週の風景

039 ものづくりの人

仕事納めの先週はプログラム制作WeeKでした。

特に部長向けリーダーシップの新プログラムは相変わらずうんうんとうなりながら、制作していました。参加者の顔や場面を想像しながら決めたものを、一晩寝かして翌日またやっぱりこっちだと変更するなど、納得のいくものに仕上げるべく往来を繰り返しました。例えば社会環境の分析を何年後の社会に設定するのか(社会軸)、会社全体の分析を何年後の会社に設定するのか(会社軸)、そして自部門のビジョン設定を何年後のものにするのか(ビジョン)は、その企業様や同じ企業内で職種によって、いや究極人によって異なります。リアリティをもって燃えられるのは何年後の目標かというのは、個々によって違うものです。パワポ資料に反映されるのはただ年数だけ。よってパワポを打ち込む時間はわずか3分。しかしその3分までに、日をまたいで何年後がよいかなーと考える訳です。

考えてみると、起業して6年半以上、平均毎月10日ぐらいはプログラム制作の時間があったと思います。質を第一に、1社1社、1回1回作りこんでいくためこのように多くの時間をかけることになりましたし、中々生み出せず苦悶する時間も多かったです。ただ、営業側の人間だった自分が、自分の手で創り届けるという「ものづくり」の感覚や喜びを感じることができました。クライアント企業様がいたから体験できたことであり、心から感謝しています。本当にありがとうございます。

今年も色々とありがとうございました。起業してもうすぐ丸7年が経ちます。実は自分としては大きな決断をし、新たな挑戦も開始します。今はその準備なども進めていますが、是非また良いタイミングでお伝えしたいと思います。来年も宜しくお願い致します。

教育心理の部屋

第70回「認知療法②ベックの認知療法 10章 カウンセリングとは」

第70回
2019/12/29
「認知療法②ベックの認知療法 10章 カウンセリングとは」

【まとめ】
3つの心理療法
1.クライアント中心療法
2.行動療法
3.認知療法

今回も認知療法。米アーロン・ベックの認知療法。

アーロン・ベック(Aaron Temkin Beck、1921年7月18日 – )は、アメリカの医学者、精神科医で、うつ病の認知療法(Cognitive Therapy)の創始者として知られる(Wikipediaより)

ベックは心理的な問題をもった人には、思考パターンの歪みがあることを見出し、クライアントが自分のもつ思考パターンの歪み(認知の歪み)に気づき、これを修正することを治療の目的とした。実際の臨床場面では、認知的な技法と共に行動療法的な技法も多く取り入れられている。

アーサー・フリーマン(Freeman, 1989)の認知の歪み。
1.全か無かの思考(善か悪か、白か黒かの両極端「1位ではないとびりと一緒」)
2.破局的な見方(ちょっとした困難を大変な災難と思う)
3.過度の一般化(一度失敗しただけで、いつも失敗すると勝手に結論づける)
4.選択的抽出(自分の考えにあったわずかな事実を選び出し他を無視「いつもこうだ」)
5.独断的推論(試験時、準備を十分したのに落第すると思う)
6.誇大視と極微視(自分の欠点や他人の長所を過大評価、自分の長所や他人の欠点を過小評価)
7.自己関係づけ(渋滞時「僕が急いでいるときは、いつもこうだ」と思う)

<選択的抽出の実験的研究>
クローソンとクロムウェル(Crowson&Cromwell, 1995)の簡明な実験。
抑うつ的な傾向の強い大学生とそうではない大学生を選び、否定的なメッセージと肯定的なメッセージのいずれかを好んで聞くかを実験的に検討した。20分間テープを聞き、いつでも切り替え可能で好きな方を聞くことができる。抑うつ傾向が強い学生は同じぐらいの割合で聞くが、そうではない学生は肯定的なメッセージを多く聞いた。音質についても、否定的なメッセージを音質がよいと抑うつ的な学生は評価する傾向にあった。

【所感】
フリーマンの7つの認知の歪みをみると、2~7はほぼ同じ内容に感じます。事象をマイナスに且つ大きく解釈してしまう認知の仕方でしょうか。自分を照らすと1の全か無か思考が強かったところから、歪みが治ってくるというか、徐々に和らいでいる気がします。認知療法は例えば「その考えは、全か無か思考であり、歪んでいる」と認知するところから始まりますが、ではその歪みをどう治すかは本書には言及されていません。心療内科の領域でしょう。今回で『やさしい教育心理学』の全ページまとめが終わりました。次回は、吉田が勝手に考える「本書から選ぶすごい心理学者ランキング」を載せたいと思います。
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宗興の本棚

第125週『マーケティングとは「組織革命」である。』

第125週
2019/12/29
『マーケティングとは「組織革命」である。』
森岡毅著 日経BP社

最近特に強く思うことがあります。より多くの組織を束ねられる方は、結局ビジョンや事業戦略を描く以上に、組織マネジメントの力が長けていると。個ではなく組織(チーム)として行うのであれば、個の力を引き出し、つながりの化学反応を起こし成果を最大化させることに腐心するのはある意味当たり前かもしれません。著者はUSJをV字回復させたマーケティングの専門家ですが、実際のマーケティング手法ではなく「組織変革」という題名に惹かれ手に取りました。

非常に実用的な書籍のため、私共のリーダーシップ、マネジメントプログラムに直接取り入れそうな項目がふんだんにありました。中でも下記3点を取り入れていきたいと思います。

一つ目は、組織マネジメント・システムの位置づけについてです。そもそも組織とは何か。著者は組織を「機能の鎖」として捉えています。そしてシンプルに4つの機能、ファイナンス・システム、マーケティング・システム、生産マネジメント・システム、組織マネジメント・システムに大別しています。最後の組織マネジメント・システム(人をより生産的に働かすための仕組み)を3本柱の土台とおいているところがミソです。これは特にプレイヤー志向が強い技術系の管理職に対して、組織マネジメントを促進する事例として紹介できそうです。

二つ目は、変革の仕方の「勝ち筋」を明確にすることです。著者はUSJのV字回復の際、戦略として「三段ロケット構想」を掲げました。目玉であったハリーポッターの施設は450億円かかり、700億円の売り上げの会社としては投機的な色合いの強い投資になります。当然いきなり導入はできないため、コラボや低予算アイデアで稼ぐ→新ファミリー・エリアで稼ぐ→ハリー・ポッターで稼ぐ→パークの多拠点展開で稼ぐ→アジア最大のエンターテイメント・カンパニーになるという勝ち筋を明確にみせました。そして第一段階のコラボや低予算アイデアを成功させ信用貯金を増やし、ハリーポッターの導入を実現させました。勝ち筋をつくる際に、「逆算の階段」として壁の頂上(魅力的な成功)から階段を一段ずつ下げながら今いる地面まで組み立てることが重要と言っています。参加者に策定していただくビジョンと実現策を伝える際、この「勝ち筋」という言葉は有効な考え方として組み込めそうです。

三つ目は、個の便益です。人を動かし突き動かす情熱のエネルギーは公の便益に訴えるだけでなく、深層面の個の便益に響くことで生み出されていくと著者は言っています。そして個の便益は、評価や報酬が上がる実利系の便益以上に、「やりがい」という感情系便益が重要であるとも言っています。実際にハリーポッター導入の際、『このプロジェクトは、子供だけでなく、孫にもひ孫にも自慢できる仕事になる』とメンバーに伝え鼓舞したそうです。この心の奥底の種火に火をつける考え方も、ビジョンを伝え、意識統合と動機づける際に、有効な考え方として組み込めそうです。
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