宗興の本棚

第145週『「超」文章法』

第145週
2020/5/31
『「超」文章法』
野口悠紀雄著 中公新書

今年の読書テーマの一つは「筆力強化」。書くという行為は、これから先も増えていくことを見越し、今年のテーマとしました。その第一弾が本書です。

結論として、第1章「メッセージこそ重要だ」がとても響きました。この章だけでも十分財産となりえるものと感じます。

第1章の主張は、「メッセージを明確化せよ」ということです。著書は「メッセージが8割の重要性をもつ」と言っていますが、伝わりやすい文章の核心はここだと感じます。しかも、メッセージは質が問われます。メッセージとなりえるための条件で、メッセージが、ひとことで言えるか、ためになるか、面白いか、の3つが響きました。質の高いメッセージとしてあがっていた例は「猫は笑う」です。おっ?と意外性があり面白く、また雑談のネタの一つとしてためになりそうです。

更に、筆者はメッセージが見つかったときも、読者にとって「ためになるか」「面白いか」と何度も自問自答を繰り返すことを勧めています。要は、「謙虚になれ」ということです。筆者と読者の間には、常に書きたいことと読みたいことの乖離があり、筆力が素人レベルを脱するには、この大河を超えることが必要と感じました。

私の場合、日常で書くのはメールとブログになります。
メールは自分の武器となるので、時間をかけ日頃推敲を重ねた後送るようにしていますが、メッセージを明確にしつつ、宛先の方にこれが伝わるか、ということを謙虚に考えていくこと。この姿勢を続けていきます。
またブログについても、毎回1つメッセージを考え、伝わるかどうか謙虚に考えていきます。

他、表現方法としては、文章は削る、削る、削るで読みやすくなることを取り入れます。つい冗長になりがちですが、思い切って削ることを心がけます。

また、抽象的な概念に名前をつけることもチャレンジしていきたいです。著者はベストセラー『「超」整理法』で、「神様ファイル」「君の名はシンドローム」など抽象概念に名前をつけ、「こみいった概念を上手く伝えるのに役立った」と言っています。まずはユニークに命名されたものにアンテナを張り、収集するところからです。
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週の風景

058 そもそもブーム

先週もオンライン研修3回、新規事業企画、そしてお客様や友人とのオンラインMTGなど、忙しくしておりました。

研修については3月は0回でしたが、4月からオンラインで再開して頂き、これまでキャンセルは1件もなく、本当にありがたい限りです。

企業活動も在宅ワークに慣れ、リズムが出てきたようで、GW明けからの動きが加速していると感じます。そして、4月は守りが主体だったと思いますが、この2週間でお話をした経営者の方々は皆一律に「攻め」をされています。サービスの自動化に舵をきる、人事向けオンラインセミナーを開く、新規事業を形にする、新中経の策定に入る等々。悲壮感などなく未来を見据え、どんどん動いています。私も負けずに熱く動いていきます。

最後に、コロナ後「そもそもブーム」が起きないかと勝手に思っています。

そもそも通勤って必要だっけ?
そもそもアポイントって必要だっけ?
そもそも資料って必要だっけ?
そもそもオフィス自体必要だっけ?

をゼロベースで考えると同時により深く、

そもそも何のために働いているのか?
そもそも何が自分はしたいのか?
そもそもどんな人生を送りたいのか?

など、ゼロベースで生き方、働き方を考えるようなブームが起きないかと思っています。私がより多く輩出したい「自分の道を自分で拓ける人」は、日常から離れ、自身の人生を根本的に見つめることスタートだからです。未来は希望しかない。今週も走ります。

