宗興の本棚

第180週『GAFAに克つデジタルシフト』

第180週
2021/2/21
『GAFAに克つデジタルシフト』
日本経済新聞出版社 鉢嶺登著

体感値で日本企業のDXの本気度は、コロナ渦を機に一気に高まった気がします。私も人材開発の分野で、DXを進めていきたいという思いは常々持っており、具体的なイメージをつけたく手に取りました。

本書は、デジタルシフトに遠い経営者を対象とした本です。著者の鉢嶺さんが自社のデジタルシフトをした実体験をもとに、すぐにできるノウハウまで落とし込んだものとなっています。

二つのことを挙げます。

まず、クリエイターの重要性です。顧客が「目で見て」「指で触れて」「耳で聞く」領域を整えて体験価値を出せる人材。いわゆるUI・UX(ユーザーエクスペリエンス)を担当する人材で、主にはデザイナーを指します。

「クリエイターの力いかんで企業価値や業績が大きく左右される時代に突入したと言える。」「これはいくら強調してもし足りない。」と鉢嶺さんが仰ったこともあり、相当深く心に残りました。

LIFULLもかなり以前からUI・UXの重要性を見越して、クリエイティブ強化に舵を切っています。LIFULL LeadershipのDXにもクリエイターの方々の力は必須であり、どうしたらクリエイターの方々がより力を発揮できるか、実際に協業しながら探究していきます。

もう一つは、オプト社の金澤社長についてです。金澤さんは34歳でオプト社に就任し、同社をものづくりの会社にシフトさせていきます。当初懐疑的だった会長の鉢嶺さんに「3年黙って見ていてくれますか。3年以内に結果を出しますので」と断言し、デジタルエンジニアの大量採用(市ヶ谷Geek★Night)と活躍維持(自主組織オプトテクノロジーズ)を成功させます。

また「オプトをものづくりの会社にする」と方向性を決めて、全社員700名を1回10名~15名に分けた1時間×40回以上の座談会を実施。同時に、現場のエンジニアチームを治外法権とするなど、覚悟を決めデジタルシフトを実現します。

リーダーの定義は、「自らビジョンを描き、自他を一致団結させる人」と定義しています。「しっくりくる」「捧げられる」ビジョンが描けることでリーダーは誕生します。そこに危機感や切迫感などの強烈な感情が入ると、一気にスピードが増します。久々に自社を活かしビジョンを実現させる素晴らしいリーダーの実例に会い、心が揺さぶられました。
(953字)

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