宗興の本棚

第59週『サーバントリーダーシップ入門』

第59週
2018/9/15
『サーバントリーダーシップ入門』
池田守男 金井壽宏著

JBSの和田さんから「サーバントリーダーシップ(SL)でオススメの本がないか」と聞かれ、SLはスルーしており自省の念と共に手にとりました。SLはAT&Tマネジメント研究センター長を務めたロバート・K・グリーンリーフが提唱した考えた方です。訳すと「奉仕・献身のリーダーシップ」ですが、これは小間使いや召使いではなく、ミッションのもとに社員に尽くすという考え方です。

本書では資生堂の池田社長の改革をSLの事例として紹介しています。池田社長は2001年「店頭基点」を掲げ、組織を逆ピラミッドにし、現場のビューティーコンサルタント(BC)を支える形をとりました。25,000全店舗にPOSを入れ、販売額で奨励する仕組みや、生産計画の精緻化、商品づくりに生かす。また100のブランドを30に絞りBCの負担を減らす。ミドルに改革について対話する場や、BCからも意見を聴く場を設けました。『理念・信条・方針にはトップダウンが、日常の実践レベルではメンバーを支えるサーバントの精神が必要なのではないか』と池田さんは仰っています。咲心舎でも「塾生基点」のみを掲げ、英克と浩子を支える考え方がしっくりきます。

また、グリーンリーフセンター所長のスピーアズがSLの10属性を示していますが、③癒し⑧執事役⑩コミュニティづくり、中でも信念と自信の強さからくる「人を癒す深い安心感」は私が身につけたいものです。精進していきます。
(600字)

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第58週『未来の年表』

第58週
2018/9/8
『未来の年表』
河合雅司著 講談社現代新書

企業研修で参加者に未来予測をしてもらいますが、私自身も未来を勉強しておく必要があり手に取った本です。

本書は人口減少にフォーカスをあて、人口減少から引きこされる様々な現象と最後に解決策を提示しています。未来予測といっても、少子化がすぐに改善しない状況をふまえると、ある種確実に起こる未来として捉えても良いかと思います(だから予測ではなく「年表」としていると推察できます)

①2017年女性の高齢者比率(65歳以上)は30.1%。既に女性の3人に1人は高齢者でおばあちゃん大国になっている点は驚きです。

②2018年、2009年以降横ばいで留まっていた18歳人口が減少し始めます。国立社会保障・人口問題研究所(以下社人研)の「日本の将来推計人口」によると、18歳人口は2017年120万人、2024年106万人、2032年98万人と推移する予測になっています。2016年で既に44.5%が私学で定員割れ状態ですが、地方の国立大学でも、大都市圏への流入により、存続危機の大学が増えるでしょう。

③2019年IT技術者が不足し始めます。経産省の調査によると、現在供給が92万人。2019年から退職者が就職者を上回り供給が減っていきます。2015年で既に17万人が不足する一方、需要は増えるので2030年では79万人(市場の伸びが最大の場合)不足が生じると見込まれます。

④2024年ダブルケアの問題。人口問題を語るときは人数が多い団塊世代がキーとなると感じます。2024年には段階世代が全て75歳以上となります。このとき65歳以上は3677万人。3人に1人が高齢者となる超・高齢者大国の出現です。そして、晩婚化で平均出産年齢は30.7歳(2016年)。第二子以降50代で子育て中もありえる中で、介護も必要となるのです。

⑤2033年空家問題。総務省の「住宅・土地統計調査」(2013年)によると、総住宅数6063万戸のうち空家が820万戸に上り、13.5%を占めています。野村総研の試算によると、2033年総住宅数は7126万戸、空家数は2167万戸、空家率は30.4%。3戸に1戸が空き家となる予測です。ちなみに「自治体の空き家対策に関する調査研究報告書(平成26年3月発行)」によると空き家のもたらす問題として「雑草・悪臭など衛生環境悪化」「景観の悪化」「不法侵入などによる治安の悪化」「生命・身体への被害のおそれ」が挙げられています。

