=感謝と貢献ができる人になると決めました。その時に買った本ですが、10年間読まずにいました。
著書の滝氏はぐるなびの創業者。独特の文体は正直読みやすいとは言えませんが(当時もそれで敬遠した気がします)、貢献心は理性ではなく、本能であるというのが筆者の主張です。他者のために役立てたいと志す自然な気持ちであり、人間のもっとも高尚な知性を実現させる手段ではなく、よりプリミティブで自然から授けられたものである。そして食欲や性欲などを体質的本能、そして貢献心は心質的本能と言っています。
筆者は、様々な原体験から貢献心は本能であるとたどりついていますが、私も近い感覚です。
単純に接する人の笑顔がみたい。その笑顔なくしては生きていけないぐらい、貢献心は根源欲求であると感じています。
本書で特に興味深かった項目は人生モードの話です。人の特徴を表す言葉として、遊ぶに焦点をあてた「ホモ・ルーデンス」は遊戯人。学習に焦点をあてた「ホモ・サピエンス」は知性人。仕事に焦点をあてた「ホモ・ファーベル」は工作人。そして貢献に焦点をあてると「ホモ・コントリビューエンス」=貢献人となる。そして、『複合的なモードを自然に装うことがその人の生涯に彩を与え、また活力を発揮させる』と筆者は言っています。私自身、学習、仕事、貢献はかなりの程度、自分の心身と自然に一体化していますが、遊びは自然に装うまでにはなっていないと感じます。約20年仕事にハマり、ようやく最近「将棋」というはじめて趣味ができました。また、趣味以外でも何を「遊び」と捉えるかによってこの部分は変わると思います。
最後に、2009年10月、今から約10年前にブログに書いた文章を掲載します。自分のライフコア=核の部分がはっきりしています。本書とこのタイミングで向き合ったことで、この文章を探し再読しました。本書の読了を、初心に戻りつつ更に進化をするための契機としていきます。
(900字)

■人生の柱
この休みの間、これからの人生の目標(夢)を立て、アクションを起こせるよう、自分にとっての「人生の柱」を考えました。
ベースは相変わらずワタミ社長の渡邉美樹さんであり、渡邉さんが提唱する夢(6本の柱)を自分用にアレンジして作りました。
柱は以下の6つです。
・仕事
・学び(教養・趣味)
・つながり(人脈)
・お金(財産)
・健康
・家庭
そして、何よりも大切なのが、この6つの柱の土台となるライフコア=理念です。
■理念(ライフコア)
常々自分は「一貫した価値観」に基づいて人生を送りたいと思っています。
今回の休みの収穫は、自分の人生の軸となるライフコア=人生理念が固まったことです。
自分のライフコア、それは「心ある人になる」ことです。
「心ある人」とは僕の言葉で言えば、「礼節を重んじ、感謝と貢献ができる人」です。
■お世話になった方々への御礼
この「心ある人」に辿り着いたのは、休み中のある出来事が契機になっています。
今回、前職でお世話になったお客様17名と前職の社長を含めた上司3名に御礼をしようと、一筆箋に感謝の意を書き、あわせてお気に入りの京都の和菓子(永楽屋)を送りました。
当初は感謝の意は表したいけど、どうするか迷っていました。
今次菓子折りなんて「ベタ」なものは営業のときも使っていませんでした。
唐突に贈り物をされて、相手の重荷になったら嫌だな。
何の意図?と打算的と思われたら嫌だなと考えていました。
それでも、コンサルタントの先生の後押しがあり、一筆添えて送ることにしました。
直筆の手紙なので、勿論時間はかかりました。
それでも、1枚1枚自分の手で書くことで感謝の気持ちがぐぐっと深くなっていきます。メールではなく直筆手紙の良さはこの想い入れにあるのでしょう。
また当然、相応の費用もかかります。
それでも今まで頂いた恩から比べれば・・・というか比べることは出来ません。
そして無事9月中旬には発送が出来ました。
すると到着日になるやいなや電話が。また何人かのお客様からはお手紙を頂きました。
■感謝と貢献
届いたその日にすぐに電話をもらえるなんて。
特に最近疎遠だったお客様もいて純粋に嬉しかったです。
一時期ではありましたが、互いに仕事において心血を注ぎ、紡ぎ上げた信頼関係は時間を越えることを実感します。
また、頂いた文面を読んでいると、形式的な御礼だけではなく、必ず「●●してくれてありがとう」と、僕ならではの貢献が記載をされていました。そして「何かあればいつでも」とも。
ひとつひとつお客様からの返信を読んでいて、自分の心が柔らかく温かくなるのを感じます。
そうか、自分が求めていたのはこういうことだったんだ・・・。
仕事をしている最中には、あまりその先のことは考えていませんでした。とにかく、今目の前にいるお客様にどう価値を出すか、貢献をするかに奔走をしていた気がします。
お金を頂く為には貢献するのが当たり前、お金を頂いているのだから貢献するのは当たり前という感覚です。
ただ、その貢献に対して、お客様から感謝をされることがあっても、
お客様に対して感謝の想いを心底から持つことは薄かった気がします。サービス業だったら当たり前の感覚なのに・・・。
思い起こせば時折、お客様の存在に感謝をしている時があります。
例えば、メンバー時代、マンネリ化して営業を辞めたかったとき、お客様の存在によって僕は営業を続けることにしました。
それでも猛烈な日々の中、お客様への感謝を忘れていました。
稚拙な自分に辛抱強く良く付き合って頂き発注してくださったと思います。
手紙や電話のやり取りを通して、心の底から感謝の気持ちが湧きあがってきました。
そして、会社は変われどこのようにお世話になった方々に、何らかの貢献をし続け、繋がって生きていきたいと思いました。
更に言えば、お世話になった人だけでなく、これから会う人にも感謝と貢献をもって共生したいと強く思えるようになりました。
奥底に流れていたものが勃興し、確固たるものとして形になった契機でした。
■これからが大事
感謝と貢献。ベースで礼節を絶対に忘れないこと。
これを軸として人と繋がりあっていく、人生の6つの柱を太くしていく。
そんな生き方を追求していきたいと思っています。
勿論自分はまだまだ「心ある人」には程遠く、これからも非礼をすることもあるかもしれません。
そのときには素直に詫びること。反省して二度としないようにすること。そうしていきたいと思います。
ただ、上記のことを言い切れるのは、仕事をしていない休みの時期であり、心が穏やかだからかもしれません。
陳腐ではありますが「忙しい」という文字は心を亡くすと書きます。
忙しさは健全な精神を蝕んでいきます。
どんなに忙しくても、今回自分がセットしたコアを忘れずに実践し続けることができるかどうか。
人間そんなに強くはありません。弱くて甘くて脆くてずるい存在です。
だから自分ひとりだと必ず道に逸れます。
そして、道に逸れたときに正道に戻してくれるのは、周囲の方々だと思います。
周囲の人は自分のことを映し出す鏡です。
どんなに仕事が忙しくても、会社外の人と定期的に会うことは続けていきたいと考えています。
■根本の安心感
余談にはなりますが、最近社会に対してというか人間に対して僕は安心感が増しています。
というのも、年齢が上がるにつれ、皆自然と「感謝と貢献」に共感し実践している気がするのです。礼節を守る人も多くなります。
山っ気がある、荒っぽい人でも、その方向感は持っている。
真逆の人に僕が出会わないだけかもしれませんが、
僕は人間という社会的生物は、収斂するところに収斂していくのではという仮説を持っています。その収斂するところは、所謂「善行」です。年々その仮説への自信は深まっています。