宗興の本棚

第162週『最高の結果を出すKPIマネジメント』

第162週
2020/9/26
『最高の結果を出すKPIマネジメント』
フォレスト出版 中尾隆一郎著

LIFULL社の社外取締役である中尾隆一郎さんのノウハウを学ぼうと、手に取った本です。

今回新たに得た言葉としては「CSF」です。これはCritical Success Factorの略で最重要プロセスのことを指し、KPIは「CSFを数値で表したもの」と書いてあります。成果を上げるには、ビジネスプロセスの中で何がCSFかを見抜くことが重要と考えます。

本書より、CSFを見抜くには、二つのアプローチがあると整理ができました。
一つは、KGIを
①因数分解し定数と変数に分け、
②更にその項目をプロセス分解し、
③データ分析で設定する方法。

本書の例だと、下記です。
①売上=利用者数×歩留まり率×平均単価とし、利用者数と歩留まり率を変数とする。
②歩留まり率:認知→利用→企業紹介と分ける。
③データ分析をし、企業紹介において、1社より複数企業を紹介した方が成約になる確率が高いことが分かる。よって複数企業紹介をCSFとし、目標数値を設定する。

もう一つは、
①取引額の高い上位顧客の共通点を探し、
②その条件に沿った効果的な行動をCSFに設定する方法。

本書の例だと、
①規制変化があった業界、一定の規模以上、課題解決の自社ならではの提案ができている、の三条件に加え、ライトパーソン(正しい人)と商談ができている、ことが共通点として分かる。
②規制変化があり、一定の規模以上の新規対象企業をピックアップし、「対象企業ならではの課題解決提案」と「ライトパーソンへのアポ設定」をCSFとして、進捗率をKPIとする。

前々職の組織コンサル時代に、二つ目のアプローチを実施し、受注率を上げた経験があります。取引先企業を調べたところ、98%が自社の研修体験セミナーを受けていることが分かり、体験セミナーの参加者数をプロセス目標と置きました。本書に沿えば、CSFが体験セミナーの呼び込みであり、体験セミナーの参加者数がKPIです。

弊社の新規開拓について、営業はせず「紹介」のみであり、また急拡大も試行していないので、営業におけるKPI設定は今は不要かもしれません。しかし、参加者の成長変化や、顧客の収益拡大率など、プログラム提供におけるCSFやKPIは必要です。本書は難しいと思われがちなKPIを分かりやすく説明してあり、上記設定の際に活用します。
(951字)

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第161週『一流トップ15人の経営ビジョン』

第161週
2020/9/21
『一流トップ15人の経営ビジョン』
日本能率協会マネジメントセンター編 『人材教育』編集部協力

今年の読書テーマの一つ「ビジョン」。経営者がどんなビジョンを語るのか、興味があり手に取った本です。

ただ、本書のビジョンというのは、企業が成し遂げたい全体像というより、経営者が語る「自社の社員と、社員の成長を支える人事・人材開発への熱い想いと期待」のことを指しています。ビジョン探究というより、リーダーシップの探究に近いかもしれません。

印象に残った経営者の言葉を4つ書きます。

「夢にむかって一目散に進む時、人は最高のエネルギーを発揮する。」(唐池恒二 JR九州会長)

「大切なのは、人の心に灯をともすこと。」(岡本一郎 日軽金HD社長)

「経営理念からぶれないこと。そのうえで、細かい分析はいったんおいて置き、自分たちが何をしたいかという“主観”を大切にしてほしい」(川崎健一郎 VSN社長)

「社員には『夢』と『目標』をもってほしいと語り続けています。」(寺田千代乃 アートコーポレーション社長)

「ビジョンが可能性を拓く」というのが、私の大切にする考え方です。印象に残り線を引いた箇所は、この考えに近い方々の言葉でした。私の生き方、経営方針はやはりこれだなとあらためて確認できました。

どの経営者のお話も示唆に富んでいますが、中でも日軽金HDの岡本社長のお話は、灯をともすための具体的な施策などを語られていて強く印象に残っています。30代~40代との少人数座談会「座FIVE」、職場に誇りをもたせる企画を若手に考えてもらう「日軽金プライド」、描いた後のフォローを大切にする「次世代経営研修」など。これらは、「どうしたらこの人の心に灯をともせるかな?」ということをいつも考えていた結果、出てきた施策とのことです。

「会社に求められるのは、本人が『こういう人になりたい』という気持ちを持てる環境づくりをすることでしょう。」と言い切る岡本社長は、清々しく惹きつけられます。「ビジョンが可能性を拓く」という信条を経営で体現できるよう、一歩一歩進んでいきます。
(806字)

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第160週『「朝4時起き」で、すべてがうまく回りだす!』

第160週
2020/9/13
『「朝4時起き」で、すべてがうまく回りだす!』
池田千恵著 マガジンハウス

最近、起床時間が早くなってきました。通常6時台に起きていたのが、5時台やたまに4時台に目が覚めることもあります。これは一時的なことかもしれません。ただ、もしかすると40を超え歳のせいであれば、恒常的なものになるかもしれません。今行っている朝のルーティン以外に、朝の時間に何をして過ごすのが良いかアイデアが欲しくて手に取りました。

