週の風景

039 ものづくりの人

仕事納めの先週はプログラム制作WeeKでした。

特に部長向けリーダーシップの新プログラムは相変わらずうんうんとうなりながら、制作していました。参加者の顔や場面を想像しながら決めたものを、一晩寝かして翌日またやっぱりこっちだと変更するなど、納得のいくものに仕上げるべく往来を繰り返しました。例えば社会環境の分析を何年後の社会に設定するのか(社会軸)、会社全体の分析を何年後の会社に設定するのか(会社軸)、そして自部門のビジョン設定を何年後のものにするのか(ビジョン)は、その企業様や同じ企業内で職種によって、いや究極人によって異なります。リアリティをもって燃えられるのは何年後の目標かというのは、個々によって違うものです。パワポ資料に反映されるのはただ年数だけ。よってパワポを打ち込む時間はわずか3分。しかしその3分までに、日をまたいで何年後がよいかなーと考える訳です。

考えてみると、起業して6年半以上、平均毎月10日ぐらいはプログラム制作の時間があったと思います。質を第一に、1社1社、1回1回作りこんでいくためこのように多くの時間をかけることになりましたし、中々生み出せず苦悶する時間も多かったです。ただ、営業側の人間だった自分が、自分の手で創り届けるという「ものづくり」の感覚や喜びを感じることができました。クライアント企業様がいたから体験できたことであり、心から感謝しています。本当にありがとうございます。

今年も色々とありがとうございました。起業してもうすぐ丸7年が経ちます。実は自分としては大きな決断をし、新たな挑戦も開始します。今はその準備なども進めていますが、是非また良いタイミングでお伝えしたいと思います。来年も宜しくお願い致します。

教育心理の部屋

第70回「認知療法②ベックの認知療法 10章 カウンセリングとは」

第70回
2019/12/29
「認知療法②ベックの認知療法 10章 カウンセリングとは」

【まとめ】
3つの心理療法
1.クライアント中心療法
2.行動療法
3.認知療法

今回も認知療法。米アーロン・ベックの認知療法。

アーロン・ベック(Aaron Temkin Beck、1921年7月18日 – )は、アメリカの医学者、精神科医で、うつ病の認知療法(Cognitive Therapy)の創始者として知られる(Wikipediaより)

ベックは心理的な問題をもった人には、思考パターンの歪みがあることを見出し、クライアントが自分のもつ思考パターンの歪み(認知の歪み)に気づき、これを修正することを治療の目的とした。実際の臨床場面では、認知的な技法と共に行動療法的な技法も多く取り入れられている。

アーサー・フリーマン(Freeman, 1989)の認知の歪み。
1.全か無かの思考(善か悪か、白か黒かの両極端「1位ではないとびりと一緒」)
2.破局的な見方(ちょっとした困難を大変な災難と思う)
3.過度の一般化(一度失敗しただけで、いつも失敗すると勝手に結論づける)
4.選択的抽出(自分の考えにあったわずかな事実を選び出し他を無視「いつもこうだ」)
5.独断的推論(試験時、準備を十分したのに落第すると思う)
6.誇大視と極微視(自分の欠点や他人の長所を過大評価、自分の長所や他人の欠点を過小評価)
7.自己関係づけ(渋滞時「僕が急いでいるときは、いつもこうだ」と思う)

<選択的抽出の実験的研究>
クローソンとクロムウェル(Crowson&Cromwell, 1995)の簡明な実験。
抑うつ的な傾向の強い大学生とそうではない大学生を選び、否定的なメッセージと肯定的なメッセージのいずれかを好んで聞くかを実験的に検討した。20分間テープを聞き、いつでも切り替え可能で好きな方を聞くことができる。抑うつ傾向が強い学生は同じぐらいの割合で聞くが、そうではない学生は肯定的なメッセージを多く聞いた。音質についても、否定的なメッセージを音質がよいと抑うつ的な学生は評価する傾向にあった。

【所感】
フリーマンの7つの認知の歪みをみると、2~7はほぼ同じ内容に感じます。事象をマイナスに且つ大きく解釈してしまう認知の仕方でしょうか。自分を照らすと1の全か無か思考が強かったところから、歪みが治ってくるというか、徐々に和らいでいる気がします。認知療法は例えば「その考えは、全か無か思考であり、歪んでいる」と認知するところから始まりますが、ではその歪みをどう治すかは本書には言及されていません。心療内科の領域でしょう。今回で『やさしい教育心理学』の全ページまとめが終わりました。次回は、吉田が勝手に考える「本書から選ぶすごい心理学者ランキング」を載せたいと思います。
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宗興の本棚

