宗興の本棚

第68週『逆転のメソッド』

第68週
2018/11/17
『逆転のメソッド』
原晋著 祥伝社

青学、原監督のもう少し突っ込んだメソッドが知りたく手に取った本。結論としては、大半はサラリーマン時代などこれまでの経緯に割かれ、前著に重なっていました。新しい情報が乏しく失敗かなと思いきや、それでも心に残る部分があり二つ列記します。

今回一番参考になったのは、原メソッドの中核である目標管理シートの具体例です。本書には三代目山の神となった神野大地選手のシートが載っていました。たった1枚の紙に、目標が大きく書いてあり、あとは具体案が8つ箇条書きで書いてあるだけ。もっと複雑なものかと思いきや、本当にシンプルなものでした。原監督は練習日誌と合宿プロジェクトシート、試合結果報告書、一分間スピーチなど「自分で考え表現すること」を重視しています。咲心舎でも試験後の振り返りシートや、もっかんシートなど同様の取り組みを行っていますが、「シンプルに一枚にまとめる」事は大切だなと感じます。子供の処理力を鑑み、この辺り英克と浩子とも話して、シンプルな目標設定の仕方を探求していきます。

二つ目は、ステージ論です。
ステージ1「私とあなた」規則正しい生活を理解し、実践できるようになる段階。
ステージ2「1対多」ひとまとまりになり、監督が引っ張る段階。学年長制度を導入。
ステージ3「ホールディング制」オブラートに包みこむ指導する段階。
ステージ4「成熟期」指導者である監督が後ろにまわり部員たちの包み込むように指導する段階。

青学が初優勝できた理由は一言では難しいのは、11年の年月の格闘の歴史があるからです。そして「ステージ1のレベルでいくら自主性を尊重しても結果でないし、うまくいかない」と原監督は言っています。このステージ論は咲心舎の発展に二つの観点で取り入れていきたいです。一つは、学年毎の発展モデルづくり。中3の1学期には自分で目標が立ち、自学が完全にできる状態(ステージ4)を目指すなど。もう一つは、咲心舎自体の発展モデルづくり。中経に似ていると思います。丁度咲心舎の理念の再構築をする予定なので、ビジョンと共に皆で議論して考えていきます。
(864字)

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第67週『魔法をかける アオガク「箱根駅伝」制覇までの4000日』

第67週
2018/11/10
『魔法をかける アオガク「箱根駅伝」制覇までの4000日』
原晋著 講談社

箱根駅伝の優勝だけでも凄い事ですが、四連覇は偉業です。ただ元サラリーマン(営業マン)で指導者という所が自分と重なり、原監督の手腕への競争心で今まで著書を読んできませんでした。今年青学は全日本を勝ち二度目の三冠に届く所まで来ています。結果に脱帽しついに手に取りました。

なぜ、青学が箱根駅伝で優勝できたのか。それは「理念を元にした運営」を徹底したからと私は思います。その理念は「人間形成第一」です。
「人間形成が第一。どれだけ足が速くても性根が腐ってはダメ。」と原監督は言っています。当時の青学陸上部は、たばこ、パチンコ、麻雀など遊びにいそしむ学生が多くとても陸上に打ち込む体質ではなかったそうです。パチンコを禁止したらパチンコ台を持ち込んでいる学生もいるぐらいでした。まず寮の心得の三か条を明示しつつ、規則正しい生活から始めたそうです。

「一、感動を人からもらうのではなく、感動を与えることのできる人間になろう」
「一、今日のことはきょうでやろう。明日はまた明日やるべきことがある」
「一、人間の能力に大きな差はない。あるとすれば、それは熱意の差だ」

重要な採用(スカウティング)も人間第一を徹底しています。結果が求められる中で切羽詰まり記録で採ったところ、3ヶ月で退部という失敗経験も糧になっているそうです。厳しい状況の青学を優勝に導いた事は会社の立て直しと重なります。黒字化だけでなく会社の体質自体を変えていく。これは時間がかかることで、10年かかったのも納得がいきます。

読了し、やはり理念を徹底追及していきたいと心をあらたにしました。社是である「まっとうに誠実に」。これを私自身が率先して追求していきます。
(700字)

