宗興の本棚

第88週「自己肯定感」育成入門

第88週
2019/4/7
「自己肯定感」育成入門
平岩国泰著 夜間飛行社

3月20日に発行され、放課後NPOアフタースクールの平岩さんからお送り頂いた本書。自己肯定感を育むための効果的な親の働きかけが書かれています。最近、私自身の子育てにおいて問題意識を感じており、その解決に向け大変参考になりました。

我が家の背景を説明すると、子供は10歳(小5)と7歳(小2)。これまで自己肯定感を育むために、承認による働きかけは多用してきました。しかし10歳の娘に対して、小3あたりから私と妻の承認頻度が減るようになり気になっていました。娘は主張が強くなってきており、承認頻度と反比例するように私や妻とも頻繁にぶつかるようになってきました。自分の意見を主張することは、成長の証であり大歓迎です。ただ、身勝手な主張(所謂わがまま)もあり、承認より叱責が多くなってきていました。

承認が減っている原因は、私達ができることの「量」に目を向けていたからと感じます。小3ぐらいまではできる項目が増えていましたが、それ以降はできる項目の量は変わっていない印象です。例えば、ひらがな書けるようになったね、九九がかけるようになった、逆上がりができるようになったと、小3まではできる項目の量が増え、目につきやすく褒めやすかったのです。

本書を読んで「少し前の自分と比べてあげること」がとても大切だと学びました。量ではなく「質」の変化に着目するということです。兄弟比較や、他人比較、過去の自分比較をしないという、本書にあった3つの比較をしないことは子供の自己肯定感を毀損しないために私も重要と考え気をつけてきました。ただマイナスを避けるではなくプラスを加えるという事について、褒めたくてもどうすれば良いか模索していたので、今回突破口が見つかり良かったです。

質の変化は見えにくいので、よく観察する必要があります。「ほめる親より気づく親」になること。「親の役割は子供の10分の1歩の『成長』を気づかせること」という言葉がとても琴線に触れました。早速、妻から聴くことや注意深く観察することを心掛けてみます。
(845字)

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第87週『ひとり旅完全ガイド』 TABIPPO監修 いろは出版

第87週
2019/3/30
『ひとり旅完全ガイド』
TABIPPO監修 いろは出版

カフェ・カンパニー社が運営する渋谷の「WIRED TOKYO 1999」。そこは、いるだけで自分がスタイリッシュになったと勘違いする程、素敵な世界が広がっています。蔦屋と協業しているカフェであり、この場で本書と出会いました。最初は「家族で行くハワイ」的なものが目に留まったのですが、なぜか違うなと感性の赴くまま選んだのが「一人旅」でした。

本書は全部で52問の質問に、情報を載せ丁寧に答えていく構成です。

例えば、
Q.16「バックパックを買おうと思うのですが、オススメってありますか?」
A.「TABIPPOのオススメを3つ紹介します。」
といって、バックパック選定のポイントやメーカー品3社の比較説明を写真付きで載せています。

Q.19「旅中って、どんな服装がいいの?」
A.「ユニクロさんにお世話になっております。『安い!』、『軽い!』、『機能万能!』」。
といって、男子や女子の基本の服装を写真付きで説明しています。

Q.28「現地に着いたら、旅ってどうやって始めるの?」
A.「目指すべき場所は、宿!騙されずに行けるかな?」
といって、現地の空港についてからの順や、乗り物の比較説明を載せています。
準備から現地の動きまで細かく一から教えてくれる、とても親切な内容であり、旅をするイメージがわきました。

またTABIPPO創業者など、旅好きの方々の「初めての一人旅」のコラムは、私の琴線に触れ、感動で胸が詰まることもありました。
「惰性で流されていく毎日から、旅に出て世界が広がった。」
「毎日見る世界、景色がとても輝いて見えた。」
「自分が今まで生活していた日本に対する考え方がガラリと変わった。」
「旅に出ると考える時間が多かった。そして、自分がどれだけ無関心で傍観者だったのかということに気づいた。」等々。彼らのように今私は世界を広げたいのだと思います。未知の世界に触れワクワクしたい。そして物の見方を新たにしたい。

