週の風景

030 参加者がエネルギー

先週は研修WEEKで、次世代向けと執行役員向けの2社にリーダーシッププログラム(LSP)を実施しました。

LSPではまず早い時期にサーベイをとり現状把握をします。そして1年後の最終回付近で再度サーベイをとり、変化をみる形にしています。
(サーベイは、上司・メンバー・他部署からの対象者への定量・定性アンケートです)

当初は最終回付近のサーベイのみだったのですが、現在は改変し最初と最後にサーベイをとることをおススメしています。というのも、研修時では言動やアウトプットが秀逸な一方、現場ではメンバーからの信頼を失っている方がいて、早めに参加者も私も「真の姿」を掴むことが成長には必要と痛感したからです。まず早い時期にサーベイをとり、現場での状況を可視化し、参加者と私と課題を共通認識化します。

先週は偶然、2社共に最初のサーベイ結果が出た回となりました。まず次世代の方々のサーベイ内容は皆、素晴らしすぎて感動ものでした。サーベイ結果から上司・メンバー・他部署からの信頼が厚く、今でも間違いなく現場の中核をなし、そしてこれから幹部になっていく方々だなと感じました。このような方々の成長を任せて頂けて本当にありがたい限りです。

一方で、別の会社の執行役員層も1回目のサーベイ結果が出ました。こちらの結果は個性的<笑>。ただまさに会社の中核をなし牽引する方々。新しい会社の形を執行役員の皆さんと共に創るのは大変やりがいがあり、こちらも任せて頂けるのは本当にありがたいです。レベルの高い話し合いなどがとても楽しく、しかも日々多忙を極める中、皆さん自部門の革新に活用頂いているのも感謝です。

先週まで2週間はわりとこもって制作に従事しました。今週は久しぶりに研修がありテンションが上がった週でした。自分にとっては研修で参加者に会えるのがエネルギー源だなとつくづく感じます。

教育心理の部屋

第66回「クライアント中心療法 10章 カウンセリングとは」

第66回
2019/10/27
「クライアント中心療法 10章 カウンセリングとは」

【まとめ】
最終章。カウンセリング、神経症的な問題の治療という側面が強調されるときは心理療法という言葉も使われる。本書では下記の3つを紹介する。
1.クライアント中心療法
2.行動療法
3.認知療法

クライアント中心療法について。アメリカの臨床心理学者カール・ロジャーズ1940年代によって提唱された。

(Carl Ransom Rogers、カウンセリングの研究手法として現在では当然の物となっている面接内容の記録・逐語化や、心理相談の対象者を患者(patient)ではなくクライエント(来談者:client)と称したのも彼が最初である。1982年、アメリカ心理学会によるアンケート調査「もっとも影響力のある10人の心理療法家」では第一位に選ばれた。Wikipediaより)

クライアントは潜在的に自分で問題を解決していく力をもっている。治療者の役割は、一定の制約はあるもののできるだけ許容的な空間をつくり、クライアントが自由に自己を表現し、自分で問題を解決することを手助けすることにあると考えた。横の関係を重視。

ロジャーズは、自己概念と経験2つの輪でカウンセリングの概念を図示している。母親が夫に捨てられた女性。父を憎み、その嫌悪を実際に「経験」したとすると自己概念と経験が一致する(領域I)。しかし、父親のある側面が好きという経験をすると自己概念と一致しないので意識されない(領域III)。それが父と似ている部分が自分にもあり恥ずかしいことだと、自己概念に折り合いがつくよう歪んだ形で意識に現れる(領域II)。

クライアントでは両者のずれが大きく、それが不安や混乱をもたらす。カウンセリングの目標はこの不一致な状態から2つの円がより重なる一致した状態を目指すことともいえる。

ロジャーズは、その為にカウンセラーの理想的態度として、「一致している」、「無条件の肯定的配慮」と「共感的理解」を経験していることを挙げ、それがクライアントに伝われば、クライアントはより自己一致する方向に人格を変化させるとしている。

【所感】
カウンセリングの中枢部分の理解が進む大変貴重な節でした。自己概念と経験の不一致が不安や恐怖などの情緒的な問題を引き起こすと理解ができました。経験の解釈が大切であり、それが自己概念によってかなり左右されるのです。この辺りもう少し掘っていき、自分にとって役立てる、例えば自分自身の不安を解消する材料にするなどしていきたいです。