宗興の本棚

第144週『職場学習論』

第144週
2020/5/24
『職場学習論』
中原淳著 東京大学出版会

「成長する職場とは?」

この問いの解を探求することで、研修参加者の部課長に、成長する職場づくりのヒントを伝えられると考え、手に取りました。

まず、職場における他者からの支援は「業務支援」「内省支援」「精神支援」の3つであると著者は言っています。その上で二つのことを研修で伝えられそうです。

一つは、「上司が単独で育成を担うな」ということです。本書の調査から、業務支援は上司が多く、精神支援は同僚・同期が多いという結果が出ています。しかし、実際の効果は、
1)上司からの「業務支援」は量として多いが、能力向上に結びついていない
2)上司があまり行っていない「精神支援」は、能力向上に結びついている
という、著書曰く「アイロニカルで興味深い結果」になっています。

ここから、職場の上司や上位者だけが単独で育成を担うのではなく、皆で育成を担った方が効果が高いことが分かります。具体的には、同僚・同期からの業務支援や、上司からの精神支援はインパクトがあるので、独自のメンター制導入や、失敗成功体験を共有する自然な場づくり、1オン1の上司の育成面談は、成長促進に実に有効であると考えます。

もう一つは、成長する職場ために「互酬性規範(ごしゅうせいきはん)の形成」が必要ということです。

職場学習風土の3要素は「互酬性規範」「オープンコミュニケーション」「学習資源」であり、
「互酬性規範」は、
「困ったときにお互い助け合っている」
「他者を助ければ、今度は自分が困っているときに誰かが助けてくれるように自分の職場はできている」
「他者を助ければ、いずれその人から助けてもらえる」
「人から親切にしてもらった場合、自分も職場の他の人に親切にしようという気持ちになる」
の4つの項目で表されています。

本書では、調査結果から互酬性規範をつくることが、全ての支援の質を高める。ゆえに、職場内のメンバー間に互酬性規範が認知されているかどうかが重要である、と結論づけています。簡単に言えば、皆が「ここは助けあいのある職場だ」と思っていることが重要なのです。

それでは、互酬性規範はどうすれば形成できるのか。それは、仕事の割り振りや、人の組み合わせを工夫するなど上司のふるまいが大きいと本書は言っています。

例えば、ある仕事をやったことがないA君とやっているB君を組み合わせて、きつい納期で仕事をさせると、助け合わざるをえない、といった実際の管理職のコメントが掲載されていました。

この辺りは、更に探求をしていきたいと思います。
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週の風景

057 続けることの大切さ

先週はプログラム制作や新規事業の企画&事業計画策定など、引き続き忙しい週でした。

オンラインプログラムは、今は対面の3倍ぐらい制作に時間がかかっています。個々の映像をオンオフにするタイミングをはじめ、参加者の一挙手一投足のより細かいシミュレーションが必要なこと。また普段ホワイトボードに書いている図や文言も含め多くをスライドにしていることが理由ですが、進取の気性があるのか新しいことをするのは楽しいですね。スキルが伸びれば、更にスピーディーに質の高いものを制作できると思います。

さて、先週は久々にあるNPOの先輩とオンラインで対話をしました。その先輩は神奈川県の県立高校で「探求の授業」を受け持ち、先生方の授業を行いサポートをする形式で見事に成果を上げていらっしゃいます。私も同じモデルで中学校に提供したのですが非常に難しかったので、その凄さや素晴らしさが分かります。

この県立高校一本にしぼったことや、NPOをやり続けて10年経つことなどをお聞きし、あらためて尊敬の念が湧きました。これまで決して簡単な道ではなかったことも存じており、乾坤一擲といえるぐらいのプロジェクトで成果が出ていることも本当に嬉しいです。

挑戦は勿論それ自体尊いことです。でもやはり「成果」を出さないと、ですね。そのためにもやり続けること。先輩の姿からその大切さをあらためて感じました。

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第143週『リーダーシップの教科書』

第143週
2020/5/10
『リーダーシップの教科書』
ハーバードビジネスレビュー編集部編 ダイヤモンド社

ブルームウィルのリーダーシップ研修を更に進化させるべく手に取った本。リーダーシップ研究が最も進むアメリカにおいて選ばれた10論文が掲載されています。積極的にプログラムに取り入れたい部分を掲載します。

