第109週
2019/9/8
『はじめての課長の教科書』
酒井穣著 ディスカヴァー・トゥエンティワン
良書とは何か。人により定義は違うと思いますが、出版して時が経っても売れ続けている本は良書の候補ではないかと思います。本書は10年以上過ぎても版を重ね15万部を突破しており、普遍的な何かを期待し手に取りました。
三つ程、印象深い点を伝えます。
まず一点目は、課長として最も大切な仕事は部下のモチベーション管理である、と言い切っている点です。課長にとってプレイヤー時代との最大の違いは人が集まるチームを持つことです。全ての活動はメンバーの意欲喚起に帰結すると言えるので、人に関わる部分が最重要であることは納得できます。私達のプログラム内で、もう少しこの領域の開発を強めても良いかと思いました。
二点目は、課長の「オフサイトミーティング」のスキルです。このスキルが、課長に必要な8つの基本スキルの中の一つに位置付けられていることに驚きました。現代の若い部下が飲み会に参加しない傾向があり、『居酒屋ではないところで、立場や肩書を越えた部下全員のホンネを聞き出す機会が強く求められている』と筆者は言っています。全員の長い自己紹介や失敗自慢大会など、酒無し議論なしでゆっくりと場を変えたMTGは、確かに『それぞれが肩書きの異なる社員である前に、魅力的な人間であるという、当たり前のことを思い出させてくれる』のでしょう。これも私達のプログラムで紹介したい観点です。
三点目は、「弱い絆」と「強い絆」です。本書は、スタンフォード大学の社会学者マーク・グラノヴェター教授の理論で、転職してコネを利用している人の80%は弱い絆であり、強い絆が成功をもたらしたケースは20%という理論を紹介しています。「強い絆」は文化成熟のために必要ですが「弱い絆」を築いておくことは、組織が先鋭化せずに新しい視点を得るためにもとても有用とのことです。私自身「強い絆」重視派ですが、自身の世界を広げるにもこの「弱い絆」を作っていこうと感じました。
(800字)