宗興の本棚

第159週『書くことについて』

第159週
2020/9/6
『書くことについて』
スティーブン・キング著 小学館文庫

「筆力強化」の第8弾は、ベストセラー作家スティヴン・キング氏の著書です。『アウトプット大全』の著書、樺沢紫苑さんが「必読」と強くすすめていたので手に取りました。

本書は小説家の書くことをテーマにしていますが、書くという行為に関して十分参考になるものがありました。

1.平易であること
「文章を書くときに避けなければならないのは、語彙の乏しさを恥じて、いたずらに言葉を飾ろうとすることである。」と著者は言っています。例として、「チップ」ですむところを「寸志」などと決して言わないようにとありますが、平明、簡潔を心がけるべし、ということです。これは今まで分析したベストセラーに共通するポイントであり、平易=やさしく、読みやすいというのは、筆力には欠かせない要素なのだと感じます。

私は類語辞典など調べて、知的でカッコイイ語彙はないか探すこともあります。「語彙に関しては、最初に頭に浮かんだものを使ったほうがいい。」と著者が言っているとおり、今ある語彙の中でピタッとくる言葉を使った方が、伝わりやすくなるかもしれません。

2.受動態と副詞を避ける
「下手な文章の根っこには、たいてい不安がある。」と著者は言っています。受動態は主体が責任を負う不安があるから使うものである。また、副詞は「入れないと読者にわかりにくいのではないか」という不安があるから使うものである、と言っています。極端な話、「憤って言った」「鳥のように叫んだ」などではなく、会話は全て「言った」で終わるのがよいとのことです。書き手の深層をあぶりだす、鋭い指摘だと感じます。

3.金言の宝庫
上記以外にも書くことについて「金言」といえるようなことが沢山詰まっていました。

「ドアを閉めてかけ。ドアをあけて書き直せ。」(リスボンの週間新聞編集長 ジョン・グールド 原稿をかき、完成させたら、あとはそれを読んだり批判したりする者のものとなる、の意)

「飛行機のなかで気楽に読めるかどうか、読みだしたらとまらなくなるかどうかである。」

「ストーリーというのは地中に埋もれた化石のように探しあてるべきものだ。」

「作家になりたいのなら、絶対にしなければならないことがふたつある。たくさん読み、たくさん書くことだ。」

また著者が幼少期に母親から言われた言葉、
「自分で書きなさい、スティーヴィー。(中略)おまえならもっといいものが書けるはずよ。自分で書きなさい。」
というのも金言だと思います。

実際に「私は覚えている。母の言葉に無限の可能性を感じたことを。」と著者は言っていますが、その後、自分の才を信じ書き続けたそうです。大人の言葉は子供にとって響くのです。
(1089字)