ロジャーズは人格変化の条件を提示し、カウンセラーの心構え的なものを説いていますが、これはカウンセリングの場だけでなく、日常生活でも起こりえることとしています。家庭や学校、職場など人と触れる所では起こりえることです。私共の研修でも変化する人が多いと言って頂きますが、それは「一致」「肯定的配慮」「共感的理解」がある程度できているからかもしれません。特に肯定的配慮と共感的理解は大切で、実践課題に取りくむマネジメント職に決して無理強いはせず、大変な状況に共感しつつできることを一つだけでもという姿勢を貫いています。すると忙しい中でも実践する方々が多くなります。引き続きこの姿勢を大切にしていきます。
(1309字)

宗興の本棚

第116週『オプエド』

第116週
2019/10/27
『オプエド』
上杉隆+NOBORDER取材班著 KADOKAWA

昨年インターネット報道番組『ニューズオプエド』に出演した際に頂いた本です。オプエドとはOpposite Editorialの略で、「反対側の社説」という意味。著者の上杉さんは1999年「ニューヨーク・タイムズ」入社時に、自社記事への反論コーナーであるOpposite Editorialがほぼ毎日一面に掲載されていることを知ったそうです。上杉さんは多様でフェアな言論空間を希求しニューズオプエドを創設されました。

本書では、日米首脳会談、サミット、鳩山政権終了、朝日新聞社社長辞任、築地市場移転、詩織さん事件、森友学園などの出来事に沿い、何が起こっていたかを通して日本のメディアの現状を伝えています。その中で私が気になった点を2つ挙げます。

私が一番気になったのは日本のメディアがクレジット(引用・参照元)を打たないことです。上杉さんはトランプ大統領と安倍首相の会談の際、公には取材NGと言われているゴルフ場に入り、二人がプレーしているスクープ映像を撮りました。この映像をFOXテレビもCNNも皆お金を出して買い、更に「NOBODER JAPAN」のクレジット入りでオンエアしました。しかし、日本のメディアはタダで「くれ」と言い、またクレジットも打てないと言ったそうです。唯一日本テレビだけはお金を出し、クレジット付きでのオンエアをしたとのこと。著作権の意識が欠乏しているのか、大手メディア以外を下にみているのか。フェアではない感覚を受けました。

もう一つは、記者クラブという存在です。日本の大手メディアが作った組織であり、上杉さんはこの記者クラブを強く批判しています。2008年洞爺湖サミットにフリーランスの記者として取材を申し込むと『記者クラブに入っていない』という理由で拒否をされたとのこと。外務省がメディアの仕切りをし、フリーの立場の人を拒否しているのだそうです。他の国際会議も日本で開催されるものは、申請してもフリーの立場では取材ができない。2008年アフリカ開発会議が日本で開催された際、なぜかアフリカのメディアの記者は会見会場に入れず、ビデオモニターの所にとどめられていました。上杉さんが外務省と話をつける役回りになり、強行突破など大暴れの末に入室を認めさせたそうです。日本の政府と記者クラブが特殊な関係にあり、『世界中を見ても、こんなことをやっているのは日本だけ』と喝破しています。

上杉さんは「日本に世界標準のジャーナリズムを根付かせたいという『野望』」をもち、20年来、健全な言論空間を持つために活動を続けてきました。『ニューズオプエド』にたどりつくまでメディアを4回も創ってはやめ、借金を追って閉めたものもあります。不屈の信念に私も負けていられない、立ち止まっていられないと思います。
(1149字)

週の風景

029 次世代の育成

先週もプログラム制作WEEKでした。

その中で、1社次世代マネジメント層向けに中核回のプログラム制作をしました。

部課長を対象にしたリーダーシップやマネジメントプログラムの依頼が多いのですが、最近は「次世代」ということで次のマネジメント層向け(30代)の依頼も増えてきています。次世代の皆様は意欲と吸収度が高く、また私の方も後進育成的な感覚でより暖かく穏やかな感覚で接しており、マネジメント層とは違ったやりがいを頂いています。

中核回は、

リーダーシップとは何か

なぜ今リーダーシップが求められるのか

リーダーシップはどのようにして発揮できるのか

とリーダーシップのWhat・Why・Howを丁寧に伝えていきます。順調な成長を遂げている企業内において、時代の変化と自身が変化する必要性をいかに「リアルに実感してもらえるか」がポイントです。

時代背景の部分をアップデートしつつ、会社の成長が止まった時のシミューレションも入れ、次世代の皆さんがどのような反応をするかとても楽しみです。もしかしたら、案外マネジメント層よりも変化への危機感を抱いているかもしれません。そうしたら凄い化学反応が起きそうです。

今週はまさにその企業様への研修と執行役員向けの研修を行います。3週ぐらい社内が多かったので、とても楽しみです!

