第62回
2019/9/8
「エリクソンの発達段階 10章 人格発達の基礎」
【まとめ】
フロイトが性衝動に力点を置いたのに対し、エリク・ホーンブルガー・エリクソン(Erikson, 1950, 1968)は、フロイトの発達段階を下敷きにしつつ、心理社会的な観点から新たな発達段階を提唱した。
1.口腔感覚期 信頼性VS不信
2.筋肉肛門期 自律性VS恥・疑惑
3.運動性器期 自発性VS罪悪感
4.潜伏期 勤勉性VS劣等感
5.青年期 同一性VS同一性拡散をはじめ8つ
6.若い成人期 親密さVS孤独
7.成人期 生殖性VS停滞
8.成熟期 統合VS絶望
「肯定的なもの」VS「否定的なもの」の葛藤がポイント。両者ともに経験し、そのバランスが幾分肯定的なものに傾くことが重要。
『具体的には、ポジティブな力がネガティブな力を上回って発達課題が解決されることにより、社会に適応できる健康的な発達を遂げ、社会内でより良く生きる力(人格的活力)が獲得されると考えられています。
ただし、ポジティブな力とネガティブな力がせめぎ合う状態は生涯を通して続くものであり、各段階でポジティブな力がネガティブな力を上回る経験を積み重ねることが大切なのであって、ネガティブな力が一時的にポジティブな力を上回っても人生が台無しになることはありません。
一方で、ポジティブな力が一時的にネガティブな力を上回ったとしても、その後、ネガティブな力に押しつぶされて社会生活に支障が及ぶ可能性もあります。』
(https://psycho-lo.com/erikson)
青年期の課題としてエリクソンは「自我同一性」の達成を挙げた。Ego identityの訳語だが、単にアイデンティティと言われることもある。自分とは何かを問い直し、自分なりの答えを見つけ出すことが青年期の課題である。
ちなみに、エリクソンは、青年期以降の発達に関してそれ以前の時期程、詳述していない。
【所感】
エリクソン教授はアイデンティの概念を提唱した方です。本文を読んでいて凄い方だなと感じます。驚嘆ポイントは二つです。一つは、発達が葛藤と葛藤の克服によって実現できることを示した点です。確かに本能からくる欲求のまま生活したのでは、社会生活に適応することができません。もう一つは自我同一性(同一性VS同一性拡散)を含め、青年期の8つにも及ぶ葛藤概念を提唱したことです。
最も強く感じることは、「葛藤があることは健全なのだ」ということです。例えば、潜伏期は丁度5歳~12歳の小学生時期にあたりますが、この時期に多少自己肯定感が下がったとしても、他人と比較をし、劣等感を感じることは健全なのだと捉えられます。あとは、過度に劣等感の方に引っ張られない(続けない)よう、少しづつ勤勉性の方に傾け、葛藤を越える支援をすることが大人の役目なのだと思います。
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