第125週『マーケティングとは「組織革命」である。』

第125週
2019/12/29
『マーケティングとは「組織革命」である。』
森岡毅著 日経BP社

最近特に強く思うことがあります。より多くの組織を束ねられる方は、結局ビジョンや事業戦略を描く以上に、組織マネジメントの力が長けていると。個ではなく組織(チーム)として行うのであれば、個の力を引き出し、つながりの化学反応を起こし成果を最大化させることに腐心するのはある意味当たり前かもしれません。著者はUSJをV字回復させたマーケティングの専門家ですが、実際のマーケティング手法ではなく「組織変革」という題名に惹かれ手に取りました。

非常に実用的な書籍のため、私共のリーダーシップ、マネジメントプログラムに直接取り入れそうな項目がふんだんにありました。中でも下記3点を取り入れていきたいと思います。

一つ目は、組織マネジメント・システムの位置づけについてです。そもそも組織とは何か。著者は組織を「機能の鎖」として捉えています。そしてシンプルに4つの機能、ファイナンス・システム、マーケティング・システム、生産マネジメント・システム、組織マネジメント・システムに大別しています。最後の組織マネジメント・システム(人をより生産的に働かすための仕組み)を3本柱の土台とおいているところがミソです。これは特にプレイヤー志向が強い技術系の管理職に対して、組織マネジメントを促進する事例として紹介できそうです。

二つ目は、変革の仕方の「勝ち筋」を明確にすることです。著者はUSJのV字回復の際、戦略として「三段ロケット構想」を掲げました。目玉であったハリーポッターの施設は450億円かかり、700億円の売り上げの会社としては投機的な色合いの強い投資になります。当然いきなり導入はできないため、コラボや低予算アイデアで稼ぐ→新ファミリー・エリアで稼ぐ→ハリー・ポッターで稼ぐ→パークの多拠点展開で稼ぐ→アジア最大のエンターテイメント・カンパニーになるという勝ち筋を明確にみせました。そして第一段階のコラボや低予算アイデアを成功させ信用貯金を増やし、ハリーポッターの導入を実現させました。勝ち筋をつくる際に、「逆算の階段」として壁の頂上(魅力的な成功)から階段を一段ずつ下げながら今いる地面まで組み立てることが重要と言っています。参加者に策定していただくビジョンと実現策を伝える際、この「勝ち筋」という言葉は有効な考え方として組み込めそうです。

三つ目は、個の便益です。人を動かし突き動かす情熱のエネルギーは公の便益に訴えるだけでなく、深層面の個の便益に響くことで生み出されていくと著者は言っています。そして個の便益は、評価や報酬が上がる実利系の便益以上に、「やりがい」という感情系便益が重要であるとも言っています。実際にハリーポッター導入の際、『このプロジェクトは、子供だけでなく、孫にもひ孫にも自慢できる仕事になる』とメンバーに伝え鼓舞したそうです。この心の奥底の種火に火をつける考え方も、ビジョンを伝え、意識統合と動機づける際に、有効な考え方として組み込めそうです。
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週の風景

038 景色が変わる

先週の木曜日は今年の研修納めでした。

研修納めは、ある会社様の執行役員向けの最終回です。6ヶ月計8回に渡り、自分と、社会と、会社と、メンバーと、そしてまた自分と向き合い、独自解を創り上げてきました。最後の感想共有である一人の方から放たれた言葉が、私の中で琴線に触れました。

それは

「景色が変わりました」

という言葉です。

この方は、責任はきっちり果たしますがどちらかというと保守的なタイプと感じていた方です。その方が研修を通して自身で立てた部門のビジョンを部門のイベント時に取引先の企業様にも宣言をするという、驚きの行動をしていました。これはとてつもなく勇気のいることです。

研修参加者の方が学びと実践を通してこの境地に辿り着いたことを心から嬉しく思います。と同時に何となく羨ましさを感じました。私自身が「景色が変わった」と言える程のチャレンジをしているのか自問をする良い機会となりました。負けてられん・・・来年はより熱くいきます!
今週は新年の研修に向けた制作WEEKです。

宗興の本棚

第124週『受けてみたフィンランドの教育』

第124週
2019/12/23
『受けてみたフィンランドの教育』
実川真由・元子著 文藝春秋社

2003年度のPISAで、フィンランドは3項目中2項目で1位、1項目で2位という驚くべき結果を出し、これ以降フィンランドの教育は注目をされ続けてきました。今回久々に日本の教育を再考する際のヒントにしようと手にとりました。

