宗興の本棚

第179週『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』

第179週
2021/1/31
『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』
リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著 東洋経済新報社

ずっと気になっていた本。ゆっくり自身の人生と照らしながら読もうと年末に購入しました。

本書は100年時代「厄災」ではなく「恩恵」を受けるための指南書となっています。

1.平均寿命データ
まず衝撃だったのが、平均寿命の予測データです。日本では2007年に生まれた子供は50%が107歳まで生きる。2014年生まれは50%が109歳まで生きる、とありました。ちなみに、私の世代1977年生まれは95歳~98歳です。100年時代が来ていることをリアルに感じました。ワンステージ60歳まで突っ走って燃え尽きる時代は終わりです。

2.イキイキした人生のポイント
本書から抽出したポイントは、以下の3つです。

①ステージを分ける:7年~10年ぐらいのイメージで細かくステージ分けをする

②若々しく生きる(活力資産):健康や家庭、友人関係を大切にし続ける

③変身を前提とする(変身資産):自分をよく知る、多様な人々と交わる、リフレッシュ(旅など)とスキルの学び直しを行うことなどを通し、自己認識と世界の見方を変更していく

②と③は当然連動します。そして③の旅いいですね。旅。

元々80歳、90歳になっても引退などせず、イキイキ仕事をしたいと考えていた私にとって、とても参考になる指南書でした。

最後に、「昔ながらの3ステージの人生では、人生の計画と自己内省はほとんど必要されなかった。確実性と予測可能性がある人生だったからだ。」とあります。100年時代だからこそ、自己を内省し、ありたい姿を描き続けることが必要と、強く感じます。
(646字)

宗興の本棚

第178週『コーチングの「基本」が身につく本』

第178週
2021/1/24
『コーチングの「基本」が身につく本』
学研プラス社 本間正人著

コーチングについても、よりよい課題図書が無いか探し続けています。特に今回は初歩的で分かりやすいものを書店で探す中で、これはと思う本を購入してみました。

私にとっての新たな発見を二つ書きます。

1.心情を把握する
「任せて任さず」とありますが、人を育てるコツを端的に表した良い言葉です。

体感値として「任せる」ことが難しいマネジメント職の方が多いと感じます。
そもそも任せられない、もしくは任せても放置するか、両極端な感じです。

本書では、適切にフォローすることの重要性を伝えており、具体的な3ステップである
①観察
②把握
③フィードバック
の中で、②について状況把握に加え、「心情把握」をする記載に目が留まりました。

「どうなっている」と「どう感じている」とメンバーの心情まで把握するのがコーチングらしくて素晴らしい観点です。

2.解決策を探る質問
①過去ベスト 「今まで一番うまくいった方法は?」
②未トライ 「まだ試したことないやり方は?」
③組み合わせ 「AとBを組み合わせたらどうだろう?」
④逆発想 「それとは逆に考えたらどうなる?」
⑤極論 「こんなのありえない、という方法は?」
⑥オーソドックス「一番オーソドックスな方法は?」

これら解決策を探る際の6つの選択肢・質問は、コーチングらしい問いかけで使いやすそうです。「王道で行ったら?」「奇策とすれば?」こんな風に自分で変えて使えそうです。

本書最後の「ケーススタディ10」は、現場でよく起こりがち、かつリアリティある対処法で、受講者の方々に特に有用なものと感じました。本書も課題図書になるかは分かりませんが、最後のケースを中心に、おススメ本としては推薦できると感じました。
(703字)

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第177週『図解モチベーション大百科』

第177週
2021/1/24
『図解モチベーション大百科』
池田貴将著 サンクチュアリ出版

モチベーションについて、よりよい課題図書が無いか探し続けています。書店で探す中で、これはと思う本だったので、購入してみました。

本書は100個の心理・行動実験を紹介し、そこから得る「モチベーション」の法則を紹介しています。今回はプログラム内で伝えやすい3つの実験を書きます。

■キャンディ効果
ショーン・エイカーが紹介する3人の心理学者による実験
<実験>
架空の患者の症状や病歴を読み上げ、経験豊かな医者達に診断してもらう。

Aチーム:何もしない
Bチーム:事前に、医療関係の記事を読んでもらう
Cチーム:事前に、キャンディをあげた(食べる食べないは関係なく)