宗興の本棚

第115週『部長・何を成すべきか』

第115週
2019/10/20
『部長・何を成すべきか』
畠山芳雄著 日本能率協会マネジメントセンター

私は部長対象の研修も提供していますが、「部長は何をする人なのか」という問いにはっきりと答えられる人は少ないです。それは企業が実用的な形で示せていないことも一因だと思います。人事評価制度の役職定義に書いてあることが、例えば「部長は部門の業績を最大化する」といった抽象的な表現にとどまり、実際に機能や、やり方まで具体的に示されていることは稀ではないでしょうか。研修に参加する部長に、よりはっきりと部長本来の仕事を明示できれば迷いがなくなり成長も促進できると考え、本書を手に取りました。

部長とは一体何か。

著者は「部長は改革者である」と言い切っています。部長の機能は改革機能と維持機能と二つがあります。特に改革機能が重要であり、著者は従来と異なる発想と方法で業務・人間を改革することを部長に求めています。『部長が課長と一緒になって維持業務ばかりに熱中し、実際に新しい販売方式などを生み出したり、部門の風土を改革したりすることができないようでは問題』と著書は言っています。いわば「大課長になるな」ということです。とても共感できる考え方です。

著者が示す部長の三原則(全体最適、長期視点、重点集中)は当たり前に思えることですが、改革を目的としたものであり、特に全体最適については、自社だけでなく、国内外の業界や国内外の社会情勢をも鑑みる重要性を伝えています。これも私達が訴えていることと通じます。

『改革の新発想を経営者に先手で出され、後手に回ってしまう部長がどの会社でも多いが、それは経営者層が部長よりも他業界の経営者や幹部に接し、その情報を得る機会が多いだけにすぎないようにも思われる。』も同感であり、経営層より先に改革のアイデアを出せるよう、「経営層に先を越されるな」という合言葉と共に、アンテナを張り外に出る重要性を研修内で伝えられそうです。

また部長が事業改革者になれない理由も大変参考になりました。それは自縄自縛をするから。ある限界事業化しつつあった事業を任された事業部長に、人件費や販促費をかけてシェアを大きく伸ばすか、同業をみつけてM&Aをするかなどの選択肢を著者から当該事業部長に伝えました。すると『「そうした根本的なことは、トップの考えることで、こちらは示された枠内で、どれだけ生産や販売の効率を上げられるかが問題だと考えていました。」』と返答されたとのこと。この「枠内発想」は感覚値ですが多くの部長が囚われていることであり、この辺りの自縛を私が解き放てれば、部長陣は更に伸びると感じます。
(1046字)

週の風景

028 妻のありがたみ

先週は比較的穏やかな週でした。EC企業様へのマネジメント研修とプログラム制作をじっくりという感じです。

今回は少し家族ネタを。先週の火曜日に妻が発熱し朝からダウンしました。朝ごはんの準備から、子供のお稽古事の迎えなど急きょ私が登板しましたが、特にごはんの準備は慣れないので悪戦苦闘でした。自家製パンの取り出し方が分からない。白米やパンの解凍すら、レンジにボタンが沢山ある中でどれがベスト?という感じでとまどう。サラダは自分で作る自信がなく、コンビニまで疾走し何とか三種類調達(サラダ高い!)等々、どっと疲れました。

このまま妻のダウンが続けば、自分が炊事をする必要があります。いつかは自分も料理をしたいと思っているのですが、まさか今?と心の準備ができないまま、やはりここは一旦ベアーズかなと勝手に考えていたのですが、1日で妻は復活しました。

吉田家の中心核は私ではなく妻であること。こうやって当たり前の毎日が過ごせるのも妻の支えがあることなど、ありがたみを再実感した日でした。

そして台風もそうですが、当たり前の日常というものは本来ないですね。ただ毎日こうやって生活できること自体がありがたいです。

今週も研修や清瀬のプログラム制作が中心です。営業畑だったのが起業以来制作の人になっているとあらためて感じます。

教育心理の部屋

第65回「自我同一性地位 10章 人格発達の基礎」

第65回
2019/10/13
「自我同一性地位 10章 人格発達の基礎」

【まとめ】
米の発達心理学者ジェームズ・マーシャは、自我同一性について4つの状態を区別した(Marcia、1996)。

縦軸に「積極的関与」、横軸に「危機」という2軸の座標をつくり区別。

積極的関与の有無は、自分自身をそれにかけることができるようなものがあるかどうか。職業なら自分の生涯の仕事とすべきものが自分なりに決まっているかなど。
危機は自分なりに関与すべきものを見出す過程で、悩みや葛藤に苦しんだかどうか。例えば周囲から勧められるまま理系の大学に進んだが、自分には向いてないと思い悩んだ末に別学部に転向した、という場合は危機があったと見なされる。

