週の風景

026 過去最高の成果

先週も研修報告に、企業研修に、清瀬の研修にと中々忙しい週でした。

研修報告は、先週FBで「嬉しいお知らせ」を書いた企業様でした。研修時の手ごたえと参加者所感の質の変化から主観的には過去最高の出来だでしたが、実際はどうだったかが一番気になります。今回研修効果の検証材料として店舗の売上利益などの推移(定量変化)と上長からのコメント(定性変化)を事前に収集して頂くようお願いしておりました。すると売上●●UP、利益●●UP、店舗評価●ランク獲得、NPS+●●ポイントなど、これまでで一番収益向上に結びついていることが分かりました。安堵と感動と感謝と。人材開発の皆様が実施された転移策が大きく寄与した形となり、研修で成果追求してきた身にとっては、このような場に参画できたことが本当にありがたく感じます。

清瀬の研修会では、また中2の先生から様々な意見を頂くことができました。やはりポイントは生徒がスムーズに対話をできるようにするには、ということでしょう。自分を表現することに慣れていない中学生。いかにして表現する力をつけていくか、より盛り上がる場にしていくか、石川と共に、劇的に良いものにしていきたいと心をあらたにしました。

今週は比較的おだやかな週です。制作を中心に進みます。

宗興の本棚

第112週『努力不要論』

第112週
2019/9/29
『努力不要論』
中野信子著 フォレスト出版

先日の日本政策学校同期との会食で「努力は報われるのか」の話になりました。その後メンバーの一人が見つけた書籍です。脳科学の観点から正しい努力の仕方が分かると期待し手に取りました。

筆者の結論は、適切な努力をすれば報われる、ということです。そして適切な努力とは、①目的②戦略③実行の3つが必要であり、がむしゃらな無目的な努力は無駄であると言い切っています。私は「正しい努力は報われる」と言っていますが、それとほぼ同義でした。筆者は、努力を強要されブラック企業で搾取される方々に警鐘を鳴らしています。酒井穣さんも近著で「自己啓発にハマるな」と言っていましたが、不適切な努力で疲弊している人が増えている潮流があるのかもしれません。

面白いと感じた話を二つ載せます。

一つはセロトニンの話です。セロトニンは「幸せホルモン」と呼ばれ、セロトニンを運ぶ門であるセロトニントランスポーターについて日本人の70%が少ないタイプで欧米人は20%以下。多いタイプは日本人は2%。欧米人は30%とのことです。セロトニントランスポーターが少ない人はセロトニンが少ないので不安になりやすく、日本人が空気を読んで慎重になるとか、0から1を作るのが苦手というのも、この脳内神経伝達物質の動態が起因している面もあるという主張でした。日本人の自己肯定感の低さはこの性質による所もあるかと感じました。

もう一つは、③実行を左右する意志力に関わる部分です。意志力の強い人と弱い人の差は、前頭前皮質の機能の差であり、また前頭前野の厚さは、半分は遺伝で半分は環境要因で決まるとのこと。子供の頃に虐待を受けると、前頭前皮質の肥厚するのが妨げられるそうです。また意志力の強さは幼少期で既に差がついており、中年になるまで影響を及ぼすという結果を出した「マシュマロ実験」も興味深かったです。4歳の子の前にマシュマロを置き、15分待てばもう一個もらえると言い部屋を出ていくと、7割の子はお菓子を食べ、3割の子は机の下にお菓子を隠したり、見えないようにして、食べないことができた。そして14年後の18歳時点で、自制できた子とそうでない子はSATの成績が平均210ポイントの差があり、44歳時点の追跡調査では、年収と社会的ステータスを比べると、やはり自制できた子が高かったそうです。幼児への大人の接し方はやはり大切なのだなとあらためて感じます。
(989字)

