教育心理の部屋

第69回「認知療法①エリスの認知療法 10章 カウンセリングとは」

第69回
2019/12/8
「認知療法①エリスの認知療法 10章 カウンセリングとは」

【まとめ】
3つの心理療法
1.クライアント中心療法
2.行動療法
3.認知療法

今回は認知療法。クライアント中心療法は人の感情に焦点。行動療法は行動に焦点。認知療法は、人のものの考え方、信念こそが感情や行動の問題を引き起こすと考える。よって治療は、クライアントの思考パターンや信念を変容させることに力点がおかれる。

エリスの論理療法(Ellis, 1973)やベック(Beck, 1976)の認知療法を紹介。

米アルバート・エリスの論理療法。ABC図式に要約できる。
A(Activate event):出来事「就職面接を受ける」
C(Consequence):結果「強い不安や気分、自分への憎悪」
B(Belief):思い込み「面接で落とされたら人生真っ暗、虫けら同然。絶対にうまくやらなくては」

「不合理な思い込み」により、不安や絶望感などの不適切な感情が起こる。
エリスは10の不合理な思い込みを列挙している。

エリスはABCの後にさらにDEを付け加えている。
D(Disute):論駁=不合理な思い込みへの挑戦「面接に落ちたらなぜ人生が真っ暗になるのか。面接に落ちたら自分は虫けら同然とは何の証拠があるのか。」
E(Effect):効果=認知的な効果「面接で落ちたから虫けらなのではなく、自分で自分を虫けらだと定義するからそう感じるだけのこと」面接で不安を感じることがずっと少なくなる行動的効果も得られる

【所感】
エリスの論理療法は、自身の経験からもとても効果の高いものだと感じます。私自身、漠然としているものの鈍痛のような重い不安を感じる時があります。それは大体その原因や対策がはっきりせず、しかも具体的な未来が見えない時と認知しています。その際、具体的になぜそう感じるのかなど紙とペンをもって自問自答をするとすっと気持ちが晴れていくことが多いです。不安や怒りをはじめとした大抵の否定的感情は各々独自の論理療法で解消される気がします。

では自分でも比較的簡単に解消できることに対して、なぜカウンセリングを必要とする方が多いのか。二つの理由が浮かびます。一つは紙に書くなどの行為がそもそも面倒くさいと思うから。例えば、確かに疲れた週末に紙とペンをもって自分と向き合うのはパワーがかかることです。もう一つは、自身の内面と向き合うのが怖いから。ABC図式のBeliefを作るは幼少期からの経験であることが多く、強いトラウマがある場合などはそこと向き合うこと自体多大なストレスを引き起こします。こう考えると治療には論理療法だけでなく、行動療法と組み合わせが必要な気がします。私の場合、気が向いた時にノートに書くようにしていますが、月2回など習慣化した方が、より一層不安解消をはじめ精神の充足には効果があるかもしれません。
(1145字)

宗興の本棚

第122週『将棋「初段になれるかな」会議』

第122週
2019/12/8
『将棋「初段になれるかな」会議』
高野秀行×岡部敬史×さくらはな。 扶桑社新書

私が人生で初めてハマったものは仕事です。そして次にハマったものは子育て。そして最近ハマっているものは将棋です。将棋は初めての趣味です。

将棋教室に通い始めたのは2017年2月です。アキレス腱を断裂しスポーツが出来なくなったこともきっかけで、娘、息子と共に始めました。最初の1年10ヶ月は、楽しむことを念頭にのんびりゆっくりと進んでいました。しかし昨年の12月、千駄ヶ谷(北参道)にある将棋会館(将棋連盟)の道場に行ったことが完全にハマる転機となりました。道場は入室料を払い様々な方と対局できる場所です。その日、何人かと対局しそこで認定された級位は10級。宗真は8級。実来は11級でした。ちなみに段・級は15級~1級、初段~6段まであります。