「同一性達成」:危機を経験したうえで関与すべきものを見出している状態
「早期完了」:危機を経験せず関与すべきものを見出している状態(親が医者で疑問を感じないなど)
「同一性拡散」:危機の経験前後はあるが、関与すべきものを見出してない状態
「モラトリアム」:支払いを猶予するという意味の経済学上の用語をエリクソンが転用したもの。自分が本来すべき仕事を見出すべくさまざまな活動を行ってみること。積極的に模索している状態。

これらの地位の特徴を実験し分類。早期完了の状態は、自分を誇大化する、権威的であり失敗すると自尊感情が大きく低下する傾向がある。

【所感】
マーシャの理論を調べると「アイデンティティ発達理論」と呼ばれることもあります。一般的には、何事も苦労をした方が良いと言われますが、アイデンティティについても苦労をして獲得をした方が精神的な安定感があり、且つ逆境のときなどに強いようです。この章を読みながら「やりたい事がわからない」とずっと言っていた中学生の女の子を思い出しました。その時は「やりたい事を見つけようとすること自体素晴らしい。必ず見つかるから、自分のしたいことを優先して沢山の経験をして欲しい」と伝えました。今だと本理論を紹介し、「早期達成せずに、時間をかけて同一性達成をした方が様々なことが安定すると、研究で言われているから、じっくりと向き合って欲しい」と付け加えたいです。
(864字)

宗興の本棚

第114週『超一流になるのは才能か努力か?』

第114週
2019/10/13
『超一流になるのは才能か努力か?』
アンダース・エリクソン ロバート・プール著 土方奈美訳 文芸春秋刊

原題『PEAK』。『GRID』、『MINDSET』に続く人材開発3部作と勝手に考えていた中での最後の書です。能力開発に関わる興味深い学術研究が多く掲載されており、もっと早く出会えていればと悔恨ものの一冊でした。今回は特に印象に残った3つの研究について記載します。

一つ目、ロンドン大学ユニバーシティカレッジの神経科学者、イリーナ・マグアイアーの研究(2000年)。MRI画像を使って男性タクシー運転手50人とそうでない同世代の男性16人の脳を比較し、記憶に関わる「海馬」の後部が、タクシー運転手は他の被験者と比べて大きいことをつきとめました。バスの運転手と比較しても、タクシー運転手は海馬後部がはるかに大きいことが分かりました。また、タクシー運転手を目指す人79名のMRIをとったところ、当初違いはありませんでした。しかし4年後に免許取得者41名と取得できなかった38名の脳を比べたところ、やはり海馬後部が有意に大きいことが分かりました。

これらは人間の脳が厳しいトレーニングに反応して成長や変化をすることを示した好例です。鍛えた筋繊維と同様に、脳組織も鍛えられムキムキになったと言えます。

二つ目は、著者と他2名の研究。ベルリン芸術大学(世界レベルのバイオリニストを輩出する大学)のバイオリン科の学生を対象にしたものです。学生をSランク、Aランク、Bランクに分け10人づつを抽出して調査をしました。すると共通項としては、一人での練習が最重要であることや、練習を楽しいとは感じていないことが分かりました。一方違いとしては、18歳までに一人で練習に費やした時間の合計が違うことが分かりました。Sランクは練習の平均時間が7410時間、Aランクは5301時間、Bランクは3420時間でした。特にプレティーンとティーンエイジャーの時期に差異が見られました。また、ベルリンフィルとラジオ・シンフォニーで活躍する中年バイオリニストも平均7336時間でした。

ここから本書は二つの結論を出しています。傑出したバイオリニストになるには数千時間の練習が必要であることと、才能ある音楽家の間でさえ練習時間が多い者の方が少ない者より大きな成功を収めていることです。