週の風景

025 創意工夫がありがたい

先週火曜日は、前半最後の清瀬VSでした。

今回のテーマは社会を知る。夏休みに調べた仕事を発表する会です。

今回も一つの組に張り付きみることにしたのですが、「一人生徒がいない」と結局VSが始まらない事態に・・・。トイレに行っていたそうなのですが、現場は色々と起りますね<苦笑>。ただ、セッション自体は先生に回し切っていただき、無事終了しました。

その後、一緒に見ていた荒川校長から

「先生達、話し合って足並みそろえているわね」と言われ、

ハッと気づいたことがあります。

全クラス、調べたことだけでなく「2月に行った職場体験の内容を発表してもよい」と書いてありました。つまり、調べてこない生徒もいることを想定し、先生方が事前に話をしてどううまくいかせるかを考えられていたのです。

プログラムの弱い部分を、まさに先生方の創意工夫に援けて頂いた形です。本当にありがたいです。

先生方からあがってきた提案やリクエストを形にしていった今年の4月から潮目が変わった気がします。

来週水曜日にはいよいよ、先生方へ後半のテキストを渡し解説をする説明会があります。先生方からの提案やリクエストを更に細かく組み込み形にしました。先生方主体というこの「流れ」をより加速し、今期のゴールである「先生方に安心して授業をしてもらう」を目指していきます。

教育心理の部屋

第63回「母子のきずな 10章 人格発達の基礎」

第63回
2019/9/22
「母子のきずな 10章 人格発達の基礎」

【まとめ】
幼児期の経験が人格発達に重大な影響をもつことを示すものとして、米ハリー・フレデリック・ハーロウ教授のアカゲザルの赤ちゃんの研究(Harlow, 1971)がある。

アカゲザルの赤ちゃんを母親から分離。
A-1 針金製の母親の模型にしこまれた哺乳瓶からミルクを飲む
A-2 針金製の母親で非授乳
B-1 布製の母親の模型にしこまれた哺乳瓶からミルクを飲む
B-2 布製の母親で非授乳

結果として、B-1、B-2と接触する時間がA-1、A-2より多くなることが分かる。(15時間以上対1時間以内)。ここから、子ザルが母親に愛着を示すのは、母親が空腹を満たしてくれるからではない。母親との暖かい接触を求める欲求がることが分かる。

また、見知らぬ巨大なおもちゃに接触して恐怖を感じるときも子ザルは布製の母親にしがみつく。ここから暖かい接触を与えてくれた「母親」が自分を守ってくれる安全基地となること。安全基地があってはじめて積極的に自分から外に向かっていけるようになることが示唆されている。

更に、ハーロウの研究で生後母親から隔離された子ザルとそうではないサルの成長を比較した。結果、身体的には成熟しているが性行動で差異が出た。隔離されてきたオスはうまくメスを支えられず、受精できない。メスはオスの接触に怯えるとのこと。またメスは自分で生んだ赤ちゃんをすぐに放り出して逃げる行動がみられた。

最後に英ルネ・スピッツ教授(Spitz, 1946)の研究。両親と分かれて施設で育てられる乳幼児について、たとえ施設の衛生面や栄養面で十分な注意が払われていても、通常の子供達と比較して病気への抵抗力や発達の遅れ、無感動・無関心など抑うつ的傾向がみられた。

これは保育者との「母性的な」接触が少ないこと(母性はく奪)によると考えられる。
(ちなみに、スピッツ教授の研究は「愛着理論」の形成に大きな影響を与えた)

母性は必ずしも母親である必要がない。乳幼児期における応答的な「保育者」との暖かい感触が「基本的信頼感」を獲得するなど、人格発達に影響をもつ。

【所感】
非常に示唆に富む章でした。娘と息子が0歳~2歳のときよく「だっこ」と抱っこをせがむんできたことを思い出しました。特に娘はだっこから置くと泣き出す子だったので、だっこちゃん、甘えっこちゃんだなあと思っていました。この章を読むと、それはまだまだ「不安」でいっぱいだったからと推察できます。当時はあまりだっこをし過ぎると、「だっこグセがつく」なんていう話も聞いていたのですが、今しかないからと相方も私も構わずだっこをし続けていました。この章を読んで健全な発達のためには、あらためてそれで良かったのだと思います。