⑥2035年未婚大国。厚労省の「人口動態統月報年計」よると婚姻件数は2016年62万500組み、1万400組も減少し戦後最少を更新しました(ちなみに、うちできちゃった婚は25.3%)。生涯未婚率は2015年厚生労働白書によれば、男性は24.2%。女性は14.9%。これが2035年男性29.0%、女性は19.2%に上がる予想です(1970年男性1.7%、女性3.3%)。男性年収300万円未満で未婚率が多く、女性は600万以上で未婚率が多いそうです。社人研の「第15回出生動向基本調査」(2015年)内の独身調査(25~34歳)では、交際相手のいない未婚者男性69.8%、女性59.1%となっています。内閣府「結婚・家族形成に関する意識調査報告書」(2012年)によると、恋愛が面倒:男性47.3%、女性45.0%、恋愛に興味がない:男性25.3%、女性30.7%になっています。交際に関しては消極的というのが伺えます。単なる出会いの場だけ創出しても難しそうです。

⑦2040年自治体の半数が消滅の危機に。社人研の「日本の地域別将来推計人口」(2013年)によると、2040年減少率は秋田県の35.6%など地方が厳しい人口減にされされますが、なんとアクセスの不便な大都市圏の自治体も減少する予測です。青梅や福生は25%、足立区21.3%、葛飾区19.2%、杉並区も15.5%予測しています。

最後になりますが、筆者は10の少子化対策案を挙げていますが、下記は現実的で実効性もある案だと思います。
・高齢者を75歳以上として、75歳までは生産労働人口とする。
・非居住エリアの明確化
・都道府県の飛び地合併
・社会保障費循環制度。死亡時に公費で賄われた分は返還する。
・第三子以降に1000万円給付
(1752字)

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第57週『社会契約論』

第57週
2018/9/1
『社会契約論』
ジャン=ジャック・ルソー著 桑原武夫・前川貞次郎訳 岩波文庫

自由、平等、人民主権。人の人生が生まれで決まらない世の中に。フランス革命の骨格となった大元の思想はどういうものか知りたくて手に取った本書。かなり難解な文章で、何度か読み返しても意味が取れない部分が多かったです。

本書は『人間は自由なものとして生まれた、しかもいたるところで鎖につながれている。』からはじまります。「ドレイ」という言葉が何度も出てきますが、ルソーはドレイ状態を繰り返し批判しています。そして、自然状態において生存することを妨げる諸々の障害に対して、抵抗する手段は社会契約だとしています。

ルソーが考える、本来の自然状態は、人間には憐れみ(憐憫)の情が備わっており、互いをいたわる状態としています。ただ、私有財産が発生したことで不平等を生み、争いも生まれてきます。自然状態のままでは人間社会そのものが立ちゆかなくなったとき、自然状態に代わる社会をどのように構想すればよいか、その答えが、社会契約です。

社会契約は、人々の一般意志=共通の利益を求める意志に全て従うことになります。自分の意志であり、全体の意志であるからドレイ状態とはなりません。『各構成員の身体と財産を共同の力の全てをあげて守り保護するような統合の一形式を見出すこと。すべての人と結びつけながら自分自身にしか服従せず、以前と同じように自由であること。』を理想の状態とし、それは一般意志に従うことで実現すると述べています。意志というのは自由で、平等で、永遠なのだとあらためて感じます。

ところで、ライフネット生命の会長である出口治明さんは古典の重要性を説きます。『古典は人類の長い歴史の中で選ばれて今日まで残ってきたものであって、いわば市場の洗礼を十二分に受けている。一冊の古典はビジネス書10冊、いや100冊に勝るかも知れない』と言っています。また、出口さんは木田元先生(哲学者)の言説を用い、『きちんと書かれたテキスト(即ち古典)を一字一句丁寧に読み込んで、著者の思考のプロセスを追体験することによってしか人間の思考力は高まらない』と言っています。

次は教育者として読むべきルソーの『エミール』です。また太宗の『貞観政要』とアダムスミスの『国富論』は挑戦したいと思います。
(918字)

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第56週『GRIT やり抜く力』

第56週
2018/8/25
『GRIT やり抜く力』
アンジェラ・ダックワース著 神崎朗子訳 ダイヤモンド社

やり抜く力は、ライフスキルの向き合う力に近く、その正体と伸ばし方を知りたいと思い手に取った本です。最初から最後まで科学的で興味深い話が続き、読みごたえがある本でした。

