宗興の本棚

第193週『リフレクション』

第193週
2021/5/30
『リフレクション』
熊平美香著 ディスカヴァー・トゥエンティワン

一般社団法人21世紀学び教育研究所の理事長熊平さんの著書。当社団は私も理事になっています。熊平さんが提唱するOS21は21世紀型の学ぶ力であり、その核となるのがリフレクションです。OS21は幅広い概念ではありますが、リフレクションに絞ったことで世の中に普及するスピードも加速していると感じます。

今回は、オーセンテイックなリーダーについて、素晴らしい訳に出会いました。オーセンティックとは英和辞典でひくと「authentic:本物の、正真正銘の、真正の、真の」となっています。「authentic leadership」は、「自分らしいリーダーシップ」と訳されることが多いのですが、これまで中々しっくりくる言葉がありませんでした。

熊平さんの「オーセンティック=自分に限りなく正直である」という訳はこれまでで最高にしっくりくる訳です。「これだ」と琴線に触れました。この一文に出会うため本書を手に取ったと言っても過言ではありません。今後私共のプログラム内で「authentic leadership」は、「自分に限りなく正直なリーダーシップ」であると紹介したいと思います。

自分に限りなく正直になることは、自身の価値観に沿って生きる事です。「自尊・思いやり・受容&寛容・希望&情熱・自由&創造・真理」が今の価値観です。
(555字)

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第192週『できるリーダーは、「これ」しかやらない』

第192週
2021/5/23
『できるリーダーは、「これ」しかやらない』
伊庭正康著 PHP研究所

仕事柄多くのマネジメント職に接していますが、自らががんばり、任せられない方。任せるがメンバーの心を掴んでいない方は案外多いなと体感値で思います。いわゆる任せ下手の上司です。そんな方々に何かヒントになる良い本はないかと探す中で手に取った本です。本書が10万部を突破していることからも、いかに任せ下手で悩む人が多いかも分かります。

本書を通して、任せ上手と下手の区分けは、
①力の入れどころを変えること。
②任せると放任の違いを理解すること。
この二つに尽きると感じました。

任せると放任の具体的な違いは、
「部下がやっている作業を『具体的』に答えられる。」
「部下が感じる“不便・不安・不満”を『事実』で答えられる。」
になります。非同期・同期を問わずコミュニケ―ションを通してメンバーをしっかり把握できているのですね。これは現場で使え、マネジメント職がピンときそうです。

本書で一番印象に残ったのは「ボス充」という言葉です。本書ではリクルートマネジメントソリューションズの「ボス充実態調査(2017)」のデータが紹介され、「『ボス充』は武器になる」と結論づけていました。実際にサイトに行きましたので、調査結果を紹介します。

「多くの若い部下にとって、理想の上司は人間的な幅が広く、早く帰る人である」
「理想の上司(管理職)に関する結果をご紹介します(図表3)。対形式の項目に対して、どちらの特徴をもつ人物が理想の上司(管理職)かをたずねたところ、20代一般社員の方が『(仕事は生活の中心ではなく)仕事は生活の一部』(75.3%)、『(遅くまで仕事をしているのではなく)早く帰る』(75.3%)、『(仕事での専門性が高いことより)人間的な幅が広い』(60.8%)を多く選択していました。」
(引用 リクルートマネジメントソリューションズ ボス充調査#1 個人の働き方#2 https://www.recruit-ms.co.jp/research/2030/report/individual2.html)

若い世代には仕事人間の上司は魅力に映らないことが、はっきりしましたね。私共のクライアント企業様の多くは成長企業で上司は基本多忙です。このボス充調査の結果は、マネジメントの仕方を見直す一助になると感じます。
(942字)

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第191週『2040年の未来予測』

第191週
2021/5/15
『2040年の未来予測』
成毛眞著 日経BP社

元日本マイクロソフト社長の成毛さんの未来予測本です。信用度の高さで手に取りました。

今回一番ピンときたのは、お金のところです。

「そもそも、『老後2000万円問題』は老後のために『預貯金以外の金融サービスを使って老後資金をつくりなさい』という金融庁のメッセージだ。」という一文。

2000万円貯金するのはそんなに簡単なことではないと思います。人生100年時代の中で、お金のリテラシーを高め、投資にシフトしていく必要があるかなと感じていました。

先日、橋下徹さんが近著で「貯蓄だけの資産形成は難しい」「一般の人々も貯蓄から投資へとマインドを転換する必要があるだろう。」と言っていました。そして、今回成毛さんの一文と出会い、投資の必要性が確信になりました。