本書は、日本の中高一貫に通う女子高生がフィンランドに1年間留学をした時の体験をつづったものです。各章の終わりには翻訳家・ライターの母親が、親の視点から解説をしています。

本書を読み、日本との「PISA力」の差を生み出す二つの違いを抽出しました。一つは、高校のテストのほとんどがエッセイ(作文)であることです。英語、国語はもちろん、化学や生物、音楽までもエッセイであり、穴埋め問題はそもそも存在しないそうです。例えば、「あなたにとって文化が意味するところはなにか」(英語)、「耳について知っていることを全てかけ」(生物・留学生用)など、上級になると数学もエッセイがあるそうです。エッセイを書くだけの知識を詰め込む必要はありますが、あくまで自分の意見を問われており、『本や資料から得た知識を、自分なりに解釈していくという訓練がフィンランドの学校が教えていることだ。』と筆者は言っています。

もう一つは、全体を通して実学志向であることです。まず中学生について、職業教育が組み込まれている点は日本と一緒なのですが、職業体験が2週間もあります。次に高校卒業後、すぐに大学入学をする人は珍しく、若者のほとんどは高校を卒業すると仕事をしながらその後の進路を考えるそうです。フィンランドにはヴァリヴォシ(猶予期間)という言葉があるのですが、多くはこのヴァリヴォシを大切にしていると著者は言っています。そして大学について、就職で実務経験が問われるので、大学生はインターンシップなどで実務経験を積むことに一生懸命になるそうです。フィンランドの人口は約550万人、大学数も20のみで大学間の偏差値格差もないそうです。大学生の就職率はほぼ100%であり、全入時代の日本とは大学のあり方自体異なると思いますが、教育の目的を「自分の納得のいく仕事をみつけるため」とおくフィンランドらしい実学志向がうかがえます。

この実学志向に付随し「納得のいく仕事」につくまで年齢制限を設けていないのもフィンランドの特徴ではないでしょうか。著者が高校卒業後、ほとんどがすぐに大学入学する日本の現状を話すと、フィンランド人の友人が目を丸くして「え、将来のことなのに、なんでそんなに急ぐの?」と言ったシーンが印象に残っています。

国立大入試の記述式が実現できなかった今、日本の教育はどこに向かうのがよいのか。解を出すこと自体至難ですが、せめて自分の子供には社会の「年齢制限」に囚われず、応援していきたいと思います。
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週の風景

037 規格外の塾

※昨日は人生初の内視鏡検査のためお休みでした。

先週は研修WEEKでした。5日中4日研修があり、体的にはハードな週ではありますが、自分が一番好きな参加者接点の場であり、とても楽しく過ごせました。一生懸命に参加して頂くマネジメント職が多く、本当にありがたいです。

さて、今日は「学び」についてのネタを。私は大体2年に一度、新たな集中インプットとアウトプットを通した劇的成長の場を求め、学びの場に入ります。2015年は日本政策学校、2017年はフォスターワンの経営者コンサルティング、そして今回2019年は天外塾(てんげじゅく)です。

天外塾は、ソニーでCDやアイボを開発した元上席常務の天外さんが、開催する経営塾です。月1回6か月間の学びの場となっています。丁度先週第3回がありました。

資本主義大礼賛だった私は起業からの6年半を通して、驚くぐらい価値観が変わりました。現在は、世界的な資本主義の限界を感じると共に、これまで刷り込まれた社会通念への懐疑をもとに別の価値観への移行期に入っています。その移行は、ある社長に頂いた「蛻変(ぜいへん)」という言葉が当てはまる気がします。蛻変は脱皮ではなく、セミなどが全く違うものに変態する様を指します。受講済みだった親友の経営者が進化する様をみて私も自身の変化を決定的なものにしたく、10月より参加することにしました。

天外塾は主に経営者の内的進化により、現象面としてはホワイト企業、フロー経営、ティール組織に近づくことを目指します。

話をしていることは宇宙の話、禅の話、自身にすくうモンスター(怨憎会苦)の話、親子の葛藤の話、メンタルモデルの話、キーガンの5段階説など、これまでの経営論的アプローチからは一線を画す、いわば規格外の塾でしょうか。「世界的に資本主義の次に進んでいる」と天外さんは仰りますが、分からない人には全く理解ができない、そんな世界観の中で学んでいます<笑>。