米国陸軍士官学校は入学審査が厳しく、学校の成績が抜群に優秀で、大学進学適性検査(SAT)も高い得点が必要とされます。更に、入学には政治家の推薦状と体力測定の高得点が必要であり、大体が各高校を代表するスポーツ選手でその大半はチームのキャプテンという状況。つまり入学者は超精鋭の1200名なのです。入学した初期の厳しい7週間の基礎訓練をビーストと呼びますが、このビーストの訓練で脱落した者が71名います。この脱落者と残った人ではグリット・スケールで顕著な差が出ていました。このような研究から「才能があってもやり抜く力が強いとは限らない」と著者は言っています。そして、得点の才能とは努力によってスキルが上達する速さのこと。達成は、習得したスキルを活用することによって表れる成果であり、「才能×努力=スキル、スキル×努力=達成」であるとも言っています。つまり、努力をし続けるやり抜く力が必要ということです。

また、ヘスターレイシーという英ジャーナリストの調査も興味深かったです。レイシーは単なる成功者ではなく、200名以上のジェフベソスに並ぶ「メガ成功者」のインタビューを行いました。そしてメガ成功者たちの共通点は、「この仕事が大好きだ」ということ。「好き」ではなく「大好き」ということなのです。

努力に関しても、単なる努力ではなく「意図的な練習」が必要という事ははっとさせられました。認知心理学者アンダース・エリクソンの研究で、エキスパート達の練習方法を分析した結果、多量の時間は当然であり、「意図的な練習」が鍵を握ると結論を出しました。ある一点に絞ってストレッチ目標を設定する、集中して練習する、改善を繰り返し上手くなるまで行う。この一連の流れを意図的な練習と著者は呼んでいます。

本書ではマインドセットの話も出てきます。アメリカの特別認可学校KIPPでは、教員育成の明確な方針が定められている。その中で子供への声掛けの仕方で、(やり抜く力を妨げる表現)「これは難しいね。できなくても気にしなくていいよ。」(やり抜く力を伸ばす表現)「これは難しいね。すぐにできなくても気にしなくていいよ。」が目に留まりました。微細な違いも、子供達のやり抜く力を伸ばすことに影響があることは勉強になりました。

最後に子育てです。「賢明な子育て」の答えは出ていると著者は言います。賢明な育て方は、「要求が厳しく×支援を惜しまない」育て方です。褒めるか叱るかの二律背反ではありません。心理学者のローレンスタインバーグの研究で、1万名のティーンエイジャーの親の行動に関するアンケート調査をしたところ、性別、民族性、社会的地位、婚姻区分にかからず、「温かくも厳しく子供の自主性を尊重する親」を持つ子は、他の子より学校の成績が良く、自主性が強く不安症やうつ病になる確率が低いと出ているそうです。

加えて、偉業を達成した水泳選手達はほぼ例外なく親が水泳に対して興味を持っていたそうです。子供にコーチをつけ、水泳大会に参加させる経済的な余裕があったと。親として子供のやりたいことに興味を持つことは、やり抜く力をつけるために、必要なことなのです。
(1382字)

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第55週『春琴抄』

第55週
2018/8/18
『春琴抄』
谷崎 潤一郎著 新潮文庫

多量のビジネス関連書籍を読んできた中、やや食傷気味で潤いが欲しくなりました。こういう時は文学作品です。ただ陰鬱なものではなく、透き通るような美しい世界観や美しい日本語を持つ作家の作品。丁度それならと谷崎潤一郎を相方から勧められ手に取りました。

内容は盲目の美女春琴と、春琴を慕う弟子の佐助、この二人の歪曲した愛の物語でしょうか。まず句点をほとんど使わず、それでいて柔らかな谷崎の語り口は流麗で、読んでいて体に潤いが生まれました。心地よい流れの中、一気に読み進めてしまいした。

主題の「愛」については、いわゆるSM的な愛を描写していると感じます。ただ単なる快楽を求めたSMではなく、より深淵な愛。「あなたは盲目で顔に傷ができた。だから私も盲目になった。これであなたの傷は見えないし、あなたの姿は私の中で美しいまま色あせない。むしろ盲目になりより一層美しさを感じる。」解説者が『美的恍惚の極致』と表現していたこの「愛」は、嗜虐性があり違和感はあります。ただ、嫌悪を感じずむしろ清々しさや神々しさを感じるのが不思議です。