第一章 「リーダーシップとマネジメントの違い」 1990年
ハーバード・ビジネス・スクール 名誉教授 ジョン P. コッター

・「変革を起こすことがリーダーシップの役割である」、
「複雑な状況にうまく対処するのが、マネジメントの役割である」と言い切っている点。リーダーシップ論の大家がリーダーシップ=変革と言い切るのは、私達も勇気をもらえます。

・「ただし、統制のメカニズムのように、正しい方向に無理やり向かわせるのではなく、達成感、帰属意識、正当な評価、自尊心、自分の人生は自分の手に握られているという実感、理想に向かって生きる力など、人間の基本的欲求を満たすことによって、である。このような感情が芽生えることで、人は深く感動したり、力強く行動したりできる。」
この一節はリーダーがビジョンを伝える際、情動に訴える必要性を補強してくれます。キング牧師の演説と共に、「景色」の明確化を促進していきます。

第4章 「共感のリーダーシップ」2000年
ロンドン・ビジネススクール教授 ロバート・ゴーフィー
BBC人事・社内コミュニケーション担当役員 ガレス・ジョーンズ

部下にやる気を出せるリーダーには、共通して4つの資質が備わっています。みずからの弱点を認める、直感を信じる、タフ・エンパシーを実践する、他人との違いを隠さない。

特に、みずからの弱点を認める部分は、メンバーを不安にさせないよう、できる部課長を演じる方が多いと感じるため、エビデンスとして伝えていきたいです。

また、最近の部課長は、メンバーに嫌わられたくない優しい方々が多い印象もあります。「厳しい思いやり」であるタフ・エンパシーもとても響くと考え、伝えていきます。

第6章 「レベル5 リーダーシップ」2001年
コンサルタント ジム・コリンズ

まあまあの企業を偉大な企業へと変革させるためには、「レベル5リーダーシップ」が必要であるという主張です。著者は、対市場平均6.9倍の利回り実績を残した11社に共通している特性として抽出しています。このレベル5リーダーシップは研修というより、私自身が進む道として大変参考になりました。

第8章 「自分らしいリーダーシップ」2007年
ハーバード・ビジネス・スクール教授 ビル・ジョージ
元スタンフォード経営大学院 講師 ピーター・シムズ
元ハーバード・ビジネス・スクール 研究員 アンドリューN.マクリーン
元シティグループ 執行役員 ダイアナ・メイヤー

・「リーダーとして成功する条件は存在しない」と言い切っているのが凄いです。自分らしさを貫くリーダーへの8つの成長ステップのSTEP4外発的動機と内発的動機は何か、の観点は研修の個人軸分析に取り入れてみようと感じました。

・「スタンフォード大学経営大学院の顧問委員化に名を連ねる75人に、『リーダーが伸ばすべき最大の能力は何か』と尋ねたところ、答えはほぼ一致した。『自己認識力』である。」これも個人軸を基軸とする私達の研修の論理補強となります。

現在この自分らしいリーダーシップを更に深堀するべく、別の著書を読んでいます。
ブルームウィルのリーダーシップ論を補強する強い学術的エビデンスとなりそうです。

以上です。学術論文は視野の拡張と、物事の深堀りを促進する素晴らしい材料です。何度も読み返します。
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週の風景

056 心身の健康を保つには

皆様、いかがお過ごしでしょうか。

先週もお客様との打ち合わせや、オンラインの個別コンサルティング、また新規事業の企画をするなど、忙しい毎日を過ごしておりました。

さて、特別なことはあまりやっていませんが、今日はコロナ渦中で心身の健康を保つため、意識的に行っていることをお伝え致します。

1.規則正しい生活
家族皆で決まった時間に起き、ラジオ体操をしてから仕事(子供は勉強)に入ってます。今のところ、体調を崩さないコツはこれですかね。

2.1日1時間程の散歩・週2回のランニング
ともすると外に出ない、運動をしない日ができてしまうので、ルーティンに組み込んでいます。これも家族皆で行っていて、散歩にも良い季節となってきました。ちなみにランニングは4月下旬から手づくりBuffを皆でつけています(マスクは高地トレーニングなみにきついので)。まるで泥棒(海賊)一家みたいな感じですが、周囲の視線にも段々慣れてきました。

3.週2回家族で映画
既に19本観ました。実はスターウォーズやジュラシックパークなど観ておらず、これを機会に観れました。全て楽しめて外れはなかったので、ディズニーやアニメ以外でも、子供とみてギリ大丈夫なおススメの映画教えます!