更に面白いのは、投資の必要性だけでなく、二人ともその国の株価指数に連動する投資信託を勧めています。成毛さんは日経平均やダウ平均に連動するよう運用している「インデックスファンド一択」と言っています。橋下さんも「ETF(上場投資信託)」を挙げています。複雑性がなく、初心者でも手が出しやすいからです。

僕はこれまで投資はしてきていませんが、僕の友人はサラリーマンをしながら新卒2,3年目ぐらいから株式投資をして、かなり大きな額を稼いでいます。いつの時代でも自分(や自分の家族)は自分で守ることが必要です。更にお金のリテラシーを高める勉強をしていきます。

もう一つ、衝撃的だったことは、アメリカの大学の学費。2019年度の私立大学の平均授業料は3万6900ドルで、日本の4倍以上するそうです。そして約7割の学生が学費のためにローンを組み、平均約4万ドルの借金を背負って社会に出るとのこと。確かに、うまく高給の職につけたらローン返済は可能ですが、つけなかった場合は「借金地獄」となります。

「アメリカでの大学進学は、富裕層以外ではすでにギャンブルだ。」と成毛さんは言っています。

凄い世界ですね。私は、自分の子供の教育が投資、ギャンブルとなることはしません。
(844字)

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第190週『人生を変える33の質問』

第190週
2021/5/9
『人生を変える33の質問』
ワタナベ薫著 大和書房

今年のテーマの一つは「自己分析手法の深化」です。今回はふと女性の視点を入れたくなり、書店で直感的に手に取りました。

本書は、女性向けの自己啓発書になります。意外や自己分析手法の深化という目的からはそれ、男性の私にとっても自己啓発的な気づきが多い良書でした。

読み進める中で「(豊かに生きる秘訣を)分かっているな~この方」とついつぶやいてしまいました。自分を実験体として何度も試行錯誤をしてきたから。また大変苦しい思いをしてそこを乗り越えたからなのでしょう。しっくりくる内容で、深みを感じました。加えて、女性ならではの文体の優しさ。暖かで包まれるような感覚で、気持ちよく読めました。

一つ大テーマとして今の私が取り入れたいと思ったことは、「余裕のある時間を過ごす」ことです。そのためにも「ゆっくり動くこと」を著者は進めています。身体の動きを変えることで意識に影響を及ぼす方法です。

例として「朝の歯磨きをするとき、歯を一本一本意識しながら丁寧に磨く」「たまには携帯の電源を切って一人でのんびりする」などが挙がっていましたが、歯を一本一本丁寧に磨くことは早速取り入れました。
後は、プログラム制作中はChatを切ること。
また、日中休憩する時は、スマホなどを見ずにバルコニーの美しい花々を見ること。
この3つを行っていきます。

「心の余白」をつくりながら日々を歩むことが私には大切です。

最後にベストセラー法則の「やりやすさ」について気づくことがありました。文中でワークがあっても、実践する人は少ないと感じています。その点、本書は質問形式でさらさらと書くことができました。
(675字)

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第189週『人は話し方が9割』

第189週
2021/5/4
『人は話し方が9割』
永松茂久著 すばる舎

今回は書き手目線でお伝えします。

60万部を突破し、コロナ渦を支えたビジネス書特別賞受賞ということで、ヒットの法則をさらにアップデートしたく手に取りました。

現在、ベストセラーを分析して出した吉田が勝手に考えるヒットの法則3.0は下記です。
(1)身近×関心の高いテーマ
(2)読みやすい(平易である、わかりやすい)
(3)おもしろい(ためになる、斬新である、好奇心にかられる、笑いがある)
(4)やりやすい(実践しやすい)

この中でも多くの人に手に取ってもらうには特に(3)おもしろい、が最重要と考えています。ここは貢献性×独自性、つまり「ためになる」×「これまでにない」が要素となります。

本書の(3)は「話し方は『聞き方が9割』」という主張です。「話し方において一番大切なことは、聞くことである」という著者の主張に読者ははっとします。話し方だと思っていたのが、実は聞き方が重要だったと。私も「そうか。そうだった、そうだった。」と膝を打つ感覚でした。

営業をする前は、売れる人は話し上手の人だと思っていました。しかし、実際に営業をしてみると営業で業績を上げる人は聴き上手であることに気づきました。もっというなれば、相手の困り事の本年を引き出せる人。これは今でも変わっていません。少し忘れていたそんなことを思い出させる主張でした。

