第119週
2019/11/17
『ハードドリブン』
塩田元規著 幻冬舎
「内面=魂の進化」は5年前にコーチングを受け始めた時から私のライフテーマになっています。ラジオ番組に出演していた著者の「勇気をもって書いたという」話しを聞き、興味がわき手に取りました。
アカツキは創業10年のベンチャー企業。スマホゲームを中心に業績を伸ばし、東証1部、売上高281億円・利益136億円(2018年)を上げる、いわゆる「大成功企業」です。経営者である著者はここまで到達できた理由を『ハートドリブン』の経営にあるとしています。著者曰く、『ハートドリブン』は『人々が自分の内側のハートを原動力に活動をしていくこと』であり、ドリブンの対義語をインセンティブと置いています。外発的動機ではなく、内発的動機を。思考ではなく、心の奥底にある感情を大切にする経営と解釈できます。このハートドリブン経営で二つほど強く残ったことを挙げます。
一つ目は、何かを始めたい人は、自分の本心から従うことからスタートであり、更に『説明できる建前じゃなくていい』と著者は言っています。何かを始めるとき、自分がやりたいことに社会的意義などをひもづけ、大義名分をたてることもあると思います。しかし私は根っこはもっと自利っぽくて良いと思います。本来理由なんてない。ただ「カッコいいから」「ワクワクするから」でいいのです。私も最近ようやく自身の自利を認め、受容できるようになってきました。『ワクワクとかドキドキとか、子供っぽいと言われるような青臭いこと。大人になって切り離してきた、麻痺させてきた自分の心を大切にしよう。』と著者は言っています。
二つ目は、『理解と同意を分ける』ことです。実感として自分自身でさえ感情を丁寧に扱うことは難しいです。それを組織全体に広げていき、経営の中心とおくのは至難ではないでしょうか。このハートドリブンの経営をもう少し紐解くと、安心・安全な職場の構築に近いのだと思います。安心・安全の実現には辛い、苦しい、嫌だというネガティブな感情表出も受容し、解消することが必要です。そこで著者が実践している『理解と同意を分ける』という考えは秀逸で突破口になると思いました。実際の場面として、採用担当者が「ぶっちゃ飽きたからやる気でない」的なことを言ってきた際、著者は説得をせず「採用何年かやってやりきった感あるんだよね。どうしたい」という話をしながら「採用むちゃくちゃ大切で誰かやらないと俺は困るなあ」と感情を分かち合ったそうです。すると「理解してくれた感謝」と共に「あと1年はやります!」とその担当者は言ったそうです。
様々な組織を見てきてはじめて「羨ましい」と思った組織のあり方です。次世代型の組織経営としてこれからどのような歩みをいくのか、注目していきたいと思います。
(1132字)