もう一つ「母性」提供する人は、母親や女性である必要がないということは新たな発見でした。母性は父親でも提供できるし、血のつながらない人でもできる。大切なのは「応答的な保育者との暖かい感触」と書いてありました。私の頭ではどこかしら母性は「母親が一番」と思っている節はありました。一番かどうかというより、「応答的・暖かな感触」が重要なのです。母親だから母性を、父親だから父性をというより、父親でも何でも母性提供を大切にしていきたいと感じました。
(1335字)

宗興の本棚

第111週『結果がでる仕事の「仕組み化」』

第111週
2019/9/22
『結果がでる仕事の「仕組み化」』
庄司啓太郎著 日経BP社

クライアント企業様に提供している「仕組み化」のノウハウをもう少し補強したいと考え手に取った本です。3点参考箇所がありました。

まず、働き方改革の「働きやすさ」と「生産性向上」の二つの側面について。企業の実態として、残業の削減、柔軟な勤務形態など働きやすさの環境整備は進んでいる一方、生産性向上は後回しになっているとのこと。確かに働く時間を減らしても、業務全体を見直さなければ成果が減少するだけです。参加者に業務全体の見直しを一層推奨できる材料になりました。ただ図式としては「働きやすさ」×「業務の見直し」=「生産性向上」の方がしっくりきます。企業にとっての働き方改革の目的は、生産性の向上と私は考えているからです。

二つ目は、仕組み化の端緒となる3分類の仕分けが参考になりました。A感覚型(経験や知識から高度に判断)、B選択型(一定のパターンから選択)、C単純型(誰がやっても同じ)です。マネジメント職向けに業務の見直しをするワークの中で、観点として提示できると思いました。更にやめる、減らすの二軸だった見直し方法を、変えるという観点があることもインプットできました。報告書の印刷をデータ配布にするなどが変えるにあたります。

最後に、本書の仕組み化はITを活用した「マニュアル化」を指しますが、JR東日本フードビジネス社(「ベックスコーヒーショップ」を85店舗展開)などの事例は参考になりました。印刷した分厚いマニュアルは参照、更新、周知に手間がかかり、季節毎のフェアメニューや新商品展開時には、全国からの店長を集めていました。そこでクラウド型のマニュアルに一元化しつつ、店舗に1台タブレットを配布し参照できるようにしました。結果、年間1000時間以上の出張時間削減、更に正しい調理や盛り付け方法が的確に伝わるようなり「お客様からの声」の件数も、以前より80%削減されたそうです。事例として紹介できます。
(799字)

週の風景

024 ミドルは抱えるもの

先週も中々盛りだくさんの週でした。

火曜日は、eコマース企業様のマネジメント研修3回目でした。成果はこれからですが、例年より皆様の実践度合いが高い気がしていて、こちらも人事の方の転移策が奏功していると感じます。ありがたいです。

水曜日は、ファンド企業の社長様へ新卒のインタビュー報告でした。大切に育てたいという社長様の想いを汲みつつ、健やかに育って欲しいと願うばかりです。

木曜日の午前は、IT企業様へリーダーシッププログラム(LSP)最終回でした。1年間共に走ってきた3期の皆様にまずは心から感謝です。サーベイ結果からも皆さん大きな変化が見られ、1年間の修行を越えた顔には清々しさを感じます。中でも一人難しいかなと思っていた方が、進化レベルで変化したことをアウトプットや言動から私の感覚で感じました。これまで積み重ねた価値観を越えて、あらたな価値観に変容していくには、やはり葛藤と心的痛みが伴うはずです。自分と向き合って越えたその方から勇気をもらいました。

