週の風景

023 対話と承認

先週月曜日は、日本政策学校の同期と久々会食をしました。世田谷区議に当選した方、キャリアカウンセリング協会を立ち上げた方、50歳過ぎて結婚した方など、それぞれがより一層人生を輝かせるため動いていることが確認できました。

さて先週特筆すべきは家族での出来事です。
ここ3年ぐらい会社では議論から対話へと移行をしてきていますが、いよいよ家庭でも対話を中心としたコミュニケーションを多用することにしました。その成果がでたのが木曜日のことです。

木曜日夜に、小2の息子の担任から電話がありました。言った言わない、やったやってないを含めた詳細を省きものすごくシンプルに書くと、

休み時間UNOで遊んで、ズルして上がった相手に、劇怒りをして、泣かせてしまった。
泣かせた子が、先生に通告。
先生が息子を叱り、息子爆発で授業受けられず。

ということでした。

小2の息子は感情のコントロールが課題です。喜怒哀楽の振れ幅が強く、衝突もしばしば。小2で感情のコントロール??と思いましたが、我慢せずにうまく怒りを溶かしていけるよう、親として相方と一緒に試行錯誤をしてきました。

どんな時もまずは必ず言い分は聞くように心がけています。よって今回も言い分を聞いていましたが、元々「感情のコントロール」という根本課題が頭にあるので、これまでであれば言い分を聞いてもそれは「君が悪い」と、最後ぴしゃりと伝えて終わっていたと思います。しかし今回対話を心がけると、息子の爆発ポイントがはっきりとわかりました。

・「俺だけが悪いわけじゃないのに、俺だけ怒られる」という公平性のなさが爆発ポイント。
・「勝負事で相手がズルして上がる」という公正性のなさが爆発ポイント。
・上の二つを大人が「分かってくれない」ことが最大の爆発ポイント。

最後の項目は「僕の気持ちを分かってくれない」と何度も言っていたことから発見できました。

そして対話をする中で、「爆発した上の二つは理解はできるなあ。それ君の怒りポイントだよね。うん、爆発した理由は理解できる。その上で、やはりズルしてあがった相手に劇怒りはやり過ぎだと俺は思うよ。『あ、それズル』だけでいいじゃない。」
と言ったところ、気が済んだのか、すぐに「相手に謝りの電話をする」となりました。

あらためて、対話と承認が物事を上手くいかすためのポイントだなと感じます。麹町中の工藤校長も著書の中で、対話の重要性をしきりに伝えていましたが、対話と承認が手間と時間がかかるようにみえて、実は最短距離で目標に近づけてくれることを私自身大分実感してきています。

我慢することなく、気になったらすぐ対話をしていく。これが家庭の人間関係をうまくいかせるコツなのかもしれません。

教育心理の部屋

第62回「エリクソンの発達段階 10章 人格発達の基礎」

第62回
2019/9/8
「エリクソンの発達段階 10章 人格発達の基礎」

【まとめ】
フロイトが性衝動に力点を置いたのに対し、エリク・ホーンブルガー・エリクソン(Erikson, 1950, 1968)は、フロイトの発達段階を下敷きにしつつ、心理社会的な観点から新たな発達段階を提唱した。

1.口腔感覚期 信頼性VS不信
2.筋肉肛門期 自律性VS恥・疑惑
3.運動性器期 自発性VS罪悪感
4.潜伏期 勤勉性VS劣等感
5.青年期 同一性VS同一性拡散をはじめ8つ
6.若い成人期 親密さVS孤独
7.成人期 生殖性VS停滞
8.成熟期 統合VS絶望

「肯定的なもの」VS「否定的なもの」の葛藤がポイント。両者ともに経験し、そのバランスが幾分肯定的なものに傾くことが重要。

『具体的には、ポジティブな力がネガティブな力を上回って発達課題が解決されることにより、社会に適応できる健康的な発達を遂げ、社会内でより良く生きる力(人格的活力)が獲得されると考えられています。

