宗興の本棚

第132週 『ビジョナリー・ピープル』

第132週
2020/2/24
『ビジョナリー・ピープル』
ジェリー・ポラス、スチュワート・エミリー、マーク・トンプソン著 宮本喜一訳 英治出版

アカツキの塩田代表が著書で言及しており、また好著『ビジョナリーカンパニー』の著者ジェリー・ポラス氏が書いていることから手に取りました。原題は『SUCCESS BUILT TO LAST』。永続的に続く成功をおさめるには、という所でしょうか。

本書は短期的な成功ではなく、長期に続く成功を分析したものです。分析対象となった200名以上のインタビュー対象者は、『ひとつあるいは多数の分野で最低20年以上強烈な影響力を発揮していること』が条件です。そもそも本書で言う成功の定義は、よくある富、名声、権力の獲得ではありません。『ビジョナリーな人にとって、成功の本当の定義とは、個人的な充実感と変わらない人間関係を与えてくれる、そして自分たちが住んでいるこの世界で、自分にしかできない成果を上げさせてくれる、そんな生活や仕事のことだ。』としています。

結論として、この永続的に続く成功をおさめる秘訣は『自分の生きがいに対する誠実さ』に集約されます。その「誠実さ」を持ち続けるために、本書から今の私にとって必要なことを二つ抽出しました。

一つ目はキャリアに固執せず自身の「静かな叫び」を聴くこと。この項目で触れられていたのは映画化もされた軍事小説『レッドオクトーバーを追え』の作者トム・クランシーです。トムは子供時代、戦争のおもちゃと宇宙が大好きで、10代は海軍の歴史に対する情熱を燃やしていたそうです。しかし、視力が弱く海軍入隊を断念し、保険の仲介業をはじめた後、妻の祖父が経営する証券会社に入り、のちにその会社を買います。所謂「よい生活」でしたが、12年ぐらい自分の夢を思い描きながら、その「静かな叫び」を耳にしていたそうです。そして上記自作の小説が世に出るまで20年の年月がかかっています。『周りの人たちによって価値があると評価されても、されなくても、人生のある時点で彼らは自分の夢をよしにつけ悪しきにつけ、大切にしようとする。永続的な成功への道はこれ以外ない。』と本書は言っています。静かな叫びに答えること、沁み込む言葉です。

二つ目は、「大義」の話。この項目で触れられていたのはサウスウエスト航空の創業者ハーブ・ケレハーです。優秀な弁護士だったケレハーは経営者に転身するのですが、航空業界に価格破壊をしかけ、その認可が下りる前にライバルからの訴訟に巻き込まれています。そういった困難を乗り越えて同社を素晴らしい企業へと導いた原動力は「大義」とのことです。『大義には自分自身を熱狂させるようなカリスマ性がある』というのがケレハーの信念だったそうです。これはすごく実感しています。取り組むだけの価値あるから「誠実」になれるのですが、自分のやりたいことが大義と重なると、とてつもないエネルギーが湧きます。
(1152字)