第142週
2020/5/3
『FACT FULLNESS』
ハンス・ロリング著 日経BP社
2019年初頭に出版されたにも関わらず、今年もまだ書店に面陳列されていた本書。反響の凄さについ手に取ることになりました。
本書は、データに基づき、世界を正しくみることが主題です。
冒頭、質問1「現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?」
A20%、B40%、C60%
というような世界の貧困や人口、医療、教育などに関わる問いが13問出てきます。
皆さんは何を選びますか?
ちなみに私はAを選びました。答えはCです。これまでテレビや社会の教科書などから低所得国への偏った見方が形成されていることを痛感しました。
ただ、メディアの影響や、情報がアップデートされてないことだけがバイアス形成の根本の原因ではないと著者は言っています。著者は、講演などで上記の事実を伝えたとしても、引き続き同じ誤解をする人達を目の当たりにしています。そこから、世界を悲観的に捉え続けてしまう原因は人々に染みついた「ドラマチックな本能」と結論づけています。
著者はその「ドラマチックな本能」を10個に分類して、各章でその本能から起因する勘違いを正していきます。
簡潔に三つの事を書きます。
一つ目、世界は着実に良くなっているということが実感できました。世界の平均寿命は70歳であること、2100年の人口は110億人であり、伸びは鈍化するということ。世界中の一歳児の中で、なんからの予防接種を受けている子供は80%であることなど。人類の進化への「希望」を更に強く抱くことになりました。
二つ目、「可能主義者」という言葉が響きました。著書は人類の素晴らしい進歩について誰かに語るたびに、「楽観主義者」というレッテルを貼られてきたそうです。「可能主義者」はそのアンチテーゼとして著者が生み出した造語です。根拠のない希望や不安を持たず、更なる進歩が可能なはずと思う人のことで、自分もそうありたいと思う言葉でした。
三つ目、著書も言っていますが、先進国・後進国という言葉すら、上からみている証拠であであること。欧米諸国は上からの感覚を強くもっていることが伺えます。
最後に、世界は良くなっているが勿論問題がない訳ではなく、特に5つのリスクを心配していると著者は言っています。①感染症の世界的な流行②金融危機③世界大戦④地球温暖化⑤極度の貧困です。特に、①は「感染症の専門家のあいだではいまも、新種のインフルエンザが最大の脅威だというのは共通認識になっている。」とありましたが、今回の新型コロナの大流行を予言していたかのような、言葉に驚きました。
(1052字)