どんな場でも目的を明確にして、参加することが重要です。私も今回二つの目的をもっており良い感じて達成に近づけています。学びを通して自身が進化し、社会に還元していくのは私にとって心底楽しく充実感があります。ご関心がある方は下記サイトを是非ご覧になって頂ければ幸いです。引き続き、楽しみながら学んでいきます。
http://www.officejk.jp/

宗興の本棚

第123週『自己肯定感の教科書』

第123週
2019/12/15
『自己肯定感の教科書』
中島輝著 SBクリエイティブ社

ライフスキル概念図の真ん中にあるのは自己肯定感です。これまで自己肯定感を高める理論を探し続けてきましたが、「決定的な」学術研究はまだ見つかっておりません。本書は、学術研究ではないですが、久しぶりにこのテーマで新たなインプットがしたくなり手にとりました。

新たな知見として得られたことは下記3つです。

一つ目は、自己肯定感は揺れ動くということです。著者曰く、自己肯定感の「強い木」を育んだ人でも、環境により自己肯定感は上下するそうです。これまでは自分が何かに不安にかられると、自己肯定感がまだ低い人間だなと考える節がありました。不安になるからといって自己肯定感が恒常的に低いと決めつけず、「今は」自己肯定感が下がっている状態だなと認知することで、自分自身が整いやすくなると感じました。

二つ目は、自己受容感を高める方法です。著者は自己肯定感を6つの感に要素分解しています。①根の自尊感情②幹の自己受容感③枝の自己効力感④葉の自己信頼感⑤花の自己決定感⑥実の自己有用感です。

この中で、特に②幹の自己受容感は、最近私がとても重要視しているものです。この定義は『自分のポジティブな面もネガティブな面もあるがままに認められる感覚』です。実例として、上司に責任転嫁された傷がいえず、ふとした時に苛立つ30代男性が挙げられていました。この方に著書が『エクスプレッシブ・ライティング』という負の感情を思いっきり書き出す方法を処方したところ、区切りをつけることでき先に進めたそうです。人間は区切りをつければ忘れられる。私は「幕引き」という表現をしていますが、幕引きにこの手法は有効だと感じました。

これに関連して、アメリカの心理学者ダニエル・ウェグナーが行った「シロクマの実験」が興味深かったです。協力者を3つのグループを分け、シロクマの1日を追ったドキュメンタリー映画をみてもらいます。そしてA:シロクマのことを覚えておいて、B:シロクマのことを考えても考えなくてもよい、C:シロクマのことは絶対に考えないで、と伝えます。
1年後、映像の内容について覚えているかどうか聞くと、Cのグループが映像の内容を一番鮮明に覚えており、これを「皮肉過程理論」と名付けたそうです。この実験で、人は「忘れたい」「こだわりたくない」所に「忘れられず」「こだわってしまう」生き物であることが実証されました。負の感情を感じることは自然であり決して悪いことではないと私は思います。区切りをつける『エクスプレッシブ・ラインティング』は、自身でも早速実践してみたい方法ですし、これも子供向けに上手く展開できると良いなと感じています。

三つ目は、セルフハグです。精神科医のミシェル・ルジュワユーが「セロトニンなどの幸福感をもたらすホルモンの分泌は、自分で刺激することができる」と提唱しているそうです。ここから幸福物質である「セロトニン」を分泌させるのに8秒間セルフハグをするのが有効と著者は言っています。なぜ8秒かというと、大人が深呼吸をするのが大体8秒になるからです。ハグしながら「ありがとう、私」「がんばっているぞ、私」など自分を褒めるのも効果的だそうです。不安や焦燥、怒りに苛まれた時だけでなく、習慣としてセルフハグを取り入れると簡単でも効果が高い手法と感じました。
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週の風景

036 積み重ねの大切さ

今日は研修報告のお話です。

先週火曜日は、丸3年お世話になっているIT企業様の経営層への研修報告を致しました。この企業様は大変ご多用にも関わらず、毎回社長と取締役全員が出席されます。経営層が教育に関心をもって頂いていることが私としてはとてもありがたく、毎回報告を楽しみにしています。ただ楽しみではあるものの、経営層が集まる場なので当たり前ですが空気に緊張感があります。

さて、いざ報告が始まると、和気あいあいまではいかないですが、これまでより何かやわらかく少し砕けて対話が進むような場になっていると感じました。単純に席配置の関係かもしれませんが、3年(マネジメント職全員や新卒)教育をお任せ頂き、その積み重ねにより、もしかしたら私に対して少し安心が生まれているかもしれない(そうだったらいいな)と勝手にプラス解釈をしています<笑>。