<結果>
Cチームは、Aチーム、Bチームと比べ、2倍の速さで正確に診断した。

<結論>
「『いい気分』をつくってから仕事にとりかかってもらった方が、結果的に作業がはかどり、ミスも減る。」

<活用>
マネージャーが朝会を行い、気分をよくして皆がスタートする動機付けになります

■経験の自己と記憶の自己
行動経済学者ダニエル・カーネマンの実験
<実験>
被験者たちに携帯を渡し、数週間にわたった不定期にメールや電話などで、その瞬間瞬間の「幸福感」をたずねた。

<結果>
前提として、不定期に何度も調査することで、幸福感はその時々の「状態」というより、長く続く「特徴」であることが分かった。

「経験の自己」より「記憶の自己」
いまを楽しむことによって得られる幸福感より、
振り返ったときに、楽しかったと継続的に幸福を感じられるのは「記憶の自己」だった。

<結論>
「穏やかに快適に暮らす幸せもある。けど、あとで振り返ったときに『あのときは大変だったけど、よい経験だった』と思える方が、脳はより幸福を感じる。」

<活用>
「ずっと困難やストレス、変化を避け続けていると、『楽だったけど、もっとなにかできたのではないか』という苦しさに、じわじわと追いかけられることになります。」という著者の言葉が、いいですね。この実験は、成長企業に入り日々忙しくしている方へのエールに使おうと思います。

■感情表現
アメリカのある病院でおこなわれた実験
<実験>
Aチーム:「危険」「不可能」「無理」等のネガティブな言葉が数分づつスクリーンに映る
Bチーム:「できる」「可能」「価値がある」等のポジティブな言葉が数分づつスクリーンに映る

そのあと、唾液を採取して、ホルモン量を測定する

<結果>
Aチームは、コルチゾールが上昇
Bチームは、コルチゾールが減少
※コルチゾールはストレスを感じた時に分泌されるホルモン

<結論>
「触れる言葉、使う言葉によって、ストレス量は変化する。」

<活用>
ネガティブな言葉は、自他のストレスを増やすため、できる限りポジティブな言葉を使うこと。そのエビデンスとしてマネジメント職やメンバーに伝えられます。

以上です。

課題図書として組み入れるかは熟考が必要ですが、おススメ本としては推薦できるぐらい分かりやすく、説得力のある内容でした。
(1212字)


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第176週『使える脳の鍛え方』

第176週
2021/1/10
『使える脳の鍛え方』
ピーター・ブラウン、ヘンリー・ローディガー、マーク・マクダニエル著 依田卓巳訳

知能に重きをおかれているビジネスにおいて、能力を伸ばすことは根源的には脳科学の領域の話だと考えています。今回「どうすれば能力を伸ばせるか」という問いに、脳科学の知見から明確に答えたいと考え手に取りました。

まず、本書には「全ての知識と記憶は、われわれの神経細胞とその回路で起きる生理現象だ。」とあります。ここから能力向上には神経回路の変化が関係していると分かります。そのことを本書では「神経の可塑性(かそせい)」と呼んでいます。可塑性は塑性と同義で「変形しやすい性質。外力を取り去っても歪(ヒズミ)が残り、変形する性質。」(広辞苑)とあります。つまり能力向上の正体は、負荷をかけることで神経を変形させることと言えます。

その変形の仕方は二つです。神経細胞を増やすこと、神経細胞同士のつながりを強くすることです。

一つ目の神経細胞を増やすことについて、「海馬では生涯を通して新しい神経細胞が生み出される。」とあります。海馬は短期記憶や記憶の統合を司る部位です。研究では「関連学習」により海馬の神経細胞自体増え続けることが確認されているとのことです。

二つ目のつながりを強くすることについて、「われわれの知能の処理速度は神経のつながりの強さで決まる。」とあります。

ここは軸索(じくさく)と髄鞘(ずいしょう)がポイントになります。軸索は神経線維と呼ばれており、信号を伝達する導線みたいなものです。髄鞘は軸索を覆うカバーのようなもので、髄鞘の厚みがあるほど、電気信号の強さと速さが増すそうです。

「ピアノの練習量を増やすと、指の動きや作曲の認知プロセスと関連のある神経線維の髄鞘が増えた。」と研究であるように、練習を重ねるほど神経の伝達力とスピードが増し、能力が向上することになります。

今回神経細胞の増加と伝達の強化という、能力向上の根源的なメカニズムの理解が進みました。本書には科学的な分析による効率的な学習手段が書いてあるため、私達なりの学習の体系化にも役立てそうです。
(828字)