当時自分の棋力は少なく見積もっても6級ぐらいはあると思っており、また息子にも負けたことで大変落ち込みましたが、ここで私に火がつきました。翌週、将棋教室の先生に「子供と共に連盟の初段を目指したい」と宣言をします。しかし先生からは「大人になって将棋を始めた方が初段になるのは難しいと言われてます。」と返され、うっとなった直後「吉田さんだったらできるかもしれませんね」と言われ、更にやる気に火がつきました。

そこから1年が経ち、それまでの1年10ヶ月とは明らかに伸びが違います。10級だった私は現在3級です。ちなみに宗真は5級。何とか抜きました。(実来は9級で中学受験に意欲が傾いたため一旦将棋はお休みです)

私にとって将棋は5つの意味があります。
一つ目は、子供との共通体験。子供と一緒に取り組み互いに伸びるとても豊かな時間を過ごせます。
二つ目は、思考力の向上。論理力、想像力、大局視点が鍛えられます。また小・中学時代、遊びの将棋で私はとても弱く、将棋が強いこと=論理的で賢いことと捉えコンプレックスを感じていました。大人になってその脱却にも一役買っています<笑>。
三つ目は、教育理論の実践。持論である人の成長=成長サイクル×モチベーションを実証、改良できる機会となっています。将棋を通して、人が伸びるには、何と言っても正しいやり方とモチベーションが重要と実感しています。
四つ目は、自己分析。将棋は棋風や癖など「自分自身」が盤面に出ます。これが自己分析になり自身のことを知る事ができます。例えば、私は臆病なくせに攻め好きで無謀に突っ込む癖(へき)がある、よく馬(角)の効きを見逃す視野の狭さがある、など再認識をしました。
五つ目は、楽しさ。仕事以外でハマったものがなかったので純粋に楽しいです。人生を豊かにする方法は仕事だけでなく、趣味もあるなと今更ですが実感しています。

さて、本書についてです。本書はプロ棋士、将棋が趣味のライターと漫画家の3名の対談形式で読みやすいものです。将棋の本はプロが書いた本が殆どなので、実は級位者(初段に届いていない人)には複雑で実践できない筋も多いと常々思っていました。本書は、はじめにの部分で『本書は、今まで身の丈に合った本がなかったに違いない級位者のみなさんにとって「これならわかる」を目指したものです。』と書いてあり、まさにニーズと合致し手に取りました。

読了して総じて「迷い」がなくなり、独自のトレーニングメニューの構築につながりました。
例えば、迷いが消えた3つは下記です。
・詰将棋は5手詰めまでで十分
・戦型は一つ覚えれば十分
・棋譜並べは必要なし(楽しむためにやるだけでよし)
疑念が晴れ、やり方への迷いがなくなったことは棋力の伸びに大いに影響したと感じます。

現在のトレーニングメニューは下記の三本柱です。
1.基礎体力づくり→詰将棋。5手詰めをマスターした後、詰め将棋は自分に合っているので現在7手詰めを毎日
2.基礎力づくり→『駒落ち定跡』、『寄せの手筋』を気が向いた時に。駒の効果的な動き方がわかる。
3.課題のクリア→三間飛車対策、後手番の時、端攻め等々。会館での対局をもとに課題設定し、次の機会までに勉強して課題を克服する。これも週の中で気が向いた時に。

将棋を通して、とにかく伸びるには「モチベーション」が最も重要であることを実感します。やらされ感は何をやっても伸びません。私だけでなく、企業研修の参加者の方々も、咲心舎の塾生も、我が子も同じではないでしょうか。「やりたいことをやる」、原則これだけです。

上記の実感から年々管理職の方々に無理強いは一切しなくなりました。「できること、やりたいことを一つだけから是非」と。咲心舎の塾生にもモチベーション重視で。また我が家では「勉強しなさい」とは基本言いませんでしたが、一切言わなくなりました。「やりたかったらやろう」。お稽古も全部そうです。

今年の目標は1月中に2級。3月中に1級。そして6月中に初段で、夏の合宿を越え、9月に二段を目指しています。かなり挑戦的な目標ですが、今年の目標であった3級をクリアしたので、いけると勝手に思っています。モチベーション重視で楽しみながら伸びていきます。
(2050字)