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第66週『千葉ジェッツの奇跡』

第66週
2018/11/4
『千葉ジェッツの奇跡』
島田慎二著 角川書店

企業理念をもとにした経営。私が志向することを著書の島田さんがBリーグの千葉ジェッツで体現しています。島田さんが関わった2011年には1試合平均1143人だった動員数が2017年には4503人にし、動員数No.1クラブになりました。そして2017年には天皇杯も優勝しました。厳しい状態だった千葉ジェッツをBリーグ集客No.1にした島田さんの言葉は力強く、説得力があります。

島田さんは「資金」「チーム」「集客」の三段階でジェッツを導きます。まず資金です。2011年のジェッツは、夢を語るがお金がない夢想集団でした。当時の代表を含めスタッフは皆バスケが純粋に好きだが現実的に運営の力がなく資金が底をつきかけ、明るい展望もない状態でした。島田さんはスポンサーに前倒しで支払いをしてもらうなど資金集めに奔走し、計画初年度から黒字化させます。「目標のためには何が何でもお金を集め、夢を語るのはその後でいい」という現実感と行動力が素晴らしく、弊社経営方針の二つ目「理念実現のために、マネタイズと数字を重視する」と共振する考え方です。咲心舎も各人が夢だけでなく現実に対応する力がついてきており、現在の路線を進めていきます。

次に、チームです。これは集まった資金で良い選手を獲得すると共に、チーム理念を作ったことが大きいと思います。ジェッツは「アグレッシブなディフェンスから走る」など、バスケスタイルやビジョン(行動指針的なもの)を作り、他のチームと差別化しています。咲心舎に重ねると、次のステップとして塾自体の理念を皆で再構築したいと思います。かねてから必要と考えていたので、本書で後押ししてもらいました。
(694字)

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第65週『研修転移の理論と実践』

第65週
2018/10/27
『研修転移の理論と実践』
中原淳 他著 ダイヤモンド社

研修研究の第一者中原淳先生の著書。クライアント企業様への成果を上げるためのより一層幅広い知見を得る目的で手を取りました。

3つのポイントを挙げます。まず、カークパトリックの4段階モデル(反応、学習、行動、成果)は外せません。研修評価はこのモデルが土台となり発展しました。特に行動変化の測定が一番難しく、最重要とカークパトリックも述べており、また他の研究でも「行動」に注目が集まっているとのこと。私は現場での行動が全てと捉えており、実践型研修のあらゆる要素はこの現場行動を促進するものです。この考えが学術的にも正しいと証明されたのは自信になります。

また、Saks&Burkeは「行動」段階での評価を研修事後に受講生に頻繁に行うことで、現場での転移が増すと結論づけました。事例としてヤマト運輸では、研修の3,4ヶ月後に現場実践度合いアンケートを実施し、アズビルでも研修後にWebアンケートを実施しリマインドを図っています。研修後に実践度合いを測ることを積極的にお客様に提案していきます。

最後にBroad&Newstrom(1992)の研修転移マトリックスも有用です。縦軸に役割者(マネジャー・講師・受講者)が入り、横軸に時間(研修前、中、後)の3×3の図です。講師達へのインタビューで影響と使用の順位付けをしたところ、1位が研修前のマネジャー、2位が研修前の講師、3位が研修後のマネジャーからの働きの順に影響力があることが分かりました。現在行っている社長からの手紙だけでなく、直上司からの手紙の作成、研修後のマネジャーへのアンケート実施により、より研修転移を促進できると思いました。
(688字)

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第64週『誰でもビジネス書の著者になれる! 出版の教科書』

第64週
2018/10/20
『誰でもビジネス書の著者になれる! 出版の教科書』
松尾昭仁著 秀和システム

本を出せるぐらいの実績をつけてはじめてプロや一流の証と思う所があり、書籍の出版は私にとって宿願です。清瀬も始まったことで出版が視野に入り、本書を手に取りました。

私が掴んだ書籍出版(商業出版)のポイントは二つです。まず、出版社は「いい本」ではなく「売れる本を出したい」という前提を押さえることです。「あくまで読者が求めるコンテンツを本にまとめるのが大原則」と筆者が言うように、自分が伝えたいだけでは出版はできないということです。ビジネスの世界ですからニーズが必要。当たり前ですが見失いがちな大切なことだと思います。売れる本という目的に立脚すれば、売れるための企画をする、編集者に謙虚に接する、販売促進も行う等も全てつながります。