午後は、昨年LSPを卒業した2期の方々へ年一回のサーベイを使った内省プログラムでした。ミドルマネジメント職というのはどこも抱えているなと感じます。狭間になり一番苦しい立場かもしれませんね。せめて私だけでも寄り添い、次へのエネルギーにしてもらえればと思いじっくりと対話をする中、ぐっと肩にのっていた重いものが段々和らいでくるのが分かりました。キーワードは、我慢せず都度伝えていくこと。我慢するとどこかできますよね、やはり。

今週は前半最後の清瀬VSがあります。下期も走り続けます。

★お知らせ
9/21(土)PEACE DAY2019開催!@海浜幕張

敬愛するLIFULL井上さんが代表理事で進めるPEACE DAY2019がいよいよ今週末にあります。
私達も特別会員として協賛しています。

東京の皆様には少し距離がある場所ですが、是非日頃の喧騒を離れ、「平和」を感じる1日に。
私も子供を連れて参加予定です。

URL:https://peaceday.jp/2019/

宗興の本棚

第110週『世界基準の「部下の育て方」』 田口力著

第110週
2019/9/15
『世界基準の「部下の育て方」』
田口力著 KADOKAWA

著者は元GEの日本・アジア地域の経営幹部育成プログラム責任者。世界基準のリーダーシップの知見を深め、私達のリーダーシップトレーニングに活用したいと考え書店で購入しました。

新たに取り入れたいと思った項目を5つ書きます。

一つ目は、リーダーの姿勢です。管理職や経営幹部が部下育成に関してまず行うべきは、自分自身が積極的に学ぶ姿を見せることであると筆者は言っています。実際にGEではCEOのジェフ・イメルト氏が30万人の社員の中で最も熱心に学んでいたそうです。私達も人材育成の必要条件として、まずマネジメント職自身が学びその姿勢を見せることと伝えており、私達の考えを補強できる内容です。「謙虚な学習者」という言葉が素晴らしく、研修で使っていきたいです。

二つ目は、インスパイア&エンゲージメントです。GEでは2012年から、リーダーのミッションとして「インスパイア」(鼓舞する)を中心に据えているそうです。「モチベート」(動機づけ)は当たり前で、メンバーを鼓舞し、毎日ウキウキしながらスキップして出社するぐらいのメンバーを増やせるかが重要視されているとのこと。エンゲージメント(従事没頭)してもらうために、このインスパイアという視点は有効であること。会社と自己の成長のためにメンバーに投資してもらう、というサポーターの観点が欠かせないことに気づきました。更に手法論も参考になりました。

三つ目、アッペルバウムのAMO理論(Applebaum et al, 2000)。好業績を上げている職場は、Performance=Ability×Motivation×Opportunityとのこと。興味深い理論であり、もう少し掘って調べてみたいです。特に鍵はOpportunityではないかと感じています。

四つ目は、キャリアフィットモデル。メンバーの現在とこれからの職務を想定し、メンバーの価値観×興味・関心×スキルの3つの軸でみていく。そして価値観と適合する職務であれば「コミットメント」が生まれるとあります。私達もビジョン作成時に価値観を土台にしてもらいますが、そのことの補強ができました。また、メンバーのキャリア形成に悩むマネジメント職にもこのモデルを紹介したいです。

五つ目は、フィードバックのSOIモデル。メンバーに良し悪しをフィードバックする際に、Standard(部下がすべきことの明確な基準・期待を示す)、Observation(行動や発言をできるだけ客観的に述べる)、Impact(部下がとった行動や発言がどのようなインパクトがあったのか)の順番が大切ということです。S(基準)を伝えずに、O(観察)やI(影響)から入るマネジメント職も多いと感じます。メンバーに納得してもらうには、分かっているという暗黙的な認識に期待せず、丁寧にSから伝えることの大切さ私自身も痛感しています。
(1187字)

