第201週
2021/8/7
『愛とは、怖れを手ばなすこと』
ジェラルド・G・ジャンポルスキー著 本田健訳 サンマーク文庫
昨年からテーマにおいている「愛」の探究。エーリッヒ・フロム氏の『愛するということ』に続き、何がよいかを探す中、直感的に選びました。
本書では愛の定義は書かれていません。ただ心がやすらぐためには、愛に生きることが必要であり、愛に生きるには怖れを手ばなす必要があると著者は言っています。
一つ印象的なエピソードがありました。
著書は長年、慢性のひどい腰痛に悩まされていたそうです。そして自分の心が穏やかでないのは腰痛のせいだと思っていました。しかし、感情的なストレスにさらされているとき、とりわけ怖れを感じ、誰かに対する不満が胸にあるとき、腰の痛みが悪化することに気づきました。
そして、ゆるしを通して不満を手ばなすことを学んでから、腰の痛みは消えたそうです。
椎間板の異常があり、神経外科医から手術をすすめられたのですが、結局手術もせずにすみました。腰痛が心の平穏を壊していたのではなく、実は逆で、癒されないままの人間関係が肉体的な痛みを引き起こしていたのです。
痛みは心の痛みが身体化したもの、と捉えることができると思っています。実際に私も肉体的な痛みを抱えていますが、この痛みの大小は肉体的な疲労度だけでなく、精神の状態に大きく左右されます。
ゆるしを通して怖れを手ばなすことは、我慢する、大目に見るではなく、「人を裁かないこと」としています。確かに例にあったようにウエイトレスの対応が悪かった時、単に不満を感じるか、「色々プライベートであったんだろうな」と大らかな気持ちで見るかでは、心の平穏度は違ってきます。
「愛をもって人やできごとを見るという決意」をするという著書の言葉が胸を打ちました。
こう考えると、仕事でも子育てでも、怒ることはもとより、叱ることや、戒めることもナンセンスなように感じます。
本書を通して、愛に生きるとは、
「与えること×人を裁かずにいること(=人や自分に非があると考えないこと)。」
これに尽きるのではと思いました。
(813字)