明眸(めいぼう)、蘊奥(うんおう)、憫殺(びんさつ)、蠱惑(こわく)、怏々(おうおう)、真諦(しんてい)、実体(じってい)等々、秀逸な文学的熟語がちりばめられており、知的好奇心をくすぐり日本語の豊かさも感じることができました。他作品を読みもう少し谷崎ワールドを堪能したいと思います。
(596字)

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第54週『右四間飛車戦法』

第54週
2018/8/12
『右四間飛車戦法』
先崎 学著 創元社

将棋をはじめて1年半。この半年以上、宗真と実来の昇級が滞り、僕自身も成長実感があまり持てていませんでした。棋力が伸びない理由は、将棋の基本的な考えと技が身についていないからです。これは一つの戦法に習熟してないことに起因すると考えました。色々な戦法を試してはいるものの、繰り返し行う戦法が固まっておらず、考えや手筋(技)を学んでも忘れてしまい使う機会がなく身につかない。よって、本をもとに一つの戦法に習熟していき、そこから考えと技を学ぶことが近道と考え、本書を手に取りました。

まず6月下旬に私が吉田家全員昇級計画を作成しました。そして「夏休み終わるまでに昇級しなかったら将棋教室は終わり」と崖っぷち宣言をし、危機感を醸成すると共に3つのことを進めていきました。
①詰め将棋を毎日/週1回みおみお杯(100マス的反復・3回買ったら豪華お菓子)
②朝1時間吉田ができる日に本から学ぶ(学習)
③宗真と実来で毎日平手&感想戦(実践・内省 感想戦は毎回喧嘩となり微妙)

将棋本というのは、樹形図のような構成になっています。分岐点で選択肢が幾つかあり、一つの選択肢にまた分岐点がありといった形です。よってノートに樹形図を書くところから始まります。そして、3パターンぐらいを1時間で、宗真と実来と一緒に指していきながら、戦法の流れや手の意図を覚えていっています。

結果として、6月下旬から初めて1.5ヶ月たった昨日二人とも昇級しました。実際に「おまけかな」と思って、宗真と平手で指してみたら大苦戦。負けの一歩手前で相手のミスで勝ったような状況。つまり確実に強くなっていました。現在は新しい本「四間飛車」に入っていますが今後「棒銀」「中飛車」「相矢倉」と計5つの本(戦法)を制覇できれば、中級クラスになるはずです。一方先生の私の方は、自分で指して動きを確認していないので、実はあまり伸びていません。復習の時に実来に先生をしてもらい、実際に動きを確認します。

今回は書評というより、本をどう使うか的な話になりましたが、プロの将棋本から「逃げずに攻める姿勢」を学んでいます。この本だけにとどまらず、どのプロも攻められた時や駒損(犠牲)があっても、「強く指す」と言っています。
(921字)

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第53週『人材開発マネジメントブック 学習が企業を強くする』

第53週
2018/8/4
『人材開発マネジメントブック 学習が企業を強くする』
福澤 英弘著

企業における人材開発の体系的知識を深めるために手に取った本第二弾です。人材開発の専門家としてこんなことも知らなかったのか、という知識があり役立ちました。

まず4つの学習スタイル。①学習移転モデル②経験学習モデル③批判的学習モデル④実践コミュニティモデルがあり、目的に応じて適用する必要すると効果的に学習が進みます。例えば、正解がある知識を付与する場合は①学習移転モデルが効率的。独自の知見(マイセオリー)を生み出すには②経験学習モデルが効果的。そもそもの前提や手段を疑う時は③批判的学習モデルが良いでしょう。大学の研究室のように情報量を増やすには④実践コミュニティが効果的です。

②の経験学習モデルのマイセオリーの所は是非取り入れたいです。ただ漠然とライフスキルを振り返るのではなく、マイライフスキルシートの中に、1ヶ月に1回自分なりの上手くいく、いかない法則を記入する枠を設けることで、塾生にステップアップしてもらいます。

次に、能力の話も有用でした。ガニェは獲得できる能力を①知的技能②認知的方略③言語情報④態度⑤運動技能と整理しました。ビジネス世界においては筆者のようにシンプルに①知識②スキル③メタスキル④態度としても良いと思います。マクレランドの弟子スペンサーは、コンピテンシーを①動因②特性③自己イメージ(態度・価値観)④知識⑤スキルに分類しました。この辺りの知識も有用です。インストラクショナルデザイン、ADDIEEモデル(Analyze、Design、Development、Implement、Evaluate)も知識として入れておくべきことです。