もう一つは、出版は誰もが驚く実績がなくてもできるということです。これは読者ターゲットを明確にすることとセットです。『コンサルタントになっていきなり年収650万円を稼ぐ方法』は、セミナー講師を開始し1年半の時に筆者が出したものです。高給の外資コンサルタントには評価されずとも、これからセミナー講師を始めたい人や、キャリアが下の人をターゲットに書きスマッシュヒットになったそうです。通常、出版はS級の専門家が書くものと思っていましたが、A級、B級、C級、D級もありピラミッド構造になっています。C級でもD級より下の人に教えられることがあり、これを筆者は「三角形の法則」と言っています。あわせて新人筆者は大ヒットを狙って読者ターゲットを広げてはいけないとも言っていました。

読了後、自分の中で書籍出版のイメージが変わりバーも一気に下がりました。簡潔ながら本質をついている良書でした。
(700字)

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第63週『心理療法序説』

第63週
2018/10/13
『心理療法序説』
河合隼雄著 岩波書店

1年以上前に英明から咲心舎全員に薦められた本。カウンセリングの知識は、生徒の心身の成長を促す上で土台になるような気がしたこと。また心療内科の通院時に、クオリティライフが高まる参考になればと思い手に取りました。

まず、部分ではなく全体を網羅し、体系的に学べる本書のような書籍は自分の好みとあらためて感じます。

一番心に残っているのは心理療法の理想像です。心理療法の4つのモデル(医学モデル、教育モデル、成熟モデル、自然(じねん)モデル)を提唱し、医学モデルが「治す」に対して、自然モデルが「治る」に近く、これを理想像としています。干ばつの地域に雨を降らすことができた男に理由を聞くと「道(タオ=梵我一如)の状態に自分がなった。すると勝手に雨が降ってきた」と。この因果律で捉えない態度は凄いなと思います。「自分がいたからではなく、クライアントが勝手に回復した」的な説明のつかない状態が理想と解釈できます。そのためにも、療法家はクライアント自身が自分の心の深層を探求するのを援助するのみで、ドグマ(教義)のない宙ぶらりんの状態に耐える強さが必要と言っています。

もう一つ印象深いことは、日本は家族の一体性が欧米より強いこと。誰か一人が悪いということはなく、家族の誰かをスケープゴートにして、後の全員が安定していることは割にあるそうです。ただこれも因果律で捉えるのは危険で、例えば、非行の子供がいて、父親がアルコール依存症だったとします。原因は父親にあるとなりそうですが、父親がアルコール依存症→子供は非行化するは、普遍性をもちません。現場実践として、子供達への接し方の参考にすること難しいです。原因を設定しなければ短期解決がしにくいからです。ただ、「自然モデル」を念頭にあくまで子供達自身が気づいていくことを理想とする。これは子供達の健やかな成長にとって大切なことと感じます。
(781字)

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第62週『言霊はこうして実現する』

第62週
2018/10/6
『言霊はこうして実現する』
大野靖志著 文芸社

横綱稀勢の里が進退がかかる今場所前に読んでいたと新聞記事に載っており、興味があり手にとった本です。

本書は「言霊学(げんれいがく)」と、言霊学と結びつきの強い伯家神道(はっけしんとう)を紹介している書籍と考えています。このような言い回しになった理由が、私自身内容をはっきりと理解ができていないからです。「言霊」という神秘の世界を量子力学に沿い科学的に説明しています。言霊発生のメカニズムは、母音(イエアオウヲワヱヰ)が柱となりS極が陽子(+)である。父韻(TKMHRNYS)はN極電子(―)の働きをしている。父韻と母音が合成すれば、電流が発生し磁界ができる。これが続くと電磁波となりエネルギーが放射されるというのが私の理解です。ただ、オカルト的で若干の忌避感も感じたまま読んでいたこともあり、完全に納得まではいきませんでした。