私の最初の一人旅は卒業前に行ったネパールでした。今一人旅したらどんな景色が見えるのでしょう。まずは短く3泊4日ぐらいで、タイそしてアンコールワットに行ってみたいと思います。狙いは乾季の11月~2月です。
(899字)

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第86週『アウトプット大全』

第86週
2019/3/23
『アウトプット大全』
樺沢 紫苑著 サンクチュアリ出版

昨年の後半、大きな話題になった本書。「ビジネス書ランキング1位、25万部突破」という紹介を毎日東京FMで聞いていました。その時は食指が動きませんでしたが、社員の高橋が「とてもいいですよ」と薦めてくれて読むことにしました。

筆者は、人の成長はアウトプットの量で決まる、と言っています。逆にインプットはただの「自己満足」と言い切っています。そして、アウトプット(話す、書く、行動する)は運動性記憶であり、読んで覚える暗記の意味記憶とは異なり、身につきやすいとのことです。

また、コロンビア大学の心理学者アーサー・ゲイツ博士の実験を出し、成長にはインプットとアウトプットの比率を3:7とするのが丁度よいと言っています。実験では、小3から中2までの100人以上の子供達に「人名年鑑」に書かれた自分物プロフィールを9分間で覚えるよう指示。グループ毎に覚える、練習するの時間割合を違えて結果をみたところ、覚える時間に40%費やしたグループの得点が一番高かったそうです。また年長になると覚える時間に約30%の時間を費やしたグループが高得点だったのこと。

成長におけるアウトプットの重要性は認識していましたが、このように脳科学、生理学的な見地から伝えられ認識に深みが増しました。

加えて、引用された学術研究は、有用なものが多く、
ザイオンス効果ではコミュニケーションの質より量の重要性を、
ヤーキーズ・ドットソンの法則では、適度な緊張がパフォーマンスを高めることを、
ハインリッヒの法則では、ヒヤリハットを重視するリスク管理の重要性を
イリノイ大学の長寿研究では、感謝や幸福度の大切さを、
それぞれ示しています。早速登壇時に、参加者にも伝えていきたいと思います。

「へえ」が沢山ある本でした。ベストセラーの条件の一つは「へえ」が沢山あることかもしれません。
(760字)

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第85週『マザー・テレサ あふれる愛』

第85週
2019/3/16
『マザー・テレサ あふれる愛』
沖 守弘著 講談社文庫

マザーテレサの名前は知っていても詳細の活動は知りませんでした。ビジネス書が続いたため、この機会にと思い手に取りました。著者は写真家であり、マザーテレサの貧民救済活動を撮り続け、写真集や書籍を上梓し彼女の活動を日本に広めてきた方です。

マザーは1948年にインド、カルカッタのスラム街に入ります。死に瀕している人々のために「死を待つ人の家」というホスピスを。親に見捨てられた乳児や幼児のために「孤児の家」を。ハンセン病者のためには働くことができる「平和の村」を。そしてスラムの飢えた人々には毎日の食べ物を提供していきます。エピソードの中では、行き倒れで悪臭を放つ老婆を抱き上げ病院にかけあう話、泥水の中で死を待つだけの5歳児を洗浄、酸素吸入、輸血をし、生き返らせた話などが強く印象に残っています。

まず読みながら一番強く感じたことは「この世の地獄」があることです。灼熱の太陽のもと、極度の栄養失調でやせ衰えた大人や子供が多数路上で生活し、連日数十人もの人々が路上で死を迎える。ゴミ箱に捨てられ死んだ嬰児の死体を野ネズミの群れが食い荒らす。本書に描写された風景1970年代後半のものであり、今から40年ぐらい前のこと。ただ、もしかしたら、まだこのような場所が世界に散在しているかもしれない。こんな地獄のような世界がまだあるのかと驚愕し胸が苦しくなりました。

