教育心理の部屋

第61回「フロイトの発達段階 10章 人格発達の基礎」

第61回
2019/8/25
「フロイトの発達段階 10章 人格発達の基礎」

【まとめ】
人格はどのように形成されるのか。フロイトは幼少期の経験が、大人の人格形成に非常に重要であると考えた。

フロイトは(Freud, 1916-17)は、幼児も性衝動をもっていると考えた。その性衝動が満足される部位、言い換えると幼児が快感を得る主要な身体的部位(性感帯)が発達と共に変化するとした。

①口唇期0~1歳、1歳半 おっぱいを吸うなど吸うことによって満たされる。指しゃぶり
②肛門期1歳、1歳半~3、4歳 便をため、出すという活動が獲得すべき主要なこと
③男根期3、4歳~5、6歳 性の違いに興味をもつ。エディプスコンプレックスが見られる
④潜伏期5、6歳~11歳、12歳 表面上の性衝動は顕著でなくなる
⑤性器期11、12歳 思春期で本来の意味での性衝動が自覚される

フロイトによると、次の段階に進むには、今の衝動が十分に満足されなければならない。ある段階での満足が十分ではないと、その影響が後々現れてくることになる。例えば、離乳が早く十分におっぱいを吸うことによる口唇期的満足を得なかった子供は、その後も指を吸ったり、爪を噛んだりするという。さらに成人してもタバコを吸う、酒を飲むといった口唇を主体にした活動に過度に没頭し、受動的、依存的な性格が形成されるという。肛門期での問題は、過度の清潔好きや脅迫的性格と関連する。

【所感】
フロイトは精神分析の創始者。多くの心理的問題を抱えた人の治療の取り組む中で、幼少期の経験が人格形成に大きな影響があることを導き出したとのこと。目に見えない発達段階を明示したこと、しかもある程度首肯せざるを得ない内容であることには驚嘆します。ただ、口唇期で満たされなかった人が、成人になってタバコや飲酒に過度に没頭するというのは、学術統計が示されていないので、信ぴょう性(関連性)を疑います。

この発達段階をみると親としての役割を考えます。特にエディプスコンプレックスは興味深いです。息子が年中ぐらいから、「僕のママ」という言葉を父親である私の前で言い始めた気がします。エディプスコンプレックスは父親との同一視(父親の態度をまねるなど)で父親に愛着がわき、解消されるということですが、彼がどう変化していくのか楽しみです。親としては、小2の今が父親の態度を一番吸収する時期だと考え、ふるまいに気をつけなくてはと思います。
(976字)

宗興の本棚

第107週『なぜ人と組織は変われないのか』

第107週
2019/8/25
『なぜ人と組織は変われないのか』
ロバート・キーガン リサ・ラスコウ・レイヒー著 池村千秋訳 英知出版

成人発達理論のキーガン教授の約400Pに渡る著書。キーガン教授の成人発達理論は私達の人材開発法の土台となるものであり、より深い知見を得るべく手に取りました。

なぜ人と組織は変われないのか。答えは変化を拒む「免疫システム」があるからです。この「免疫システム」と処方箋となる「免疫マップ」が本書の核であり、実例に沿って説明がされていきます。

まず、人の成長には二つの課題があるということです。技術型の課題と適応型の課題です。減量に対して、食事制限という技術的な方法で解決できる人もいますが、多くの人がその後リバウンドします。それは、ほとんどの人にとって減量は技術的な課題ではなく、適応を要する課題であることの証左です。この適応型の課題に「免疫システム」が付帯しています。

本書にあるピーター・ドノバンという金融サービス会社CEO(50歳代)の実例がとても分かりやすく、「免疫システム」を理解するのに非常に役立ちました。ピーターは、拡大していく組織の規模に合わせ分権型のリーダーになることが課題ですが、権限移譲をはじめ中々それができない状況でした。

1.改善目標
新しい考えをもっと受け入れられるようになる。役割や責任の変化に柔軟に対応できるようになる。積極的に権限移譲を行う。

2.阻害行動(改善目標を妨げる要因)
新しい考えに問答無用に却下する。他人の考えを知ろうとしない。相手にうかがいをたてさせざるをえない話し方をする。相手がのぞんでいるかわからないのに、すぐに自分の意見を言う。

3.裏の目標
私のやり方でやりたい。自分がものごとに直接影響を及ぼしていると実感したい。あらゆるものに自分の「指紋」をつけたい。最強の問題解決者でいたい。

4.強力な固定観念
自分が替えの効く存在という不安。

人は自分を変えたいと思っているが、自分の核となる部分を守りたいという思いを抱いています。この不安管理システムが変革を阻む免疫機能の正体と本書は言っています。そして、この不安管理システムを生じさせるのが3と4だと解釈できます。特に4の「強力な固定観念」は、幼少期の経験や仕事を通した成功体験で形成されることも多いと思います。

それでは、実際に人や組織を変えるにはどうするか。本書ではあるチーム全員が「免疫マップ」を作成し、しかもこれを全員で見せ合い、行動と検証を皆で繰り返していくことで変革していった例を挙げています。その人にとって一番大切な取り組むべきこと「One Big Thing」を皆で共有し合うなど、非常に有効なアプローチと感じます。

通常学術書は3ヶ月ぐらいかかるところを、本書は面白くて1.5ヶ月ぐらいで読了しました。私自身も適応課題を抱えています。愛と感謝と喜びに満ちた世界へ。まず自分も「免疫マップ」の作成をしてみます。
(1150字)