丁度先々週も別の企業様で新卒向け研修の報告をしていました。創業期から丸6年も実施させて頂いているのですが、参加者の反応からこれまでで一番手ごたえがある回だったことを率直に伝えると、人事の方々にも同意して頂き「6年経って私達のことをよく知って頂いて、見ていて安心感がありますし、そういったことが参加者にも伝わっているのだと思います。」とありがたいお言葉を頂きました。このことがあって、上記のプラス解釈が生まれた次第です。

IT企業様の真相は分かりません。しかし積み重ねというのは、クライアント企業様と私共にとって価値のある大切なものであることをあらためて感じます。これからも積み重ねていけるよう、研鑽をしていきます。

今週は怒涛の研修WEEKです。体調管理をしっかり行い、走ります!

教育心理の部屋

第69回「認知療法①エリスの認知療法 10章 カウンセリングとは」

第69回
2019/12/8
「認知療法①エリスの認知療法 10章 カウンセリングとは」

【まとめ】
3つの心理療法
1.クライアント中心療法
2.行動療法
3.認知療法

今回は認知療法。クライアント中心療法は人の感情に焦点。行動療法は行動に焦点。認知療法は、人のものの考え方、信念こそが感情や行動の問題を引き起こすと考える。よって治療は、クライアントの思考パターンや信念を変容させることに力点がおかれる。

エリスの論理療法(Ellis, 1973)やベック(Beck, 1976)の認知療法を紹介。

米アルバート・エリスの論理療法。ABC図式に要約できる。
A(Activate event):出来事「就職面接を受ける」
C(Consequence):結果「強い不安や気分、自分への憎悪」
B(Belief):思い込み「面接で落とされたら人生真っ暗、虫けら同然。絶対にうまくやらなくては」

「不合理な思い込み」により、不安や絶望感などの不適切な感情が起こる。
エリスは10の不合理な思い込みを列挙している。

エリスはABCの後にさらにDEを付け加えている。
D(Disute):論駁=不合理な思い込みへの挑戦「面接に落ちたらなぜ人生が真っ暗になるのか。面接に落ちたら自分は虫けら同然とは何の証拠があるのか。」
E(Effect):効果=認知的な効果「面接で落ちたから虫けらなのではなく、自分で自分を虫けらだと定義するからそう感じるだけのこと」面接で不安を感じることがずっと少なくなる行動的効果も得られる

【所感】
エリスの論理療法は、自身の経験からもとても効果の高いものだと感じます。私自身、漠然としているものの鈍痛のような重い不安を感じる時があります。それは大体その原因や対策がはっきりせず、しかも具体的な未来が見えない時と認知しています。その際、具体的になぜそう感じるのかなど紙とペンをもって自問自答をするとすっと気持ちが晴れていくことが多いです。不安や怒りをはじめとした大抵の否定的感情は各々独自の論理療法で解消される気がします。

では自分でも比較的簡単に解消できることに対して、なぜカウンセリングを必要とする方が多いのか。二つの理由が浮かびます。一つは紙に書くなどの行為がそもそも面倒くさいと思うから。例えば、確かに疲れた週末に紙とペンをもって自分と向き合うのはパワーがかかることです。もう一つは、自身の内面と向き合うのが怖いから。ABC図式のBeliefを作るは幼少期からの経験であることが多く、強いトラウマがある場合などはそこと向き合うこと自体多大なストレスを引き起こします。こう考えると治療には論理療法だけでなく、行動療法と組み合わせが必要な気がします。私の場合、気が向いた時にノートに書くようにしていますが、月2回など習慣化した方が、より一層不安解消をはじめ精神の充足には効果があるかもしれません。
(1145字)

宗興の本棚

第122週『将棋「初段になれるかな」会議』

第122週
2019/12/8
『将棋「初段になれるかな」会議』
高野秀行×岡部敬史×さくらはな。 扶桑社新書

私が人生で初めてハマったものは仕事です。そして次にハマったものは子育て。そして最近ハマっているものは将棋です。将棋は初めての趣味です。

将棋教室に通い始めたのは2017年2月です。アキレス腱を断裂しスポーツが出来なくなったこともきっかけで、娘、息子と共に始めました。最初の1年10ヶ月は、楽しむことを念頭にのんびりゆっくりと進んでいました。しかし昨年の12月、千駄ヶ谷(北参道)にある将棋会館(将棋連盟)の道場に行ったことが完全にハマる転機となりました。道場は入室料を払い様々な方と対局できる場所です。その日、何人かと対局しそこで認定された級位は10級。宗真は8級。実来は11級でした。ちなみに段・級は15級~1級、初段~6段まであります。