この地獄の中で一心に活動してきたマザーから「同じ人間か」と思うほどの信念の強さ、純度の高さを感じます。マザーは「人間にとってもっとも悲しむべきことは、病気でも貧乏でもない、自分はこの世に不要な人間なのだと思いこむことだ。」という信念のもと、長きにわたり人々に安息をもたらしてきました。著者が「あなたのヒューマニズムを写真に記録し、日本に広めたい」と言った時、マザーは、「自分は社会福祉家でもなければ、慈善事業家でもない。ただキリストのためにやっている。英雄視や伝記を書くのはお断りだ」と、強く釘を刺されたそうです。この信念が世界中に波及し、マザーが設立した「神の愛の宣教者会」のメンバーはマザーが逝去した1997年時には4,000人を数え、123カ国の610箇所で活動を行っていたそうです。

ふと世界平和を公言し、本気でその実現に取り組んでいるLIFULLの井上さんが思い浮かびました。マザーの信念と純度の高さに触れ、起業し丸6年経った今、もう一度自分の使命とした「自分の道を自分で拓ける人を創る」を問い直そうと強く感じました。

最後にマザーの言葉を記載します(別書からの引用が掲載されていました)。
『「今日の最大の病気は、らいでも結核でもなく、自分はいてもいなくてもいい、だれもかまってくれない、みんなから見捨てられていると感ずることである。最大の悪は愛の足りないこと」』
(1159字)

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第84週『日本を動かす「100の行動」』

第84週
2019/3/10
『日本を動かす「100の行動」』
堀義人+G1政策研究所著 PHP社

成長社会から成熟社会へと進む日本。時代の移り変わりの中で、様々な問題が表出してきています。私の専門領域である教育という枠を超え、日本全体の問題を俯瞰しそれぞれの問題に対して具体的な意見を持つことを目的に本書を手に取りました。今回は「100の行動」のうち、特に印象深かった二つの政策を列記します。

まず、医療費増大に対する政策です。本書に医師数の国際比較表が載っていますが、人口千人当たりの医師数は日本が2.2人で、米国の2.4人、英国の2.7人と比較しても顕著に低いわけではありません。一方、平均在院日数は米国が6.2日、英国が7.7日に対し、日本は32.5日。年間外来受診回数(年間)も、米国3.9回、英国5.0回に対し、日本13.1回と突出した数値となっています。ここから、日本は医師の数が少ないのではなく、患者の数が多いことが分かります。そして患者を減らすために、予防・健康ケア医療への転換が重要になると本書は主張しています。具体的な政策として、健康でいることに対するインセンティブを設け、保険料の差別化等を行うなどは思わず膝を打つような政策であり、発想を換えて臨むことの重要性を感じました。

もう一つは道州制の導入についてです。これはG1目玉の政策であると考えます。都道府県を廃止し、10の「道」と2の特別区を置き、20~40万人からなる300程度の基礎知自治体に再編する「廃県置道」。道州制は中央と地方の役割をはっきりさせ、地方分権を徹底する政策です。少子高齢化により、行政サービスを統廃合して効率化する必要性。そして、地域の多様化の進展により、各地域に見合ったサービスの必要性が背景となります。確かに中央政府が、外交、国防、司法など国家全体に関わる事項に専念できるのは大きなメリットですし、地域主権により政策決定、実施スピードが高まるのも間違いないと思います。ただ、この道州制は、国民がメリット(必然性)を感じにくい政策です。大阪が都になり、そのメリットを府民が享受、実感することが、実現機運が高まる突破口になる気がします。

4年かけて政策としてまとめた著書の熱意と行動に敬服します。正直、日本という大きな枠組みの政策はまだ距離が遠いものが殆どです。ただ、大局観を養うのに役立ちましたし、都度「日本」の大局を考える参考書として活用していきます。
(975字)

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第83週『スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン』

第83週
2019/3/3
『スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン』
カーマイン・ガロ著 井口耕二訳 日経BP社

講師をする際により響くプレゼンテーションをするにはと考え、手に取りました。本書は、スティーブジョブズ氏が行った新製品発表のプレゼンテーションを分析し、18のテクニックとしてノウハウ化したものです。著者は同氏を「聴衆を魅了することにかけては世界一」と言っています。その中で特に印象深かったテクニックを列記します。