最後に、講師の4タイプも面白かったです。構造化重視⇔流れ重視、知識授与⇔知識・思考を引き出すの4象限に分かれます。構造化重視&知識・思考を引き出すタイプはファシリテータータイプで吉田。知識授与⇔流れ重視は研究者タイプで英明でしょうか。
(797字)

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第52週『IOTビジネス 入門&実践講座』

第52週
2018/7/28
『IOTビジネス 入門&実践講座』
萩原裕・白井和康著 ソシム

今後経済の中心になる可能性が高いIOTビジネス。ラネット様をはじめ本格的にIOTに取り組み始めたお客様もいる中で、しっかりとした知識を身に着けたく手に取りました。

まずIOTとは何か。『インターネットとリアルの世界とが、あまねく設置されたセンサーを介して接続された世界』です。構成要素は、6つで、ヒト・モノ・環境、インプットデバイス、データ、コネクション、サーバ、アナリティクスです。IOTはセンサーがないと始まらないので、特にセンサーを搭載するインプットデバイス(ウェアラブル端末等)は重要と感じました。一方でセンサーを通してデータを収集しても価値創造が出来なければ意味をなさないので、アナリティクスも重要となります。

次にIOTの領域は全部で6つあり、ヒト、住宅、車両、都市、商業、産業です。印象的だったのは住宅領域のコネクテッドホームの概念でした。冷暖房などのエネルギーの統制や、ガス漏れ・侵入防止などのセキュリティ、高齢者の介護などのヘルスケア、テレビ・ビデオ等の娯楽に分類されとても便利になりそうです。領域として出ていませんが、教育もIOT活用が進むはずです。単純にiPadで学習するのもデータを集め指導に役立てるのでIOTと呼べると思います。

本書はIOTビジネスの要素を体系的に整理し、しかも各要素がMECEと思われるため、とても読みやすく納得度の高いものでした。ベースの知識は入りましたので、後はお客様とも話せるようニュースと結びつけながら使えるものにしていきます。
(638字)

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第51週『武器としての決断思考』

第51週
2018/7/22
『武器としての決断思考』
瀧本哲史 星海社

決断とは大きな選択です。これまでもこれからも私は決断をし続けるので、その参考になればと思い手に取りました。

本書は学生時代ディベート部に属した著書がディベートの手法を使って決断する方法論を書いています。ディベートの大会ではその場で、賛成と反対の立場が決められるそうです。ということは両方の立場の準備をしておかないといけない。ディベートのように異なる立場の意見を取り入れて考える、つまり複眼的に物事を検討することで最善解を導き出せると著者は言っています。

まず相手の意見を聴く事、常にメリットデメリットを考えることの重要性を再認識しました。

次にエキスパートよりプロフェッショナルという話。エキスパートの条件は下記二つです。
①専門的な知識・経験に加えて、横断的な知識・経験を持っている
②それらをもとに、相手のニーズに合ったものを提供できる
「今の時代、英文会計ができる人材はいくらでもいる。その中でヘッドハンターの対象となるのは、本社がお金を出せないときに、海外支社のBSをもとに銀行にかけあい、お金の借り入れができる人」というヘッドハンターの話や、福島原発の汚染水漏れの問題で、原発の専門家では中々解決策が浮かばない中、最後は水ガラスにより漏れを防げた。その方法はトンネル工事などを行っている建築業界では当たり前だったという話は、全体を見て判断できるプロフェッショナルの重要性を感じます。

他にも、「結婚はいつしたらよいか」ではなく、「結婚は30歳までにするべきか」と議論には問いをイエスノーにすることが大切である。何かを論じるにはエビデンスが大切である。エビデンスは、専門家の意見やマスメディアの報道、統計データ、海外事例、インタビュー内容など。自分の経験は検証ができないので、根拠にならないなど、実用的なキーワードを沢山得ました。
(761字)

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第50週『ソシオ・マネジメントVol.2 社会事業家100人インタビュー』