本書は私が20代のときによく読んでいた自己啓発書の類ですが、謙虚に読んでいると今読んでも参考になるものがあります。

1.結局は何でもよい
朝は脳が活性化するゴールデンタイム、とういことで筆者は仕事における段取り(準備)や、趣味の勉強に費やしていました。つまり朝の効率性の高さを利用するだけで、何に取り組んでも良いのです。

仕事において、9時から全力で走れるように事前準備をする、というのは基本原則です。現在、段取りなどは慣れたもので、ものの1分ぐらいで終わってしまいます。そこをもう少し丁寧に、一つ一つの深掘りまでやってみてもよいかなと思いました。

2.勉強も仕事も効率重視で
筆者は二浪して慶応義塾大学に合格しています。仮面浪人して合格した半年のスケジュールがとても参考になりました。7時~17時まで予備校で勉強し、その後は一切勉強しない。夜は好きな料理を作ったりテレビを見たりして、リラックスした時間を過ごしていた、のです。現役~一浪時代は、集中力がない中でも無理に勉強をするなど、長時間勉強した「ふり」をして、成績は一向にあがらなかったそうです。

仕事も勉強も、運動も同じです。集中できる環境で思いっきりやり、疲れたら休む。メリハリが大切ですね。著者の経験から確信しました。

3.大人の一言は毒にもなるし薬にもなる
中学2年のときに、担任の先生から皆の前で「千恵はIQが低い。IQが低いにも関わらず点数が良い。他の人達も努力するように」的なことを言われたそうです。その「千恵はIQが低い」という言葉は、ずっと著者の心にコンプレックスとして残り続けます。

そのコンプレックスがあったからこそ、努力をし続けたともいえます。しかし、やればできる人間だと思いたいから一流大学を目指した著者の姿は何とも痛々しいです。しかもようやく慶応に合格した後も、ゼミのグループワークで上手くいかないと、「IQの呪縛」でやっぱり自分はダメだと思ってしまう。そうすると余計に上手くいかなり、ストレスで拒食と過食を繰り返したそうです。

大人の一言が子供の心を傷つけ毒となりずっと残ります。一方、大人の一言が子供の深奥に「光」となってずっと残る例も多く耳にします。我が子にも特に言葉に気をつけて使っていきたいです。
(1099字)

たまには娘と。

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第159週『書くことについて』

第159週
2020/9/6
『書くことについて』
スティーブン・キング著 小学館文庫

「筆力強化」の第8弾は、ベストセラー作家スティヴン・キング氏の著書です。『アウトプット大全』の著書、樺沢紫苑さんが「必読」と強くすすめていたので手に取りました。

本書は小説家の書くことをテーマにしていますが、書くという行為に関して十分参考になるものがありました。

1.平易であること
「文章を書くときに避けなければならないのは、語彙の乏しさを恥じて、いたずらに言葉を飾ろうとすることである。」と著者は言っています。例として、「チップ」ですむところを「寸志」などと決して言わないようにとありますが、平明、簡潔を心がけるべし、ということです。これは今まで分析したベストセラーに共通するポイントであり、平易=やさしく、読みやすいというのは、筆力には欠かせない要素なのだと感じます。

私は類語辞典など調べて、知的でカッコイイ語彙はないか探すこともあります。「語彙に関しては、最初に頭に浮かんだものを使ったほうがいい。」と著者が言っているとおり、今ある語彙の中でピタッとくる言葉を使った方が、伝わりやすくなるかもしれません。

2.受動態と副詞を避ける
「下手な文章の根っこには、たいてい不安がある。」と著者は言っています。受動態は主体が責任を負う不安があるから使うものである。また、副詞は「入れないと読者にわかりにくいのではないか」という不安があるから使うものである、と言っています。極端な話、「憤って言った」「鳥のように叫んだ」などではなく、会話は全て「言った」で終わるのがよいとのことです。書き手の深層をあぶりだす、鋭い指摘だと感じます。

3.金言の宝庫
上記以外にも書くことについて「金言」といえるようなことが沢山詰まっていました。

「ドアを閉めてかけ。ドアをあけて書き直せ。」(リスボンの週間新聞編集長 ジョン・グールド 原稿をかき、完成させたら、あとはそれを読んだり批判したりする者のものとなる、の意)

「飛行機のなかで気楽に読めるかどうか、読みだしたらとまらなくなるかどうかである。」

「ストーリーというのは地中に埋もれた化石のように探しあてるべきものだ。」

「作家になりたいのなら、絶対にしなければならないことがふたつある。たくさん読み、たくさん書くことだ。」

また著者が幼少期に母親から言われた言葉、
「自分で書きなさい、スティーヴィー。(中略)おまえならもっといいものが書けるはずよ。自分で書きなさい。」
というのも金言だと思います。

実際に「私は覚えている。母の言葉に無限の可能性を感じたことを。」と著者は言っていますが、その後、自分の才を信じ書き続けたそうです。大人の言葉は子供にとって響くのです。
(1089字)