シーン3「救世主的な目的意識を持つ」。ジョブズ氏のプレゼンは「現実歪曲フィールド」となり、まるで催眠術にかかったように聴衆を魅了します。これは製品への情熱がたっぷりしみ込んだ磁力があるからと著書は言っています。そして世界を変えるというビジョンに突き動かされているとも。

結局ここに尽きると思いました。私が提供しているライフスキル教育も「情熱をもてる未来を描く力」を養うものです。情熱が最重要。成熟社会の中でここにたどり着ける人をいかに増やすか、これが私の使命であり、情熱の重要性を再確認できました。同時に、自身のビジョンへの情熱を自問する契機となりました。ホームレスから伝説の株ブローカーになったクリス・ガードナー氏。どうしてそこまで頑張り続けられたのかという問いに『大好きなこと、どうしてもやりたいと思うことが見つかれば、ああもう1日、それができると太陽が昇るのが待ち遠しくなりますよ』とガードナー氏は答えたそうです。朝が来るのが楽しみで楽しみでしょうがない。自分はそのような状態なのか。そうではないとしたら、なぜか。「どこに行きたいのかは、心が知っている」とジョブズ氏は言っていたそうです。就寝前の瞑想の他に心との対話を増やしていきます。

シーン8「禅の心で伝える」。要は、簡素にということです。ジョブズ氏は箇条書きは使いません。スライドは全てたった一言、もしくは画像のみです。ETICの社会起業塾に応募した際、文字だらけの最終プレゼンで落選しました。落選理由はプレゼンだけではいですが、パワポの作り方を今後がらっと変えます。この他にも飽きが来ない10分ルール、分かりやすい3点ルールなど、登壇時にすぐに使える有用なテクニックが多くありました。現場で使い魅了度を高めていきます。
(894字)

 

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第82週『日本の歴史をよみなおす(全)』

第82週
2019/2/23
『日本の歴史をよみなおす(全)』
網野善彦著 ちくま学芸文庫

今年から特に意識をしたいテーマが「教養を深めること」。自身の専門領域の下支えとなる文化的な知識、能力、品位を磨いていきたいと思っています。教養の中でもより深めたい領域は様々ありますが、まずは日本の歴史と文化からと考え本書を手に取りました。

著者は独自の研究からこれまでの日本史の通説に異論を展開しており、「網野史観」とも呼ばれています。本書には好奇心をそそる多くの事実と主張があったのですが、その中で特に興味深かった二つを挙げます。

一つ目は、「日本」という国号について。この国号は、他国でよく見られるような、王朝名ではなく、王朝を建てた人の部族名でもない。そして地名でもありません。そして「ひのもと」と読むとすれば、東の方向ということなり、中国大陸を強く意識したものと捉えることができます。そして、太陽信仰を基盤に、太陽神の子孫という神話を持つ「日の御子」天皇の支配しうる国を示すものとしてつけられたと筆者は主張しています。

更に面白かったのは、どこまでを日本と指すのかという視点です。日本という国号は、701年の大宝律令制定時にはじめて使われたと言われています。しかし著書曰く、これは畿内を中心にできた律令国家の国号であり、北海道や、東北、さらに沖縄、南九州などは日本に入っていない。中世に入りようやく東北・関東も「日本国」に入ったと考えられ、ゆえに地域によって日本という国号、また深く結びつく天皇に対する考え方も非常に異なると考えた方が良いと筆者はいっています。

もう一つは、百姓=農民ではないという主張が興味深かったです。関山直太郎さんの『近代日本の人口構造』では、諸士9.8%、百姓76.4%、町人7.5%となっています。しかし、百姓は決して農民と同義ではなく、たくさんの非農業民を含んでいます。その根拠は奥能登の時国(ときくに)家の調査です。時国家は船を持ち、製塩、製炭なども行っており、農奴を駆使する大農場経営者ではないとのことです。また、土地を持たない人は水呑百姓と位置付けられ、能登最大の都市輪島は水呑が71%となっています。しかし調査によると実情は漆器職人、そうめん職人、廻船人などが沢山いて、土地を持てない、ではなく持つ必要がない人が多くいたと主張しています。しかも能登が特別ではなく、同様の事例を多数挙げています。