第50週
2018/7/14
『ソシオ・マネジメントVol.2 社会事業家100人インタビュー』
IIHOE発行

ETICの課題で社会起業家100名のインタビューの中から、1名ピックアップし、調査をしました。先輩起業家事例を研究するのは、事業推進する上で重要な取り組みです。

■対象企業
今回対象としたのはケアプロ株式会社(川添高志社長)です。
「革新的なヘルスケアサービスをプロデュースし、健康的な社会づくりに貢献する」をミッションに二つに事業を展開しています。
1.セルフ健康チェック事業
ミッション:生活習慣病予防と医療費の適正化に貢献する
ビジョン:手軽な予防医療サービスの提供を行い、ケアプロ健康サイクルを確立・実現させる
(1)商業内施設にワンコイン健診所(中野)をオープン
(2)全国の健診弱者のニーズに応えるため、イベント型のビジネスモデルへと進化
(3)治験会社への登録により、治験会社から健診費用をもらうモデルを作る
(4)鉄道会社と提携し、エキナカを中心に事業開発(登戸駅)
2.訪問看護事業
ミッション:2020年、看取り難民30万人を救う
(1)ケアプロ訪問看護ステーション東京開業
(2)新卒・新人訪問看護師応援サイト「CAN-GO.com」オープン

■本当に価値を提供したい顧客
過去1年以上健康診断を受けていない「健診弱者」(推計全国3300万人)。多くは自営業者やフリーター、主婦、外国人など。

■顧客が抱えるニーズや課題
健診に行きたいが、長い待ち時間、高い費用、受診機会が少なく、健診にいかない。
―自営業者:健診に行きたいが、待ち時間が長く、忙しくて行く暇がない
―主婦:健診に行きたいが、待ち時間が長く、忙しくて行く暇がない。
―フリーター:健診に行きたいが、保険証をもっておらず、費用が高くていかない。

■ニーズや課題の構造
健診が長い、高い、機会が少ない→健診を受けない→生活習慣病り患数増(国民の1割)
→医療費増(全医療費の3割)

■自社の役割と他団体との役割分担
(セルフ健康チェック事業)
自社の役割:コンテンツ作り(イベントのパッケージ化等)、人員調達(看護師登録)、法整備の促進、業務提携、資金調達
他団体の役割:営業(代理店)、集客・場所提供(鉄道会社等)、サービス機会提供(自治体・NPO)

■促された顧客や社会の変化
2014年自己採血検査が法的に認められる。
2018年累計受診者数46万人。

学びは下記3点です。
1.サービス提供対象者とニーズの明確化
(事実)健康診断を受けていない人が自営業、主婦、フリーターが主であるという事を突き止めたこと。その対象者のニーズが待ち時間が長い、費用が高い、機会が少ないという事を突き止めたこと。
(感想)あらためて対象者とニーズの明確化が社会課題の解決のカギを握ると感じた。特に、全対象者(健診弱者3300万人)の中で、サービス提供対象者(自営業・主婦・フリーター)を絞ることが最重要と考えた。社会課題なので話が大きくなりがちだが、通常のマーケティングの考えをする必要がある。
(行動)まずサービス提供対象者を明確にする。具体的には東京都内の公立中学の校長先生に対してインタビューをしていく現実的にはMAX5名ぐらい。全対象(600人)の中で、サービス提供対象者の校長(学校)が絞られてくると考える。そして、その方々のニーズを把握する。8月夏休みを使って何人かにインタビューをするところから(8月31日迄)。

2.新しい社会課題用語の創出
(事実)「健診弱者」という言葉の創出。
(感想)「健診弱者」という新しく分かりやすい言葉を生み出すことにより、社会課題の認知が広がりやすくした。NPOスーリールが生み出した「両立不安」も同じである。
(行動)サービス提供対象者の校長のニーズを把握した上で、自社サービスの内容と鑑み、新しい社会課題の用語を創出する(2019年3月迄)。「ライフスキル教育」「ビジョンセッション」等現時点で使用している言葉もこの時点で見直していく。

3.積極的な役割分担
(事実)営業(代理店)、集客・場所提供(鉄道会社等)、サービス機会提供(自治体・NPO)など他団体と提携している
(感想)自分達ができることのみに絞ることでスピードや実現性が増すとあらためて感じる。自前主義や完璧主義を捨てることを肝に銘じたい。
(行動)提携自体はすぐに動くことはないが、学校にサービス提供しているNPOなど調べ始めてみる(7月31日迄)。