宗興の本棚

第172週『本日入社、本日オープン!』

第172週
2020/12/6
『本日入社、本日オープン!』
鶴蒔靖夫著 IN通信社

LIFULL Leadershipは、LIFULL HOME’Sのお客様である不動産会社様にもリーダー輩出と収益向上のお役に立ちたいと考えています。不動産会社様のことをよく知る必要があり、内実を理解するために手にとった本です。

本書は、センチュリー21という直営店をもたないフランチャイズチェーンの中で、企業グループ部門全国ナンバーワンを何年も受賞する「AIグループ」を取材したものです。

「住宅・不動産業における新たなビジネスモデルで事業展開をしているわけでも、世間の耳目を集めるような華々しい手法で経営を行っているわけでおないAIグループに、私が注目した理由は、坂本氏が率いるこの企業グループが、不動産の売買仲介において傑出した存在であるからにほかならない。」とあります。

本書では「スーパー不動産会社を生んだ5つの成功要因」という章がありますが、別の切り口から事業・組織それぞれ一つずつ、私なりの成功要因を書いてみたいと思います。

・コンスタントな集客力(事業)
不動産仲介業者に訪れる顧客は、「家を買いたい」という明確な意志をもつため、一定の確率で成約を結びつけることができます。よって、相応の集客力が維持できれば、収益は安定するとのこと。AIグループのいちばんの強みは「安定した集客力」とグループ会社社長が言っている通り、この部分が最大の強みなのでしょう。

その「安定した集客力」を生み出す秘訣が本書に3つ書かれていました。
①横浜駅西口周辺を重点として店舗展開
②インターネットの積極的活用
③センチュリー21ブランド
これら3つが上手くかみあっているとのことです。

この中で①横浜駅西口周辺を重点として店舗展開が、とても印象的でした。AIグループは横浜駅西口に5社店舗を構えています。ここで「5店」ではなく、「5社」というところがポイントで、全てグループの異なる会社が運営なっています。

AIグループは、あえて別会社にしてメンバーをそこの社長として据え、権限を委ねます。グループ会社は現在7社あり、グループ内で取り合いになることが浮かびますが、むしろ機会損失を防ぐ意図があるそうです。また、会社にすれば、独立採算制となり競争原理が働くと共に、社員の意欲が高まるのは間違いありません。

・DNAとしての誠実さ(組織)
本書では創業者である坂本繁美氏の人柄について多くの言及がされています。その内容は、
「誠実の人・坂本繁美」という章があるように、坂本氏の誠実さにまつわることです。

坂本氏の誠実さは全方位に及んでいると感じます。お客様に対しては勿論、実は一番難しい社員に対して誠実であることが印象深かったです。

社員に対しての誠実さについて、創業メンバーでグループ会社社長が語るエピソードがあります。坂本氏は前職で同じ会社だった際に、後輩を含め誰に対しても、坂本さんは常に「さん」づけで呼んでいたそうです。「くん」とも呼ばず誰に対しても対等に接していたとのこと。

社員に対して、自分の弟子や子分として捉えておらず、仲間として対等な感覚で接している証左です。

「もともと社員の定着率が悪く、人気業種とは言い難かった不動産業界において、社員が生き生きと働き、居心地よく感じられる会社をつくりあげた坂本の功績は大きい。」と著者が言っています。

坂本氏の誠実さがDNAとして会社の根幹となり、結果として人がやめずに定着率が高くなる。また社員が育ちイキイキと働ける。これが、競争優位の源泉となっていると考えます。

最後にまとめると、不動産業界でも成功の秘訣は他業界と変わらない、ということです。
(1477字)

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