私自身、日本は「全国」と捉えていたし、昔の日本は「農民が大多数」と思っていたので、目から鱗であり、著者のクリティカルシンキングの凄さに感嘆です。

この他にも天皇は天皇職という職名であることや、女性はもともと力をもっていたなど、著者は私の思い込みと異なる見方を投げかけてきます。あらためて「それ本当か?」という視点とそこから生まれる好奇心を大切にしたいと感じました。
(1146字)

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第81週『成人発達理論による 能力の成長』

第81週
2019/2/16
『成人発達理論による 能力の成長』
加藤洋平著 日本能率協会マネジメントセンター社

私の専門領域である人材育成や能力開発です。これらの根底にある大切な問いは「人はどのように伸びるのか」。コーチングをはじめとした手法論的なアプローチではなく、人間の発達に関する生物学的なメカニズムにたどりつきたいと考え、本書を手に取りました。

本書は、人間の知性や能力の成長プロセスとメカニズムを専門的に扱う「知性発達科学」の知見を紹介しています。その中ですぐに活用しようと考えた二つの項目を記載します。

まず一つ目は、「意識の光」です。何かの能力を伸ばしたいときに、まず行うべきことは伸ばしたい能力を特定することであり、その行為を「意識の光」を当てると著者は表現しています。身体を鍛えるときに、どの筋肉を鍛えているのかを意識しながらトレーニングに励むか否かで、効果に大きな差が出ることが実証研究で明らかにされているそうです。

「意識の光」という表現が私にはとてもしっくりときており、早速私が行うリーダーシップやマネジメントトレーニングの中で使っています。具体的には人材育成のPDCAの回で、Planの部分の重要性を伝える際、そのエビデンスとして本書と共に「意識の光」を紹介しています。

二つ目は、「ニューウェルの三角形」です。これは身体運動学の研究者であるカール・ニューウェル氏が提唱したモデルです。何らかの能力を高めようとする場合、「人・環境・課題」の3要素と相互作用を常に考えなければならないことを指摘しています。簡潔にまとめると、それぞれの制約条件を考慮せよと置き換えてよいと思います。人はその人の能力限界を考慮せよ、環境は物理的、文化的な制約を考慮せよ、課題は種類と難易度を考慮せよということです。

この三角形はトレーニングの制作や実施をする際にとても参考になる考え方です。特に「環境」は見落としがちになります。例えば、部下への頻繁な声掛けがモチベーションを上げるのに役立つとしても、クライアント先にメンバーが常駐している環境では、マネージャーは直接頻繁な声掛けはできません。これまでも人や課題はかなり意識してトレーニングの構築をしてきましたが、環境についても参加者の状況インプットを多くし、より一層制約の想像を働かせるようにしていきます。

神経がどうつながるか等の生物学アプローチではありませんが、その次の抽象次元となる発達のメカニズムの専門書です。上記二つだけでなく、その他も活用したいと考える理論や手法が数多く紹介されていました。一回で終わりではなく、能力開発の「辞書」として都度活用していきたいと思います。
(1055字)

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第80週『ゲームの変革者 ~イノベーションで収益を伸ばす~』

第80週
2019/2/9
『ゲームの変革者 ~イノベーションで収益を伸ばす~』
A・Gラフリー ラム・チャラン著 日本経済新聞出版社

昨期からあるIT系のクライアント様にイノベーションをテーマにトレーニングを提供しています。一人でも多くの参加者がイノベーティブな事業、製品、サービスを生み出せるよう知見を増やすために手に取りました。