4.ニュースをみない
元々TVを見ないのですが、ネットニュースも朝と夜だけ軽くみてあとはシャットアウトです。余計なストレスがなく非常にいいですね。家族間の話題にもあえて出しません。

5.1日1回は対外的なコミュニケーション
NPOのメンバーの方々や、普段会えない方ともZoomで意識的にコミュニケーションしています。これはいいですね、社会とつながっている感覚が保てます。

最後に、今更ですが、4月当初参考になったサイトをお伝えしておきます。
「長期化する自粛…心の健康保つには?精神科医に聞く4つのポイント」
1点目1日1個は好きなことをやる
2点目食事・睡眠に気をつける
3点目ニュースを制限する
4点目意識的に人と連絡をとる
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/598735/

出口戦略もみえてきてWithコロナへと進む希望がでてきた感じです。
自粛の中で見えない心的ストレスもかかっていると思いますが、無理せずでも少しだけ積極的に進みましょう。

宗興の本棚

第142週『FACT FULLNESS』

第142週
2020/5/3
『FACT FULLNESS』
ハンス・ロリング著 日経BP社

2019年初頭に出版されたにも関わらず、今年もまだ書店に面陳列されていた本書。反響の凄さについ手に取ることになりました。

本書は、データに基づき、世界を正しくみることが主題です。

冒頭、質問1「現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?」
A20%、B40%、C60%
というような世界の貧困や人口、医療、教育などに関わる問いが13問出てきます。
皆さんは何を選びますか?

ちなみに私はAを選びました。答えはCです。これまでテレビや社会の教科書などから低所得国への偏った見方が形成されていることを痛感しました。

ただ、メディアの影響や、情報がアップデートされてないことだけがバイアス形成の根本の原因ではないと著者は言っています。著者は、講演などで上記の事実を伝えたとしても、引き続き同じ誤解をする人達を目の当たりにしています。そこから、世界を悲観的に捉え続けてしまう原因は人々に染みついた「ドラマチックな本能」と結論づけています。

著者はその「ドラマチックな本能」を10個に分類して、各章でその本能から起因する勘違いを正していきます。

簡潔に三つの事を書きます。

一つ目、世界は着実に良くなっているということが実感できました。世界の平均寿命は70歳であること、2100年の人口は110億人であり、伸びは鈍化するということ。世界中の一歳児の中で、なんからの予防接種を受けている子供は80%であることなど。人類の進化への「希望」を更に強く抱くことになりました。

二つ目、「可能主義者」という言葉が響きました。著書は人類の素晴らしい進歩について誰かに語るたびに、「楽観主義者」というレッテルを貼られてきたそうです。「可能主義者」はそのアンチテーゼとして著者が生み出した造語です。根拠のない希望や不安を持たず、更なる進歩が可能なはずと思う人のことで、自分もそうありたいと思う言葉でした。

三つ目、著書も言っていますが、先進国・後進国という言葉すら、上からみている証拠であであること。欧米諸国は上からの感覚を強くもっていることが伺えます。

最後に、世界は良くなっているが勿論問題がない訳ではなく、特に5つのリスクを心配していると著者は言っています。①感染症の世界的な流行②金融危機③世界大戦④地球温暖化⑤極度の貧困です。特に、①は「感染症の専門家のあいだではいまも、新種のインフルエンザが最大の脅威だというのは共通認識になっている。」とありましたが、今回の新型コロナの大流行を予言していたかのような、言葉に驚きました。
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