週の風景

023 対話と承認

先週月曜日は、日本政策学校の同期と久々会食をしました。世田谷区議に当選した方、キャリアカウンセリング協会を立ち上げた方、50歳過ぎて結婚した方など、それぞれがより一層人生を輝かせるため動いていることが確認できました。

さて先週特筆すべきは家族での出来事です。
ここ3年ぐらい会社では議論から対話へと移行をしてきていますが、いよいよ家庭でも対話を中心としたコミュニケーションを多用することにしました。その成果がでたのが木曜日のことです。

木曜日夜に、小2の息子の担任から電話がありました。言った言わない、やったやってないを含めた詳細を省きものすごくシンプルに書くと、

休み時間UNOで遊んで、ズルして上がった相手に、劇怒りをして、泣かせてしまった。
泣かせた子が、先生に通告。
先生が息子を叱り、息子爆発で授業受けられず。

ということでした。

小2の息子は感情のコントロールが課題です。喜怒哀楽の振れ幅が強く、衝突もしばしば。小2で感情のコントロール??と思いましたが、我慢せずにうまく怒りを溶かしていけるよう、親として相方と一緒に試行錯誤をしてきました。

どんな時もまずは必ず言い分は聞くように心がけています。よって今回も言い分を聞いていましたが、元々「感情のコントロール」という根本課題が頭にあるので、これまでであれば言い分を聞いてもそれは「君が悪い」と、最後ぴしゃりと伝えて終わっていたと思います。しかし今回対話を心がけると、息子の爆発ポイントがはっきりとわかりました。

・「俺だけが悪いわけじゃないのに、俺だけ怒られる」という公平性のなさが爆発ポイント。
・「勝負事で相手がズルして上がる」という公正性のなさが爆発ポイント。
・上の二つを大人が「分かってくれない」ことが最大の爆発ポイント。

最後の項目は「僕の気持ちを分かってくれない」と何度も言っていたことから発見できました。

そして対話をする中で、「爆発した上の二つは理解はできるなあ。それ君の怒りポイントだよね。うん、爆発した理由は理解できる。その上で、やはりズルしてあがった相手に劇怒りはやり過ぎだと俺は思うよ。『あ、それズル』だけでいいじゃない。」
と言ったところ、気が済んだのか、すぐに「相手に謝りの電話をする」となりました。

あらためて、対話と承認が物事を上手くいかすためのポイントだなと感じます。麹町中の工藤校長も著書の中で、対話の重要性をしきりに伝えていましたが、対話と承認が手間と時間がかかるようにみえて、実は最短距離で目標に近づけてくれることを私自身大分実感してきています。

我慢することなく、気になったらすぐ対話をしていく。これが家庭の人間関係をうまくいかせるコツなのかもしれません。

教育心理の部屋

第62回「エリクソンの発達段階 10章 人格発達の基礎」

第62回
2019/9/8
「エリクソンの発達段階 10章 人格発達の基礎」

【まとめ】
フロイトが性衝動に力点を置いたのに対し、エリク・ホーンブルガー・エリクソン(Erikson, 1950, 1968)は、フロイトの発達段階を下敷きにしつつ、心理社会的な観点から新たな発達段階を提唱した。

1.口腔感覚期 信頼性VS不信
2.筋肉肛門期 自律性VS恥・疑惑
3.運動性器期 自発性VS罪悪感
4.潜伏期 勤勉性VS劣等感
5.青年期 同一性VS同一性拡散をはじめ8つ
6.若い成人期 親密さVS孤独
7.成人期 生殖性VS停滞
8.成熟期 統合VS絶望

「肯定的なもの」VS「否定的なもの」の葛藤がポイント。両者ともに経験し、そのバランスが幾分肯定的なものに傾くことが重要。

『具体的には、ポジティブな力がネガティブな力を上回って発達課題が解決されることにより、社会に適応できる健康的な発達を遂げ、社会内でより良く生きる力(人格的活力)が獲得されると考えられています。