その中でも一番参考になったのが、「言霊で現実を創造する方法」という章です。ポジティブシンキングやアファーメーションが上手くいかない理由が、「脳が問題の背景にある事の深層を理解していないため」という箇所が腑に落ちました。何かの願望の裏には「不満」「不平」などがたまっていて、それを隠すと脳が事の真相を理解できず上手く機能しないとのこと。そこで言霊を活かす構文の5ステップを本書では提示しています。しっかりと不満を出した上で、肯定的にとらえるやり方であり、「まじめに仕事をしているのに叱られるなんて腹が立つ」→「そこで振り回されても損」という結論まで5段階のステップを通ります。言葉には力があると元々思っていますので、完全には理解しなくとも本書はその思いを後押ししてくれました。
(699字)

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第61週『年収1億円になる人の習慣』

第61週
2018/9/30
『年収1億円になる人の習慣』
山下誠司著 ダイヤモンド社

ビジョン実現へスピードを上げるべく新習慣(5TODO)を考えていた中、年収1億円への習慣という具体的な数字に惹かれ、新習慣設定の参考になればと考え手に取りました。

著者は、日本最大級の美容室チェーンのNo.2で現在42歳。専門学校を出て31歳で年収1億に到達しています。読了して思うのは「仕事をする上で本質的な習慣」が多く、強く刺激を受けました。新5TODOの設定に影響を受けた項目を3つほど挙げます。

まず「『年収1億円を越えたければ、仕事を大好きになる事が大前提』」という事。別の書籍にも「メガ成功者は仕事が大好き」と書いてありましたが、その通りだと思います。著者は15年間1日も仕事を休まず、休まなかったから仕事が楽しくなったと言っています。能力や資質のある人が仕事をすればするほど価値は増大し、収益が伸びるのは当然です。私自身昨年少し止まり仕事量を減らしました。しかしここからビジョン実現へスピードを上げるべく、念願の朝型シフト共にもう一度仕事量を増やそうと決意しました。

次に、「お金と時間は目的、目標の実現のために集約する」事です。携帯やiPadなど気晴らしという名の無駄な時間を使わず、深酒も禁止しました。ビジョン実現(仕事・家族)に時間とお金を集約する、その方が逆に潤いが出るはずです。

最後に「年収2000万円の壁を破るには分かちあうこと」という一節。自分のためだけでなく、周りの人にいる人達にも喜んで欲しい。年収云々というより、この感覚には深く共感できます。私の家族、仲間だけでなく、周りの人と一緒に幸せになりたい。もっと分かち合いを増やしていこうと思えました。
(687字)

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第60週『今いるメンバーで『大金星』を挙げるチームの法則』

第60週
2018/9/23
『今いるメンバーで『大金星』を挙げるチームの法則』
仲山進也著 講談社

チームとして組織の力と成果を最大化したい。これが私の思いです。先日イーブックの今井さんが本書を持参され、話を聞いた後すぐに取り寄せました。本書は『GIANT KILLING』という、サッカー監督が主人公の漫画を題材に、大番狂わせを起こすチーム作りの考え方と方策を伝えています。

本書は最高のチームになるためのステップを提示しています。これはタックマンモデルに近く、フォーミング(形成期)→ストーミング(混乱期)→ノーミング(規範期)→トランスフォーミング(変態期)です。

ポイントはストーミング。特徴は、『「私はこう思う!」-各メンバーの本音の意見が場に出る。対立・衝突が起こり、感情的にモヤモヤ・イライラする』『生産性が低下し、コントロールしにくい状況が生まれる』『キャラクターが表出し、相互理解が進む』等。私自身「フォーミング体質」で、すぐにコントロールして改善しようとします。そうすると単なる「グループ」にとどまり、「チーム」にはなりません。

咲心舎は以前よりもチーム化は進んでいますが、まだジャイキリチームまではいかずストーミング途中でしょうか。『「各々の垣根を越えて、自分の役割以上の仕事をする・・・それが俺の憧れる・・・クラブの形だからね」」と主人公の監督が言っています。組織としての活動が「自分ごと化」していき、全員が自分の役割を超える行動が出ると、咲心舎はジャイキリできるチームとしてステージに上がると考えています。「各メンバーが『自分の価値基準』を場に出すのがストーミングの本質」とあるように、ぶつかることではなく、塾生のために、私達同士が本音の意見を伝え合うことが大切です。
(700字)