宗興の本棚

第184週『超一流の雑談力』

第184週
2021/3/21
『超一流の雑談力』
安田正著 文響社

学術的な書物は真理に近づくにはとても良いのですが続けると疲れます。たまには楽な本をということで手に取った本。トータルで1時間かからずに読めるぐらいの内容でした。こういった気軽に読める本でも気づきはあるもので、二点程お伝えします。

まず一つ目は、「開口一番は『よろしくお願いします!』から」。無意識に行ってはいるつもりでしたが、この一言は互いの距離を縮め、場の空気を明るくする力があると感じます。例えば、プログラム開始時、個別に「●●さん宜しくお願いします」というとぐっと距離が近づく感じがして、入りがとてもよくなります。
さわやかな「よろしくお願いします」はよい空気をつくる火つけ役になる、と著者が言っているように商談、プログラム開始時などに毎回意識的に行いたいと思います。

二つ目は、「お会計のときに店員さんとひと言話す」です。私は外食をした際、店員さんに「おいしかったです。ありがとうございました。」となるべく伝えるようにしています。ただ、著者が言うように単においしかったではなく「もうひとひねり」ほしいところだと感じていました。お店のひとがちょっと嬉しくなるひと言をかけるのは案外難しいですが、意識してやってみたいと思います。

本書の全38項目に通底する考えは「相手の聞きたいと思う話をする」ことだと思います。「意図のない質問では会話はまず盛り上がらない」に象徴されるように、雑談力は感性と理性の両方が必要です。
(605字)

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第183週『モチベーション3.0』

第183週
2021/3/14
『モチベーション3.0』
ダニエル・ピンク著 大前研一訳 講談社

こちらも組織人事のプロの方に「モチベーションはこれがいいですよね」と薦めて頂いた本。再読になるのですが「名著は何度も読む」ということで、今の自分の印象的に残った部分をまとめます。

今回一番大きいのは、
「満足感を得るためには目標設定だけでは十分ではない。正しい目標の設定が必要だ」
ということであり、
エドワード・デシ教授、リチャード・ライアン教授等の追跡研究から導かれた結論です。

教授陣はロチェスター大学の卒業予定者からサンプルとなる学生を選び、人生の目標についてたずね、卒業後1、2年後に学生たちの様子を調査しました。

結果として、目的志向型の目標(内発的目標)の設定をしいた人は、それを成し遂げつつあると感じている人は、大きな満足感と主観的幸福感を抱き、不安や落ち込みレベルはきわめて低かったそうです。

一方、利益志向型の目標(外発的目標)を抱いていた人は、目標を達成している人も学生時代よりも不安、落ち込み、その他のネガティブな指標が「強まった」そうです。

これらより「ある目標を達成しても幸福に影響を与えず、実際には不幸を助長する」と結論づけられました。

ライアン教授の言葉を引用します。
『豊かさを求めて外発的目標を高く掲げる人は、その豊かさを手に入れる可能性が高い。それでも、彼らはやはり幸せではない。』
『高い目標を書考えて達成する人が、不安や憂鬱に取りつかれる理由の一つとして、良好な人間関係の欠如が挙げられる。金儲けや自分のことに精一杯で、愛情や配慮、思いやり、共感など、本当に大切なことにかける余裕が人生にないのだ。』

目標設定は人の意欲を高める重要な手段です。ただ、意欲を高めるには、利益だけでなく、目的と利益を志向するハイブリッド目標が組織内ではベストではないかと考えます。ただ、目的と利益両方を志向した目標を設定しても、利益志向は強くなりがちです。よって日常的に目的に立ち返る仕組みを作ることが必要です。
(805字)

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第182週『ザ・ビジョン』(新版)

第182週
2021/3/7
『ザ・ビジョン』(新版)
ケン・ブランチャード、ジェリー・リン・ストーナー著 ダイヤモンド社

プログラムの課題図書である『ザ・ビジョン』の新版。読みかえしてみると、ビジョン創造のプロセスがリアルに感じられ、あらためて素晴らしい本と感じました。

旧版との大きな差異はなく、若干新しい項目が入たこと、「ビジョン創造の手引き」がついていることが特徴です。

本書は、ビジョン設定が難しく、やる気を引き出しにくい経理部のビジョンを例にしている所が秀逸だなと感じます。

「経理部の使命は、社内の人々に財務面での『安心』を与えることである。そのために正しい財務情報を、正しい人々に、正しいタイミングで提供する。
必要なときに正確な情報を提供し、あるいは助言することで、リーダーたちが賢い財務判断を下せるようにする。効果的な給与・会計システムを開発・維持する。法律で定められたあらゆる報告義務を正しく果たすことで、会社を守る。」
ここにはビジョンの構成要素の二つ、「有意義な目的」と「未来のイメージ」が入っています。

上記を「目的ステートメント」としていますが、この言葉がいいですね。ミッション(使命)ステートメントより、目的と言った方が、しっくりくる人も多い気がします。

今回一番強く思ったのは「価値観」に統一した方がよいことです。自組織の「目指す姿」をスタイル(行動指針)にしていたお客様もありますが、価値観の方がビジョン実現には役立つと感じました。

今回の経理部は「誠意、知識と専門性、説明責任、チームワーク」の4つにおいています。
価値観を明確にすると「人間の感情に訴える」「こだわるし、愛着がわく」「価値観に従って生きると誇りがもてる」「元気がでるし、わくわくする」ようになります。つまり「目的や未来のイメージを実現する原動力となる」わけです。

ちなみに、一つに絞った私の価値観=社是は「まっとうに誠実に」です。
(746字)