週の風景

034 生活リズムまで踏み込む

今回は学習塾咲心舎の話です。

咲心舎は4月より全学年高橋に任せているため、あまり週の風景にもあがってきませんが、塾生の動向などは高橋の日報で毎日確認しています。先週は2学期の期末試験が近隣の学校全て(千川中、西池袋中、明豊中、板二中)で行われました。それに合わせ高橋も集中指導を行っていましたが、手ごたえ云々というより、高橋から「やはり生活リズムがちゃんとしないとダメですね。なんだかんだ言って、成績が伸びない子は、スマホで夜更かしとかしているんですよ。」という切実な声があがってきました。そして12月から塾生個々が毎月書いている「ビジョン実現シート」に、勉強課題ではなく、生活課題への取り組みを必ず入れてもらうとのことでした。

学校の授業理解がされていない塾生が散見されたため、9月から高橋は学校の授業の聴き方に切り込み、ノートチェック及び、適切な授業の聴き方=先生の話をメモることを指導してきました。そして今度は生活リズムに切り込んでいくことに。携帯使用のガイドラインを設けてはいますが、やはりそれだけでは生活リズムは整いません。塾がどこまで踏み込むかは難しい所ですが、目の前の子供の学力を上げることに一番熱のある人が促進していけばよいのだと思います。塾も研修もまずをもって大切な事は、目の前の参加者の成長にどれだけ情熱を注げるか。実施者の熱の高まりに必ず参加者は呼応します。高橋の更なる熱の高まりを感じた週でした。

今週は、大切な方々との会食が多く入っている週です。体に気をつけて走ります。

教育心理の部屋

第68回「行動療法②オペラント条件づけ 10章 カウンセリングとは」

第68回
2019/11/25
「行動療法②オペラント条件づけ 10章 カウンセリングとは」

【まとめ】
3つの心理療法
1.クライアント中心療法
2.行動療法
3.認知療法

行動療法の中の「オペラント条件づけ療法」について。小林重雄ら(小林, 1985)の研究を紹介。

登校できない小学1年生の児童、1学期は問題なかったが、2学期から登校をしぶるように。登校の準備の際に、泣いたり、部屋の隅に座り込むようになったりした。登校時、登校班に入ると支障なく登校でき、学校でも何の問題もなく過ごすことができる。治療者は、本児が単独で集合場所まで行けることを目的とした。

自宅から集合場所まで8段階で設定をし、まずは至近まで母親が同行し、それが達成されると少し離れた場所まで母親が同行する、と段階的に移行をはかり、最終的に自宅から単独行が達成された。

これはシェーピングの考え方だが、このためには報酬による強化が必要であり、この事例では、児童が母親と分かれて集合場所へ向かう際に、母親から1枚~3枚のシール(児童にとって価値がある賞品)が与えられ、児童の行動は強化された。児童の帰宅後、自らが用意した「がんばり表」にシールを貼った。その時に、母親は「大変よくできた。この次もがんばろう」と言葉により、強化をした。さらにシールがたまると、就寝時母親が添い寝をして、本を読んであげた。シールの獲得量が多いほど、その時間も長くするようにした。

結果、開始から約9週間後に集合場所への単独行が達成された。その後も、問題なく登校できているとのこと。

【所感】
行動療法の代表格として、スキナーの道具的条件づけが挙げられます。オペラント条件づけはこの道具的条件づけと同義です。これはいわばアメとムチ的な考えで、外発的動機づけにより行動変容を促すものです。本人の内発的動機を喚起することなく、アメでつるようなやり方は本当に子供のためになるのか?と常々疑問を感じてきました。よって、我が家では毎日の些細なことに称賛はしますが、だからといってご褒美的におもちゃなどの賞は極力あげないようにしてきました。
今回の章を読み、人が行動変容をし、前に進むには両方のアプローチが必要なのだなと感じました。たとえ外発的動機付けであっても、今回の不登校児が元気に単独行ができるようになったことで、本人や家族がどんなに嬉しかったことでしょう。皆の笑顔が見えてきます。
小2の息子が学校で落ち着いてきているのも、毎日の行動チェックシートに花丸(落ち着いて活動をできた印)を沢山もらってきたときに、妻が思いっきりキスとハグをしてきたからだなとあらためて感じます。
(1048字)

宗興の本棚

第120週『小児科医の僕が伝えたい 最高の子育て』

第120週
2019/11/25
『小児科医の僕が伝えたい 最高の子育て』
高橋孝雄著 マガジンハウス

物事を知るには理論知だけでなく、実践知も私は重視をします。今回は研究機関の学術的な見解ではなく、小児科医の経験的な考究に興味がわき本書を手に取りました。

本書を総括すると、「人の伸びは遺伝で決まっているのだからあくせくせずにね」ということでしょう。ごく平凡な両親から超がつく優秀な子どもが生まれたとしても、それは遺伝情報がもっている正常な「振れ幅」に収まる程度で、遺伝子が決めたシナリオの「余白」のようなもの。そして教育とは親から受け継いだ遺伝子の特徴を上手に生かせるようにすること、と著者は言っています。

遺伝子で決まっているというのは、カルヴァンの予定説を想起させ、人の可能性を否定するように聞こえて違和感がありました。ただ、少し引いてみると、過熱する早期教育や心配性の母親群に対して「安心メッセージ」を届けたい著者の意図がみえてきます。

遺伝子決定論ともいえる、著者の人間観で印象に残った視点を二つ挙げます。一つは、思春期が『人生最大の遺伝子イルミネーション・ショータイム』としている点です。思春期は遺伝子スイッチが一気にONになる時期。「ざけんな」「うぜえんだよ」と物騒な言葉で反抗されても、うろたえず「人生最大のショーが始まった」として、子供の成長を歓びそっと見守って欲しいと著者は言っています。確かにこのぐらい鷹揚に構えた方が、上手く超えられるかもしれません。

もう一つは、遅咲きの遺伝子がある点です。著者は50代になってからマラソンをはじめ、58歳で3時間7分を達成したそうです。幼少期は体育が苦手な男子だったのですが、長距離走こそが遺伝子が自分に与えた特技だったことに気づき、「遅咲きの遺伝子」に感謝したそうです。何歳になってもチャレンジをすることで、未開の自分に出会えることも人生の楽しみの一つだなと感じました。

最後に子供の自己肯定感についても著者は言及しています。著者は自己肯定感を「子供が自分で生まれてきてよかったと感じること」とし、自己肯定感を育むには、やればできるようになるという経験を沢山積ませてあげることに尽きる、と著者は言っています。様々な研究結果をリサーチしても、自己肯定感を高める決定的な方法はまだないように思えます。ただ著者を含め多くの方がその経験知より、成功体験の実効性を挙げています。「尽きる」という著者の強い想いに背中を押してもらえました。
(988字)