当時自分の棋力は少なく見積もっても6級ぐらいはあると思っており、また息子にも負けたことで大変落ち込みましたが、ここで私に火がつきました。翌週、将棋教室の先生に「子供と共に連盟の初段を目指したい」と宣言をします。しかし先生からは「大人になって将棋を始めた方が初段になるのは難しいと言われてます。」と返され、うっとなった直後「吉田さんだったらできるかもしれませんね」と言われ、更にやる気に火がつきました。

そこから1年が経ち、それまでの1年10ヶ月とは明らかに伸びが違います。10級だった私は現在3級です。ちなみに宗真は5級。何とか抜きました。(実来は9級で中学受験に意欲が傾いたため一旦将棋はお休みです)

私にとって将棋は5つの意味があります。
一つ目は、子供との共通体験。子供と一緒に取り組み互いに伸びるとても豊かな時間を過ごせます。
二つ目は、思考力の向上。論理力、想像力、大局視点が鍛えられます。また小・中学時代、遊びの将棋で私はとても弱く、将棋が強いこと=論理的で賢いことと捉えコンプレックスを感じていました。大人になってその脱却にも一役買っています<笑>。
三つ目は、教育理論の実践。持論である人の成長=成長サイクル×モチベーションを実証、改良できる機会となっています。将棋を通して、人が伸びるには、何と言っても正しいやり方とモチベーションが重要と実感しています。
四つ目は、自己分析。将棋は棋風や癖など「自分自身」が盤面に出ます。これが自己分析になり自身のことを知る事ができます。例えば、私は臆病なくせに攻め好きで無謀に突っ込む癖(へき)がある、よく馬(角)の効きを見逃す視野の狭さがある、など再認識をしました。
五つ目は、楽しさ。仕事以外でハマったものがなかったので純粋に楽しいです。人生を豊かにする方法は仕事だけでなく、趣味もあるなと今更ですが実感しています。

さて、本書についてです。本書はプロ棋士、将棋が趣味のライターと漫画家の3名の対談形式で読みやすいものです。将棋の本はプロが書いた本が殆どなので、実は級位者(初段に届いていない人)には複雑で実践できない筋も多いと常々思っていました。本書は、はじめにの部分で『本書は、今まで身の丈に合った本がなかったに違いない級位者のみなさんにとって「これならわかる」を目指したものです。』と書いてあり、まさにニーズと合致し手に取りました。

読了して総じて「迷い」がなくなり、独自のトレーニングメニューの構築につながりました。
例えば、迷いが消えた3つは下記です。
・詰将棋は5手詰めまでで十分
・戦型は一つ覚えれば十分
・棋譜並べは必要なし(楽しむためにやるだけでよし)
疑念が晴れ、やり方への迷いがなくなったことは棋力の伸びに大いに影響したと感じます。

現在のトレーニングメニューは下記の三本柱です。
1.基礎体力づくり→詰将棋。5手詰めをマスターした後、詰め将棋は自分に合っているので現在7手詰めを毎日
2.基礎力づくり→『駒落ち定跡』、『寄せの手筋』を気が向いた時に。駒の効果的な動き方がわかる。
3.課題のクリア→三間飛車対策、後手番の時、端攻め等々。会館での対局をもとに課題設定し、次の機会までに勉強して課題を克服する。これも週の中で気が向いた時に。

将棋を通して、とにかく伸びるには「モチベーション」が最も重要であることを実感します。やらされ感は何をやっても伸びません。私だけでなく、企業研修の参加者の方々も、咲心舎の塾生も、我が子も同じではないでしょうか。「やりたいことをやる」、原則これだけです。

上記の実感から年々管理職の方々に無理強いは一切しなくなりました。「できること、やりたいことを一つだけから是非」と。咲心舎の塾生にもモチベーション重視で。また我が家では「勉強しなさい」とは基本言いませんでしたが、一切言わなくなりました。「やりたかったらやろう」。お稽古も全部そうです。

今年の目標は1月中に2級。3月中に1級。そして6月中に初段で、夏の合宿を越え、9月に二段を目指しています。かなり挑戦的な目標ですが、今年の目標であった3級をクリアしたので、いけると勝手に思っています。モチベーション重視で楽しみながら伸びていきます。
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