宗興の本棚

第196週『人間主義的経営 』

第196週
2021/6/27
『人間主義的経営 』
ブルネロ・クチネリ著、岩崎春夫訳

ブルネロ・クチネリ社はイタリアのソロメオ村に本社を置く、高級カシミア製品メーカーです。全世界に130を超える店舗があり、2012年ミラノ証券取引所に上場し、2019年の売上は770億円・営業利益は105億円にのぼります。同社が掲げる「人間主義的経営」が世界中に知れ渡り、アマゾンのジェフ・ベゾス氏をはじめ、ツイッターやセールスフォースなど名だたるIT経営者がわざわざ見に来たそうです。

一番印象に残ったのは、クチネリ氏16歳の時の出来事です。クチネリ氏の一家は農村から町に引っ越し、お父様がコンクリートの製造工場の工員となりました。お父様は体の疲れやわずかな給料について不平を口にすることはなかったのですが、雇用主からの侮辱についてはしばしば愚痴をこぼし、悩み、時には涙をしたそうです。不当な扱いに傷ついたお父様を見て、クチネリ氏はとてもつらい気持ちになると同時に、「これからまだ具体的に決まっていなくても、自分は絶対に、倫理的にも経済的にも、人間の尊厳を守るために生きて働く」と固く決意をしました。

同社の「経済的倫理的な側面における人間の尊厳を守る労働」という理念を生み出した原体験がここにあります。理念を掲げても実際に経営でそれを実践するのは至難の業です。それでも言行一致で一つ一つ積み重ねてきたので、これだけ全世界に知れ渡っているのでしょう。

あらためて私共の社是である「まっとうに・誠実に」を大切にし、全方位で実行をしていこうと強く思いました。それは、社員に耳の痛い話をすることが必要なときも、誰一人傷つけることなく考えて接する。例えばそういうことです。
(679字)

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