三つ目は、ハンガリーの心理学者、ラズロ・ポルガーと妻のクララの実験(1969年~)。ポルガーは天才の研究をし、正しい育て方をすればどんな子供でも天才になれるという結論を導きだしていました。その理論に沿って3人の実の娘に学校に通わせずチェスの教育を施しました。結果、長女は15歳で女性のチェス世界ランク1位に、男性と同じ条件を満たしてグランドマスター(チェス選手の最高位タイトル)にもなりました。次女も女性チェスプレイヤーで6位。三女は15歳5ヶ月でグランドマスターとなり、これは男女問わず当時の最年少記録。25年間女性チェスプレイヤーで世界ランクキング1位。世界チェス選手権に女性で初参加しています。

親はチェスのエキスパートではないことから、本事例は才能ではなく教育によってエキスパートは創られることを身をもって示した例といえます。自分の理論の正しさを、学校も通わせず自分の子供で実証する所に若干狂気も感じますが。
(1324字)

週の風景

027 新たな提案

先週は比較的穏やかな週となりました。

木曜日、清瀬二中で現在VS(ビジョンセッション)を行っている中2の先生にインタビュー&対話をしました。1年を通して念入りな準備と率先して進めて頂いた先生からのご意見は、厳しい指摘や新たな提案を含めとても本質的で貴重なものでした。

特に、先生の提案として行事や学活とVSの内容をリンクさせることは、はっと気付かされました。例えば、職業体験前に「将来の姿」のプログラムを、定期テスト前には「集中の仕方」のプログラムをなどです。私共は「プログラム成果=テーマ×手法×講師×環境」という公式を置いています。ただ、実はテーマの後に「タイミング」という因数が入ります。どのテーマを行うにせよ、タイミングを考慮すると成果が劇的に変化します。

今回のインタビュー&対話でより良いものになっていく確信が持てました。多忙を極める中、新しい教育の形に取り組んでいる先生方には感謝しかありません。本当にありがたいです。

次回は12月から。中2と中1と2学年で進める予定になっており、いよいよ新章に入ります。清瀬二中のビジョンである「夢や希望を抱き、自信をもって卒業する」ことを目指し、しかも全員が実現できるよう、プログラム制作にまい進してまいります。

教育心理の部屋

第64回「自我同一性 10章 人格発達の基礎」

第64回
2019/10/6
「自我同一性 10章 人格発達の基礎」

【まとめ】
自我同一性について。青年期には、本当の自分とはいったい何だろう、という疑問が生じ、自分というものを再度見つめ直す作業が行われる。青年期の子供達はしばしば反抗的だと言われるが、他人によって形作られたのではない、本来の自分を求めようとしているからだと考えられる。

私達は自分のアイデンティティを確立するときに、社会的に価値あるものを取り込もうとする。職業や人生観や生き方など、社会的に何か求められるようなものである必要があり、そうすることで自らをそれなりに社会的に価値のある存在だと確信することができる。

否定的同一性について。社会的に認められるような価値を自分が実現することはとうてい不可能だと考え、反社会的な生き方を選び、自らのアイデンティティを確保する場合がある。

総務庁青少年対策本部から出ている資料によると、一般少年と非行により補導された少年たちについて進学希望を比較すると、一般が大学・大学院までの希望が多いのと比較し、非行は中学・高校までの希望が多い。非行少年たちは、少なくとも学校社会での成功については悲観的であることが分かる。

また定点観測した資料によると、一般と非行の成績評価(自己)は、最初は近くても次第に差が開くことが分かる。社会的価値が学校に反映しているとすれば、その価値を実現できるという認識が低いことが非行少年を特徴づけている。

【所感】
非行少年少女についての話が印象的でした。なぜ非行に走るのか、は単なる衝動というより否定的同一性に起因する可能性があるというのは頷けるものです。自らのアイデンティが社会的に価値あるものとは逆の方向にいく。つまり非行は社会的に価値あるものを自分は実現できないという諦念からくるものと考えられます。

ここで思い出すのは、清瀬市教育長である坂田先生が音楽の教員だった頃のお話です。荒れていた学校で、所謂不良的な中学生を「承認する」ことで彼ら彼女らの心の障壁をとかし、彼ら彼女らは音楽の部活動に没頭し、生活をあらためるまでに導かれました。

まさに勉強ができるというのは一つの価値でしかありません。スポーツができる、気遣いができる、掃除を一生懸命する等々、他にも学校には沢山の社会的に認められる価値があります。大人が諦めることなく、その価値を自分でも持っていて、実現できることを子供達に認知してもらうことが、非行を防ぐ効果的な方法であると感じました。
(999字)