ただし、ポジティブな力とネガティブな力がせめぎ合う状態は生涯を通して続くものであり、各段階でポジティブな力がネガティブな力を上回る経験を積み重ねることが大切なのであって、ネガティブな力が一時的にポジティブな力を上回っても人生が台無しになることはありません。

一方で、ポジティブな力が一時的にネガティブな力を上回ったとしても、その後、ネガティブな力に押しつぶされて社会生活に支障が及ぶ可能性もあります。』
(https://psycho-lo.com/erikson)

青年期の課題としてエリクソンは「自我同一性」の達成を挙げた。Ego identityの訳語だが、単にアイデンティティと言われることもある。自分とは何かを問い直し、自分なりの答えを見つけ出すことが青年期の課題である。

ちなみに、エリクソンは、青年期以降の発達に関してそれ以前の時期程、詳述していない。

【所感】
エリクソン教授はアイデンティの概念を提唱した方です。本文を読んでいて凄い方だなと感じます。驚嘆ポイントは二つです。一つは、発達が葛藤と葛藤の克服によって実現できることを示した点です。確かに本能からくる欲求のまま生活したのでは、社会生活に適応することができません。もう一つは自我同一性(同一性VS同一性拡散)を含め、青年期の8つにも及ぶ葛藤概念を提唱したことです。

最も強く感じることは、「葛藤があることは健全なのだ」ということです。例えば、潜伏期は丁度5歳~12歳の小学生時期にあたりますが、この時期に多少自己肯定感が下がったとしても、他人と比較をし、劣等感を感じることは健全なのだと捉えられます。あとは、過度に劣等感の方に引っ張られない(続けない)よう、少しづつ勤勉性の方に傾け、葛藤を越える支援をすることが大人の役目なのだと思います。
(1144字)

宗興の本棚

第109週『はじめての課長の教科書』

第109週
2019/9/8
『はじめての課長の教科書』
酒井穣著 ディスカヴァー・トゥエンティワン

良書とは何か。人により定義は違うと思いますが、出版して時が経っても売れ続けている本は良書の候補ではないかと思います。本書は10年以上過ぎても版を重ね15万部を突破しており、普遍的な何かを期待し手に取りました。

三つ程、印象深い点を伝えます。

まず一点目は、課長として最も大切な仕事は部下のモチベーション管理である、と言い切っている点です。課長にとってプレイヤー時代との最大の違いは人が集まるチームを持つことです。全ての活動はメンバーの意欲喚起に帰結すると言えるので、人に関わる部分が最重要であることは納得できます。私達のプログラム内で、もう少しこの領域の開発を強めても良いかと思いました。

二点目は、課長の「オフサイトミーティング」のスキルです。このスキルが、課長に必要な8つの基本スキルの中の一つに位置付けられていることに驚きました。現代の若い部下が飲み会に参加しない傾向があり、『居酒屋ではないところで、立場や肩書を越えた部下全員のホンネを聞き出す機会が強く求められている』と筆者は言っています。全員の長い自己紹介や失敗自慢大会など、酒無し議論なしでゆっくりと場を変えたMTGは、確かに『それぞれが肩書きの異なる社員である前に、魅力的な人間であるという、当たり前のことを思い出させてくれる』のでしょう。これも私達のプログラムで紹介したい観点です。

三点目は、「弱い絆」と「強い絆」です。本書は、スタンフォード大学の社会学者マーク・グラノヴェター教授の理論で、転職してコネを利用している人の80%は弱い絆であり、強い絆が成功をもたらしたケースは20%という理論を紹介しています。「強い絆」は文化成熟のために必要ですが「弱い絆」を築いておくことは、組織が先鋭化せずに新しい視点を得るためにもとても有用とのことです。私自身「強い絆」重視派ですが、自身の世界を広げるにもこの「弱い絆」を作っていこうと感じました。
(800字)