アリエール、パンパース、パンテーン、ファブリーズなど、有名ブランドを数多く創出し続けているP&G社。P&G社にはイノベーションを生み出す土壌となる文化があり、それは「消費者がボス」という言葉に集約されます。この「消費者がボス」を実践する施策の中で、私が一番印象に残ったのは、お客様の「リアル」を知るプログラムです。P&Gは最初に市場調査部門をつくった会社であり、データ収集や市場分析を徹底的に行っています。ただ、2002年までは、顧客はデータを提供してくれる存在でしかありませんでした。2002年から消費者密着型の方法に変え、代表的な「生活してみる」「働いてみる」という二つのプログラムをつくりました。

「生活してみる」は社員が消費者の家庭で数日過ごす企画です。この「生活してみる」の成功例がメキシコ市場です。メキシコ市場で国民の60%を占める低所得者層に対してダウニーのシェアは低迷をしていました。P&G社は2002年に「生活してみる」のプログラムを進め、幾つかの決定的な事実を発見します。まず、メキシコには水の問題があるということです。僻地に住む人は、いまだに地域の井戸や水道ポンプまでいってバケツで水を運び、また都市部でも一日数時間しか給水されないところが多かったのです。一方で、低所得者層の女性は、洗濯を本当に真剣に考えています。家族の身だしなみを整えることに並々ならぬプライドをもち、アイロンも頻繁にかけることが分かりました。つまり、洗濯が一番多くの時間をかける重労働であることがはっきり分かったのです。

こうして「洗濯を楽にして水量を抑える」という解決すべき問題点がはっきりし、洗う・柔軟剤を入れる・すすぐの3ステップですむ商品「ダウニー・シングル・リンス」を出しました。これは発売と同時にヒットとなりました。

三現主義の話と共に「お客様の『リアル』を知ってください。」と常々私は参加者に言っています。高名なP&G社でさえ、これだけリアルを知る努力をしているということは、参加者の背中を押す材料になりそうです。

最近読書のペースに、レポートが追いついていません<苦笑>。何冊か読了したものがたまっています。本書も11月末には読了していました。
(1022字)

宗興の本棚

第79週『トップリーダーが実践している 奇跡の人間育成』

第79週
2019/2/2
『トップリーダーが実践している 奇跡の人間育成』
松尾一也著 きずな出版

私はずっと「人間力」を大切にしています。盟友の石川英明に言わせると、学生時代私は「『人間力』でしょ!」しか言っていなかったそうです<笑>。著者は講師ネットワークの会社を経営している代表です。実は2年前に本書を購入したきり積読状態になっていました。最近何かふと「人間育成」という部分が気になり、手に取りました。ただ、自己啓発に近い同種の本は何冊も読んでいるので、正直どうかなと思う部分はありましたが、身に染みる部分がありました。

一つ目、「心のコップ」について。コップが上に向いてないと何も注げないように、人も心のコップが上を向いていないと、何も聞こえないし、吸収することがない。一言でいうと人間育成には「素直さ」が大切ということですが、『人を育てる側も、心のコップをきちんと上に向けてもらうように、その状況を整える工夫が必要』と著者は言っています。教育提供者として、研修参加者、塾生、そして社員に心のコップをまず上を向けてもらえるよう注力することが必要と痛感します。特に「研修なんて参加したくない」、「勉強なんてしたくない」、「上司から注意なんて受けたくない」と基本的に被教育側はコップが下を向いていることが多いです。上に向けてもらうためにも、傾聴と共感から入る。ここをあらためて行っていきたいと強く認識しました。

二つ目は、「評価基準」について。『勝ち組の評価尺度には「収入」「地位」「有名」「エリート」がありますが、人間育成における評価基準は、「心の平安」「信頼する仲間がいる」「人間的成長を続けている」。この三本柱です。』と著者は言っています。とても好きな一文です。資本主義から次の時代へと移行が進む中、人が重要視するものは進化しているはずです。私自身、心の平安は以前より大分進み、一緒にビジョンを目指す信頼する仲間ができ、日々成長も実感できている今、これを継続していくことが重要とあらためて認識しました。そのための鍵は私の場合は感謝です。「感謝の筋力」を毎日鍛えていきます。
(839字)