本書は当然(3)だけでなく、その他の(1)・(2)・(4)も満たしていると感じます。では、本書がミリオンに届くにはあと何が必要なのでしょう。サンマーク出版の植木社長は「ミリオンセラーに方程式はない」と仰っていますが、その上で共通する項目を5つ挙げています。
1.驚きを生むタイトルになっている
2.心と体を癒し、健康に関わっている
3.それを読むことによって、読者自身が変われる
4.田舎でも売れる本になっている
5.女性に応援してもらえる本である

本書は上記2.4.5も微妙に満たしている気がします。例えば、「苦手な人と話す必要はない」「笑顔も立派な会話」など話下手と思っている人に癒しとなる内容も盛り込まれています。

植木社長はミリオンになるには上記に加え「何か」が必要とのこと。その「何か」は時代の風なのでしょうか。本書がミリオンセラーになったら分析してみたいと思います。
(939字)

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第188週『恐れのない組織』

第188週
2021/5/2
『恐れのない組織』
エイミー・C・エドモンドソン著 野津智子訳

「心理的安全性」について、まず浮かぶのはプロジェクトアリストテレスです。本プロジェクトはGoogle内で「最高のチームをつくる要因は何か」を発見するために、2012年に発足しました。そして5つの要因を見出しました。

下記、Google re:Workのサイトより引用です。

 心理的安全性: 心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。

 相互信頼: 相互信頼の高いチームのメンバーは、クオリティの高い仕事を時間内に仕上げます(これに対し、相互信頼の低いチームのメンバーは責任を転嫁します)。

 構造と明確さ: 効果的なチームをつくるには、職務上で要求されていること、その要求を満たすためのプロセス、そしてメンバーの行動がもたらす成果について、個々のメンバーが理解していることが重要となります。目標は、個人レベルで設定することもグループレベルで設定することもできますが、具体的で取り組みがいがあり、なおかつ達成可能な内容でなければなりません。Google では、短期的な目標と長期的な目標を設定してメンバーに周知するために、「目標と成果指標(OKR)」という手法が広く使われています。

 仕事の意味: チームの効果性を向上するためには、仕事そのもの、またはその成果に対して目的意識を感じられる必要があります。仕事の意味は属人的なものであり、経済的な安定を得る、家族を支える、チームの成功を助ける、自己表現するなど、人によってさまざまです。

 インパクト: 自分の仕事には意義があるとメンバーが主観的に思えるかどうかは、チームにとって重要なことです。個人の仕事が組織の目標達成に貢献していることを可視化すると、個人の仕事のインパクトを把握しやすくなります。
(出典 Google re:Work 
https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/steps/define-team/Goolge)

心理的安全性について、本書は何度も読み返し、まとめたいと思う学術書です。
今回は特に印象深かった2のことを書きます。

1.心理的安全性についての誤解
「心理的安全性は、感じよく振る舞うこととは関係がない。」
「職場で『気楽に過ごす』という意味では、決してないのだ。」
「高い基準も納期も守る必要のない『勝手気ままな』環境のことではない。」
「正直かつ率直に話すことを可能にし、ゆえに互いに尊敬しあう環境において確立される。」

心理的安全性は、メンバーを擁護し、成果責任を問うことなく、何となくふわっとした印象をもっている方もいると思います。高い成果に向け、正直かつ率直に話せる関係性と捉えることがとても重要と考えます。

2.心理的安全性の作り方
子ども病院のジェリー・モラスCEOの例を出して説明しています。
(1)土台をつくる
仕事のフレーミングをすること。事故が起きるのはシステムの複雑さにはなく、能力不足という思い込みを変えてもらいたい考えた。医療事故が常に起きている統計などを示す。「調査する→研究する」「ミス→事故・失敗」と言葉を変えるなどした。
(2)参加を求める
スタッフから依然としてミスの報告が少ない中、「ミスがあったか」ではなく、「あなたの患者は、あなたが目指したとおり、今週ずっと、あらゆることにおいて安全でしたか」と問うように変えた。そしてクロスファンクショナルを「患者の安全運転委員会」のチームを作った。
(3)生産的に対応する
「責任を問われない報告」という方針を明確にした。実際に報告があれば感謝をした。

心理的安全性のレシピを読んでいて気づいたがことがあります。それは、リーダーが「あなたたちが悪いわけではない。システムが悪いのだ」という根本的な考えをもつことが必須ということです。
(1081字)