宗興の本棚

第173週『ザ・ゴール』

第173週
2020/12/20
『ザ・ゴール』
エリヤフ・ゴールドラット著 三本木亮訳

20年前に話題になり、同期が「面白かった」と言っていた本書。当時はメーカー・サプライチェーン担当でもなかったので関係がない、と読まなかったのですが、LIFULL社外取締役の中尾さんが名著と薦めていらっしゃったので、手に取って読んでみました。

本書は「制約理論」を提唱したエリヤフ・ゴールドラット教授が、世に広めるために分かりやすく書いた本です。主旨を端的に言うと、「ボトルネックを見つけ、改善せよ」ということです。ボトルネックは能力や稼働率が低く、全体のパフォーマンスを規定しまう部分を指します。

二つのことを書きます。

一つは、企業の目標についてです。主人公が「生産性を高めなくては」と四苦八苦している中、恩師である教授に「企業の目標=ゴールは何か?」と問われます。そしてたどりついた答えは「儲けること」。この後、生産性を高めることは手段に過ぎず、社員や機械が休むことなく稼働していること=生産性が高い=善、という考えを捨て、ボトルネック探索を開始し始めます。

このように、ゴールに立ち戻ることは本当に重要です。私達のプログラムも目的が一つだけある、としています。それは「収益向上」です。これを伝えると受講者は「はっ」とすることが多く、現場実践に意欲が高まるようです。

もう一つは、制約理論についてです。本書では、面白い比喩が出ています。子供達の遠足(ボーイスカウトのようなもの)で、一番進むのが遅い子によって、全体の列のスピードが規定されている。鎖の輪の中で、一番弱い鎖によって、鎖の強度が決められている、という比喩です。

中尾さんが仰るように、この制約理論はスキルに置き換えることもできます。つまり、自分の一番低いスキルが自分の全体パフォーマンスを規定しているのです。その人の強みを活かす、強みを伸ばす、ということが叫ばれますが、確かにそれだけではパフォーマンスは上がりません。例えば、どんなに能力が高くても、遅刻癖のあるマネージャーにメンバーは完全な信用はおかないものです。この場合、遅刻癖がボトルネックになるため、その改善が必要となります。

また、チームのモチベ―ションも、一人低い人がいると全体のモチベーションがその人の点数になってしまう、と言えると思います。その場合ボトルネックである低い人と向き合い、モチベーションを高めていく必要があるでしょう。
(974字)

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