ただし、ポジティブな力とネガティブな力がせめぎ合う状態は生涯を通して続くものであり、各段階でポジティブな力がネガティブな力を上回る経験を積み重ねることが大切なのであって、ネガティブな力が一時的にポジティブな力を上回っても人生が台無しになることはありません。

一方で、ポジティブな力が一時的にネガティブな力を上回ったとしても、その後、ネガティブな力に押しつぶされて社会生活に支障が及ぶ可能性もあります。』
(https://psycho-lo.com/erikson)

青年期の課題としてエリクソンは「自我同一性」の達成を挙げた。Ego identityの訳語だが、単にアイデンティティと言われることもある。自分とは何かを問い直し、自分なりの答えを見つけ出すことが青年期の課題である。

ちなみに、エリクソンは、青年期以降の発達に関してそれ以前の時期程、詳述していない。

【所感】
エリクソン教授はアイデンティの概念を提唱した方です。本文を読んでいて凄い方だなと感じます。驚嘆ポイントは二つです。一つは、発達が葛藤と葛藤の克服によって実現できることを示した点です。確かに本能からくる欲求のまま生活したのでは、社会生活に適応することができません。もう一つは自我同一性(同一性VS同一性拡散)を含め、青年期の8つにも及ぶ葛藤概念を提唱したことです。

最も強く感じることは、「葛藤があることは健全なのだ」ということです。例えば、潜伏期は丁度5歳~12歳の小学生時期にあたりますが、この時期に多少自己肯定感が下がったとしても、他人と比較をし、劣等感を感じることは健全なのだと捉えられます。あとは、過度に劣等感の方に引っ張られない(続けない)よう、少しづつ勤勉性の方に傾け、葛藤を越える支援をすることが大人の役目なのだと思います。
(1144字)

宗興の本棚

第109週『はじめての課長の教科書』

第109週
2019/9/8
『はじめての課長の教科書』
酒井穣著 ディスカヴァー・トゥエンティワン

良書とは何か。人により定義は違うと思いますが、出版して時が経っても売れ続けている本は良書の候補ではないかと思います。本書は10年以上過ぎても版を重ね15万部を突破しており、普遍的な何かを期待し手に取りました。

三つ程、印象深い点を伝えます。

まず一点目は、課長として最も大切な仕事は部下のモチベーション管理である、と言い切っている点です。課長にとってプレイヤー時代との最大の違いは人が集まるチームを持つことです。全ての活動はメンバーの意欲喚起に帰結すると言えるので、人に関わる部分が最重要であることは納得できます。私達のプログラム内で、もう少しこの領域の開発を強めても良いかと思いました。

二点目は、課長の「オフサイトミーティング」のスキルです。このスキルが、課長に必要な8つの基本スキルの中の一つに位置付けられていることに驚きました。現代の若い部下が飲み会に参加しない傾向があり、『居酒屋ではないところで、立場や肩書を越えた部下全員のホンネを聞き出す機会が強く求められている』と筆者は言っています。全員の長い自己紹介や失敗自慢大会など、酒無し議論なしでゆっくりと場を変えたMTGは、確かに『それぞれが肩書きの異なる社員である前に、魅力的な人間であるという、当たり前のことを思い出させてくれる』のでしょう。これも私達のプログラムで紹介したい観点です。

三点目は、「弱い絆」と「強い絆」です。本書は、スタンフォード大学の社会学者マーク・グラノヴェター教授の理論で、転職してコネを利用している人の80%は弱い絆であり、強い絆が成功をもたらしたケースは20%という理論を紹介しています。「強い絆」は文化成熟のために必要ですが「弱い絆」を築いておくことは、組織が先鋭化せずに新しい視点を得るためにもとても有用とのことです。私自身「強い絆」重視派ですが、自身の世界を広げるにもこの「弱い絆」を作っていこうと感じました。
(800字)